そんなかわいらしいことを言ってくれたのは
当時付き合っていた彼
彼はまだその時高校生だったけれど
少し大人びた・・・・というのか、
落ち着いた雰囲気を持ったひとだった
啓太という名の彼に初めて会ったのは、
私が大学生になってまもなくのころ
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バリトンボイスが素敵なマスターがいる
学校近くで見つけた私のお気に入りのcafeだった
何度か通ううち 彼が、常連なんだと気がついた
まさか高校生だとは思ってもみなかったが
よくよく考えてみると制服のままだったこともあった
夏が近くなったころ啓太から声をかけられた
「お話してもいいですか?」
「ええ・・今日はおひとり?」
「あ、うん 友達は後から来るけどね・・・
それにしても、いつも本ばかり読んでいるね
店の外、ゆっくり見たことありますか?」
そう言われて、“外って見えたっけ?・・・・”と思った。
私がいつも座る席からは見えなかったが
cafeの奥の席からは、私が大好きな海が
建物の間から見えたのだった。
遠くに行き交う貨物船も見える
なんだか誰かの歌に出てくるようなcafeだと思うと
そんな素敵なことを教えてくれた彼のことを
急に意識するようになった。