
今朝は いつまでも起きられなかった。
窓から入る涼しい風がここちよく、
「今日は仕事が休みだったな」と気が緩み
いままでの熱帯夜の睡眠不足のつけを
取り戻すかのように 明け方熟睡してしまったのだ。
起きると、夫は出勤した後だった。
神棚と仏前の水を取り替え
ふと見ると、猫缶が供えられていた。
八月五日
今日は、たまたまの一周忌。
忘れていた。
きっと、この猫缶がなければ、
夕方まで気がつかなかったかもしれない。
そう 彼は、記念日を絶対忘れない男。
「いってらっしゃい」を言えなかった自分に、
物音ひとつたてず、
猫缶を供えていった姿に頭がさがった。
庭の草花を供えながら
「夕方になったら、たまたまの好物のカツオの刺身でも買いに行こう。」
そう思った。
猫に教わる 南木 桂士

映画【阿弥陀堂だより】の原作者
信州に暮らす 医師で作家の方です。
医師と作家の仕事をこなしていた四十歳ごろ うつ病を発症。
病院を定年退職された現在も、勤務医を続けられています。
この本は、エッセイをまとめた本です。
題名から想像する猫の小説ではありません。
最近 なかなか本を読み進められなかったのですが、
情景がひろがる丁寧で、ストンと落ちる文章に
ページをめくる手が とまることはありませんでした。
人生も 家族の絆も期間限定。
楽しくても うっとうしくても
必ず期間限定。
次回が
♡
秋田の旅の終結 温泉編です。