「米福(こめんぶく)と糠福(ぬがんぶく)」
むがしな、あるどごろさ、二人の兄弟えだっけど(いました)姉の名前は「米福」妹は「糠福」と言ったけど。
姉の「米福」は、なくなったお母さんの娘で 妹の「糠福」は あどから来た おかさんの娘だど。
あどから来た おかさんは、自分の子供の「糠福」ばかり、めんけがって 姉の米福どごだば、なにしても気に入らず いじめてばかりいだど。
秋になったとき、おかさんは、二人をよばって 二人にひとつづつ 袋をわたして、「さあ、おまえたち、二人で山さえって 栗こ 拾って来い。
この小袋さ いっぱい わっぱか(わりあて)だど」、言って 山さ 栗拾いにやったど。
ふたりは、一生懸命 拾ったどよ。しばらくたつと 妹の「糠福」は 「あね、あね(姉さん) オラいっぱい拾ったで、もどるでゃ。」
と言って、さっさと帰ってしまったどよ。
米福は、なんぼたまったべと、袋の中を見たば、なんも入ってなかったど。米福の持った袋の 底が抜けていたのだっけど。
これだば、なんぼ拾っても いっぱいにならないわけだ。やがて、日が暮れかかってきたもんださげ 米福は、しくしく泣きだした。
そこさ、亡くなったおかさん(お母さん)が、出はってきたっけど。「米福、米福。 おかさんいいものけるがら(あげる)家さ帰ったら
板の間さ、これころがしてやれ!」と言って 大きな栗を 一粒 娘に渡して スーっと姿を消した。
米福は、その栗を大事に持って、家さかえって行ったど。家さ着くと 後のおかさんが「米福 おめぇ、わっぱか(割り当て)でかしたか」
と、大っきな声で、さかんだ(叫んだ)ど。米福は、黙っておかさんから貰った 大きな栗を 床板の上に
転がしてやったど。栗は見ているうちに増えて 台所にえっぺぇ(いっぱい)になったど。そえでも、このあとも、後のおかさんは、
なにかにつけて、米福をいじめ続けていだど。ところが、ある日、だしぬけに 長者の家から 米福を嫁にけでけれ(ください)と、言ってきたど。
長者は、前々から 米福のことを気立ての良い、かわいい娘っこだと思っていたんだと。びっくりしたおかさんは、「姉の米福だば、見たく無し(醜い)の
せやみもの(無精者)だから、なんとか、器量よしで働き者の、糠福を、もらってくれ」 と言って、頼みに行ったど。
んだども、長者の家では、素直な米福のほうを もらいたいと言ったので やっぱり、米福がお嫁に行ったんだと。家さ残った「糠福」は
「くやしい、くやしい」と言って 泣き騒いだども、どうにもならねくて、「ああ、うらやましや、うらつぶ(タニシ)」
と言って、そばの池さ はまって、とうとう、うらつぶになってしまったど。死んだおかさんが 米福を守っていたんだな。
とっぴんぱらりの ぷう~