「絵里ちゃん
今日は、なんかええ事あったん?」
帰るなり叔母に声をかけられ、
少し驚いた
「ええこと・・・んん、そうかなぁ~?
ええ事かどうかわからへんけど告白されてん」
「いやぁ~そりゃぁええ話やないのぉ~
ちょっと、ちゃんと聞かせてぇなぁ~」
そう言いながら、
嬉しそうにそばへ寄ってきて椅子をすすめる
「ほなとりあえず、着替えてくるわ」
「今日な、3歳も年下の男の子から
“友達になって” って言われてん
相手の子、まだ高校生やねん・・・」
「ふぅ~ん、それで?
絵里ちゃんは、年下って言うのが気になるん?」
「いや、だって・・・おばちゃん、
まだ高校生やで~? 気になるやろぉ~?」
「そうかなぁ~
別に気にすることないんと違う?
お友達なんやさかい、ええやないの
まずは “お友達から” っていうことやろ?
面白そうやない・・・」
そう言いながら、
ホントに面白そうに笑っている
「もう! 他人事やと思て、無責任な・・・」
私は、ちょっとだけ怒ったふりで
そうつぶやいた
叔母は、少し思案顔でいたが
やがてにっこりほほ笑むと
「絵里ちゃん、人生は長いのよ
この先まだまだいろんな人と出会うわ
女性でも男性でも、
いろんな人と出会ってお話したりする中で
いろんな経験できると思うねん
ええ事も悪いことも
いろいろあると思うけど、
まずはなんでも試してみなわからへんよ
それは、年上でも年下でも関係ないのよ
絵里ちゃんは、大胆そうに見えて
意外に気が小さいねぇ
今はわからへんでも、
何年かした後わかることもあるの
叔母ちゃんは叔父ちゃんと結婚する前に
お付き合いした人がいて
本当はその人と一緒になりたかったけど
いろんな事情があって
一緒にはなられへんかった、
その時はとっても辛かったし、
悲しかったけど
今となったら、
叔父ちゃんと結婚して
本当に良かったと思ってるのよ
今とても楽しくしてられるのも
叔父ちゃんに会うたからやと思うしねぇ」
“別に好きな人がいたって言うのは、
叔父ちゃんには内緒やでぇ”
と、悪戯っぽく笑いながら
ナイショの話をしてくれた
“深く考えることはないかもしれない”
と思うと
肩の力が少し抜けたように思った。
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三十路手前の今なら
3歳くらいの年の差なんて、
対して気にもならないけれど
あの時はまだ
大学生になってまもない頃だったので
“3つも年下”となれば、
かなり年の差を感じた
しかもいきなり言われて驚いたので
すぐには返事が出来ずにいた。
でも啓太の方は平気な顔で
“そんなに驚かなくてもいいし、
深く考えないでよ、友達なんだし”
と、涼しい顔をしていた
難しく考えたのは、
自分だけなのか?と
ちょっと恥ずかしくなったが
その後何日かして
“じゃぁ友達として、お願いします”と
返事をした
それからは店で会うと隣りに来て
その日の出来事や友達の話など
高校生らしい会話を話して聞かせてくれた。
啓太はとても人懐っこくて、
誰とでもすぐ打ち解けるのが得意なようで
私の“言葉コンプレックス”も
いつのまにかなくなっていた