レストランを星の数で格付けする「ミシュランガイド京都・大阪+鳥取2019」(12日発売)で、大阪のたこ焼き店の掲載が前年版の13店から1店に激減し、業界に波紋を広げている。“粉モン”店の初掲載に大阪が沸いてからわずか4年目。「次は星を取る店が出るかも…」と期待をふくらませていた店主らは「ショック」「お好み焼き店は減っていないのに…」と肩を落とすが、理由は不明のままだ。(加納裕子)
「自分の店だけでなく、12店も外されたことがショック。大阪文化としてのたこ焼きを大事にしてほしかった」。前年版には掲載されていた「大阪イギー」(大阪市淀川区)の店主、奈良崎洋喜(ならざきひろき)さん(41)は残念がる。すべて国産素材を使うなど、こだわりのたこ焼きが“売り”だ。
昭和10年に初代がたこ焼きの販売を始め、“たこ焼きの元祖”とされる「会津屋」(大阪市西成区)の三代目社長、遠藤勝さん(46)も戸惑いを隠さない。「動揺している。何があったのか…。ただ、掲載されればありがたいけれど、載らなくても来てくれるお客さんは多い。また掲載されるよう、精進するだけ」と言葉をかみしめた。
たこ焼き店は、平成27年発売の「2016」版に11店が初めて掲載され、「2018」版は13店を収録。「星」がつく料理店ではなく、5千円以下で特におすすめの料理を提供する「ビブグルマン」の掲載だったが、店主らは喜び、出版記念パーティーでは「来年は星を取る店が出るかも」などと語り合ったという。
“消えた”12店はこれまで「ストリートフード(地元を代表するローカルフード)」という特集ページに掲載されていたが、「2019」版ではこの特集ページ自体がなくなった。一方、お好み焼き店はほぼ前年通りの6店が掲載され、明暗が分かれた形だ。
ミシュランガイド編集部は通常、掲載や不掲載、星の数の増減などの理由を公表しない。今回は初めて「鳥取」が加わっており、大阪の「ビブグルマン」の掲載店数は131店から110店に減った。こうした事情が影響した可能性もあるが、ミシュランガイド広報事務局は「お伝えできることはない」。
関係者からは、たこ焼きとガイドの“相性”に疑問をなげかける声も。「ミシュランガイドはもともと、味だけでなく器、椅子、設(しつら)えにもこだわった店を対象にしてきた」と話す日本コナモン協会の熊谷真菜会長(57)は「持ち帰り専門や、器代わりに使い捨ての『舟』を使うたこ焼き店を『ストリートフード』として加えることは、本来の編集方針とずれるような印象もあった。もともとのコンセプトに即した店を優先した結果、たこ焼き店の掲載が減ったのは当然なのでは」と分析する。
ミシュランガイド広報事務局は「来年以降、復活する可能性はある」としているが、あるたこ焼き店の店主は「価格帯の違いで(お好み焼き店と)明暗が別れたのかもしれないが、世界的な認知度はお好み焼きよりもたこ焼きの方が上なのに…」と話していた。