女性が歳を取っていくのもそれなりに大変だが、
私には男性が歳を取る方がこれからは大変なように思える。
最近は「濡れ落ち葉」という言葉は殆ど聞かれなくなったところを見ると、
これではいかんと男性も退職後の生き方を考えるようになったのかもしれない。
「濡れ落ち葉」がそこそこ山積みになっていた頃、私はその典型的な場面を目撃した。
平日の午前中、大型手芸店に行くと売り場にオヤジがいて
妻らしき女性の後をぴったりくっついて離れない。
そして彼女が何かを言うと、待ってましたとばかりに、フロアを早足で歩き回る。
そして「お母さん、お母さんっ」と明るい声で妻を手招きしながら呼び、
探していた物があると棚を指さした。
そう言われた妻の方は「あら、そう」
と特別にありがたがるふうでもなく、
彼が立っている場所まで歩いていった。
そんな時間に手芸店にいるのは小さな子供を連れたお母さんか中高年のご婦人が殆どだ。
男性は皆無といっていい。
ただでさえ存在が目立つ上に、
「お母さん、お母さんっ」と大声を出されて、
妻としては相当恥ずかしかっただろう。
それを見た私は「男性の人生も大変だなぁ」とうなずいたものだった。
会社に勤めていた時は、彼は頑張って働いていたに違いない。
仕事一筋だと退職してやるべき仕事がなくなったとき、
何をするべきなのか、何をしたいのか分からない。
家にいても退屈だ。
妻は家事、趣味などやることも沢山あるが、
自分は、ぼぅ~っとしているしかない。
会社で自分のやるべき仕事がない恐怖を知っているから、家庭でも何もしないのは恐怖だ。
このままでは妻にも背かれるかもしれない。
とにかくまずは妻の腰巾着となってぴったりとくっついていれば何とかなると、手芸店まで足を踏み入れたのだろう。
つづく
シミ、シワ、タルミ専門店
SOU創顔