タイのプーケット島で泊まっていたホテルの前の浜辺には何匹かの犬が暮らしていた。
いちおうテリトリーがあるらしく、
遠くに大と小の白い2匹が遊んでいる姿が見えたが、こちらの方にやってくる気配はなかった。
浜辺に行った初日、待機している現地のおばさんたちが、
ビーチパラソルやデッキチェアの準備をしてくれている間、
荷物を持ったままじっと待っていると、デッキチェアの下に動くものがあった。
覗きこんでみると、そこにいたのは子犬よりもちょっと大きくなったくらいの、
まだまだ子供の茶色い犬だった。
細身でとても可愛らしい顔だちで耳がぺろんと垂れている。
私達がかわるがわる覗きこんだり、ビデオで撮影しても逃げようとしない。
はたはたと尻尾を振りながら、横になっていた。
私はこの犬に「茶子」と名付け、友好を深めようと思った。
そこにやってきたのは、茶子にそっくりな黒い犬だった。
そこいらじゅうをぴょんぴょん跳ねまわり
「ちょっと落ち着きなさい、あんたは」と言いたくなるくらい、元気がいい。
茶子よりもちょっと大きいオスで、この犬には「黒太郎」と勝手に命名した。
またまたそこに、黒太郎がそのまんま大きくなったような、
2匹の母親らしき犬がやってきた。
茶子はデッキチェアの下から飛び出して、母犬にまとわりついて、大きく尻尾を振っている。
黒太郎は相変わらず跳ね回る。
それを見た母犬は、口を大きく開け、黒太郎の首をかんで砂の上に転がした。
母犬は前足で、ぐっと黒太郎の首根っこをおさえつけた。
黒太郎はキュンキュンと鳴きながら砂の上で転がっていたが、
母犬はそれにかまわず、まるでおしおきをしているかのように、毅然とした態度をとっていた。
そしてそれからは黒太郎は、あちらこちらではしゃぎまわることもせず、
母犬にくっついて歩くようになった。
「なかなか見上げた母犬だ」と私は感心した。
地元のおばさんは「この犬たちはビーチに棲んでいるんだよ」という。
そう言えば、傍にやってくるたびに、ふんふんと必要以上に私たちの手元をかぐ。
しかしちゃんと節度を守っている、とても利口な犬達なのであった。
つづく
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