2014年度に認知症の人が当事者として死亡した鉄道事故が、少なくとも22件にのぼることが国土交通省への取材でわかった。愛知県で07年に列車にはねられて死亡した認知症の男性(当時91)の遺族が、JR東海に訴えられた裁判が関心を集めており、同省は調査を続けて対策に役立てる考えだ。

 国交省は全国の約200の鉄道会社から、事故や輸送トラブルが起きた場合に死傷者の数、運休本数などの報告を受けている。14年度からは当事者が認知症と把握できた場合、備考欄に記載するよう求めている。

 これをまとめたところ、14年度に認知症の人が起こした事故・輸送トラブルは28件。このうち22件は死亡事故で22人が亡くなり、ほかに3件の事故で3人がけがをしていた。

 ログイン前の続き線路に立ち入ってはねられたケースが多かった。15年1月には千葉県船橋市で新京成線の線路上を歩いていた女性(当時78)が列車にはねられ死亡。事故の直前、夫から警察署に「認知症の妻が買い物の途中で行方不明になった」と届け出があったという。

 認知症の人が運転する車が踏切に立ち入り、列車と衝突するケースもあった。長野県のJR篠ノ井線では14年12月、列車が脱線する事故が起きた。乗客にけがはなかったという。

 認知症の人が関わった事故やトラブルの影響による運休は少なくとも278本。遅延も402本にのぼった。国交省は「当事者が認知症と把握できたケースだけで、実態はもっと多い可能性がある」としている。今後もデータを蓄積して事故の傾向を分析し、他省庁と連携して事故防止に役立てたい考えだ。