愛しのボニー

元保護犬
2020年9月21日没(推定10歳)
ラブラドール・レトリバーのボニーの思い出

家族にまつわる話10

2021-09-10 10:11:39 | 思い出

初めて住んだのはお風呂もないアパートだった。

八畳一間にダイニングキッチン。

エアコンもなければ湯沸かし器もない

冷蔵庫も洗濯機も夫が以前から使っていたもので

小さくて古びていた。

 

わたしたちは身の丈にあった生活しか望まなかったので

それで充分だった。

 

初めての街はもの珍しくてふたりで歩くのが楽しかった。

あり合わせの食材で何が作れるか

考えるのも楽しかった。

 

母は経済的なことだけを心配していたけれど

わたしは仕事を続けていたし

夫も仕事が大好きな人で…

というか仕事のことしか考えないところがあった。

 

なので生活が立ち行かないどころか

結構な貯金ができていった。

それはこの時代ならではなのかもしれなかったけれど。

 

この時代…求人などいくらでもあったし、

預金の利息が年4~5%とか普通にあって

今の若い方は驚かれるのではないかな…と思う。

そういう 人も経済も元気な時代があった。

 

わたしたちはここに1年半ほど住んでいたが

どんどん夫の仕事が忙しくなり、この狭いアパートに

手伝ってくれる人を呼ぶことになったりして限界になり

新しい(賃貸の)マンションに引っ越すことになった。

 

この狭いアパートにいたときに

母が来たことがあった。

ドアを開けるといきなり右側に洗濯機が置かれているのを見て呆れ、

湯沸かし器のないことに呆れ、

小さい冷蔵庫に呆れていた。

 

そして、届いていた夫宛ての郵便物をびりびりとすべて開封した。

これにはわたしがびっくりした。

母にしてみると目下の人間のものなど

自分のものも同然だったのか。

未だによくわからない。

 

郵便物はほぼ支払通知書で、

母はその金額に驚いて

「おまえのところは凄い稼ぎがあるじゃないか」

「これだけあるなら少しこっちに回したらどうなんだ」

と言った。

 

母は何もわかっていないのだな…とうんざりした。

フリーの仕事とは依頼があって成り立つもので

前に母が言ったように

依頼がなければ無職のようなものだ。

それに今はスタッフにお給料を支払う立場になっている。

入るのが多ければ出るのも多い。

当然のことなのだが。

 

その後 帰ってきた夫に

「ごめんなさい…母が開けちゃって…」

というと

「いいよ、べつに」

と気にしていない様子だったが

わたしは母がおかしいのではないかと

このあたりから思うようになった。


家族にまつわる話9

2021-09-09 08:01:16 | 思い出

その後は式場を決めたり住む場所を考えたりで

忙しく時が過ぎていった。

 

そして式の当日。

床に手をつき

「長い間お世話になりました」

と母に向かって頭を下げると

「わたしの言うことを聞かないんだからしょうがないね」

「おまえはとんでもない馬鹿だから」

「続かないよ。絶対やっていけない」

「おまえはその時になってせいぜい後悔するがいい!」

そう言われ

 

最後くらいは励ましてもらえると思っていたので

ショックでしたが

母にしたところでわたしの不幸を望んでいるはずはなく

式の当日に母にこんなことを言わせてしまう

自分の親不孝ぶりを思って泣けてしまい

「ごめんなさい」「ごめんなさい」「ごめんなさい」

と泣きながら何度も繰り返しました。

 

母のこの予言(?)は方向性こそ真逆でしたが

ある意味では正解でした


家族にまつわる話8

2021-09-09 06:41:50 | 思い出

一方、夫の実家にご挨拶に行って

我が実家との違いに愕然とした。

 

夫の祖母、両親、妹弟

土地柄も関係しているのかもしれないが

明るく のんびりしていて笑いが絶えなかった。

夜、日付が変わるまで食べたり飲んだり話したり。

 

自分が品定めされているのはわかっていたけれど

居心地よく、自分がここの一員になれるのかと思うと

戸惑いを感じつつも心底うれしかった。

 

ただ、驚いたのは義父が夫の仕事を認めていないことだった。

「おまえはいつ帰ってくるんだ?今なら就職先を世話できるんだぞ」

そう言っていた。

 

“若いうちだから大目に見てやってる” 感がありありで

まるで子供扱いだった。

そんな子供が連れてきた素性の知れない更に子供――

というのがその時のわたしの立場だった。


家族にまつわる話7

2021-09-07 10:23:03 | 思い出

わたしの夫はフリーで仕事をしています。

その仕事に興味を持っていたわたしは見学に行かせてもらい

そこで知り合いました。とくに二人で会ったわけではありません。

(すみません どうでもいい話です

 

その後 わたし自身は 自分には才能がないと気付き

普通に就職していわゆる丸の内OLになりましたが

就職して間もなく すでに二人の間では結婚を決めていました。

 

姉の抜けた家はますます負のオーラが漂い

帰りたくない場所になっていました。

 

今思うとわたしは夫を利用したのかもしれません。

当時24歳の彼を大人だと思っていましたし、

18歳の自分のことだって大人だと思っていました。

これから自分たちで新しい家庭を作るんだ!と

希望に燃えていましたが

実は わたしの

「逃げたい」「逃れたい」という気持ちが

結婚に向かわせたのは間違いありません。

 

母に結婚したい旨を伝えると

相手の収入はどれだけあるのだと聞かれ

フリーの仕事なので定まった収入はとくにないというと

それを無職と決めつけ大反対されました。

 

「わたしの目の黒いうちは勝手なまねはさせない」

と言った時の怖い顔を今でも思い出します。。。

 

 

でも、父が病気にならなければ 

母もまた違う人生を送ることになったのでしょう…


家族にまつわる話6

2021-09-06 10:29:59 | 思い出

姉が結婚したいと言い出した。

 

姉には数年、お付き合いしている人がいたので それは至極当然のことに思えた。

その時わたしが思ったのは 結婚は口実ではないか。

姉もわたしと同じように

「早く家を出たい」

そう思ったのではないか。

何も言わないけれど 姉もわたしと同じように

見たくない現場に遭遇したのではないか。

思うことはあっても 何も言えない――

 

わたしも高校を卒業したら家を出よう。

もう少しだ。頑張ろう。

そう思う時だけ明るい気持ちになれたのだった。

 

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高校3年生の時に知り合った人。

それがわたしの現在の夫です――