心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

約束の行方・・・vol.9

2013-01-30 10:16:14 | 約束の行方


啓太とは“お友達以上の関係”になっていた
求められるまま受け入れていた
私自信もふれあうことを望んでいたし、
一緒にいることが心地よかった

今のような連絡手段がまだ乏しかったあの頃
それでも
会わない日を数える方が早いほど
いつも一緒だった
その年の暮れ
啓太は妹と一緒に神戸にいる母の元へ
遊びに行った
私は実家へ帰るのが億劫だったので、
その年は叔母の家で過ごすことにしていた。






マスターの話の続きを聞くことが出来た
「マスター
その時、恋愛はしなかったの?」 
唐突に聞いた私に微笑みながら
「んっ?恋
そうだね
素敵な女性に出会ったよ」

絵を描くだけで満足していたが、
何週間も滞在している間に
お金も底を尽きかけていた
あるお店で
“帰りの電車賃だけ何とか都合をつけるため”
と頼み込んで働かせてもらったらしいが
仕事は思っていたより楽しく、
帰ることを忘れるほどだったらしい
一生懸命に働くマスターは、
オーナーさんにも気に入られ
結局、オーナーの家へ間借りさせてもらい
4ヶ月ほどを過ごした
頻繁に店へ来ていた女性と
言葉を交わすようになり、
ほどなく店以外でも会うようになっていた


「今の絵里子ちゃんのように、
お店に来ても本ばかり読んでいたんだよ」 
と、マスターは笑いながら
その女性との恋物語を聞かせてくれた。 
店が終わると連れ立って帰り
河原で何時間も話をした

自分の身の上話や将来のこと 
女性は市内の有名大学の学生であったが
本当は、
“女の子が学をつけても
何の役にも立たない”と
親には言われていたらしい
精一杯の反抗で、
反対する親を押し切って学校へ通っていた
そんな話を聞かされてショックを受けたそうだ

親は“どうせ、受かりはしない 
万が一受かったら仕方ないから通わせてやる“
といってくれたので受験した。
親の気持ちを裏切る形で見事合格し、
今は晴々とした気分でいる
と楽しそうに話してくれたその人の影響もあり、
家に帰らず京都での日々を続けていたともいえる
いろんなことで
かなり影響を受けた
素敵な女性だったと話してくれた
残念なことに大学を出ても
“特にやりたいことを決めてない”  
“決めてもさせてもらえない”
親は、“お嫁に行くための勉強をしろ” 
というのだ などというような話を聞いて
“自分のことを自分で決めさせてもらえない”
そんな人もいるんだということを知った


それでもその人は、
“今は決めていないけれど必ず何かを見つける” 
と、未来への希望を持っていた


少し遠くを見つめながら
思いだすように話すマスター
私は、その女性が
“やりたいことを見つけたのだろうか?” 
と疑問をもった。

“私のやりたいことはなんだろう?” 

私もその人と少し似たようないきさつで
こちらの大学を受験した
わざわざこちらまで来て
普通のOLになるのでは芸がない
啓太との関係もきっとそのうち変わるだろう
このままいつまでも
おままごとのような付き合いが続くはずもなく 
身体だけの関係になりつつある現実を
見なおさなければ
と、思ったのだった。