プーケット到着後の翌日、再び浜辺に行って泳いだり、
ぼんやりしたりしていると日本人の新婚カップルとおぼしき若い二人連れがやってきた。
二人とも、肩からクーラーボックスを下げている。
そしてデッキチェアに座ったとたんに、
クーラーボックスを開け、中からホテルで作ってもらったと思われる昼ごはんを取り出して、むさぼりはじめた。
それも単にサンドイッチやスナック類を食べるというのではなく、立派な昼ごはんである。
肉はあるわ魚はあるわ、私達は「あんなにちゃんとした料理を、
こんなところで食べることないじゃん」と言いながら、次に何を食べるのかと、横目で様子をうかがっていた。
彼らの様子をうかがっていたのは、私達だけではなかった。
豪勢な昼ごはんのにおいを感じとって母犬と黒太郎、茶子がやってきた。
それもすぐそばに寄って行って媚びまくってねだるということはせず、
ちょっと離れところにきちんと座って
「よかったら、私らにもわけてくれませんか」という風情を漂わせているのだ。
それを見た新婚カップルは、手にしていた器からおかずをつまみあげた。
そしてそれを、目の前に犬がいるというのに、ぽーんと背後に投げた。
それを見た3匹の犬たちは本能に勝てず、もの凄い勢いで投げられた食べ物を拾いにいった。
そしてぺろぺろと口のまわりをなめながら戻ってきて、また彼らの前にちょっと距離を置いて座るのだ。
カップルは図に乗って手にした食べ物を、あちらこちらに遠投した。そのたびに犬たちは食べ物を追って走る。
「なに、あれ」
私達はデッキチェアに座ったまま口々に言った。
「食べ物を投げて、拾わせるなんて最低だー」
「目の前にいるんだから、そこに置いてあげればいいじゃん」
「そうだそうだ」
「二人とも顔が丸くて、色白でムチムチしてるけどさ、目つきが冷たいのよ」
「あ、本当だ」
「やーね、やーね、ああいうのって本当に嫌だわ」
そいつらのせいで犬たちは浜辺を行ったり来たりさせられていた。
つづく
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