源氏物語と共に

源氏物語関連

浮舟

2013-05-20 10:44:50 | 登場人物
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先月はお休みしたのですが、
東屋 いよいよ浮舟です

浮舟って哀れな娘。

母の身分が低く、宇治八の宮の娘として生まれたものの、
認められず。


母の再婚相手・常陸介にも、連れ子として扱われ、婚約するも
相手が常陸介の実娘でないと知ると、破談になって、実娘と婚約されてしまう。

中の君宅に預けられると、
今度は中の君の留守中に、匂宮に新参のものかと見つけられ
手を取られてしまう

乳母が気がついて、その場は何事もなかったけれど、
やはりショックで寝込み
髪の毛を洗って留守にしていた中の君が匂宮に見つかったという報告を聞いて、飛んできます。

この場面は、中の君が浮舟を慰めるために、
物語を見せる場面。浮舟は絵を見て、女房は詞書きを読んでいます。
絵巻を見るのは珍しかったのでしょうか、浮舟は夢中になっています。

中の君は、、そんな浮舟を
まじまじと観察して見ています。残っていた髪の毛の手入れを女房にさせながら。

故姉君(大君)にやはりよく似ている、
ものごしの上品さには劣るものの、
初々しい浮舟を、必ず薫が気にいるだろうと思っています。

匂宮の件を乳母から聞いて、浮舟の母も飛んできます
中の君宅で、もしもの事があったら、
姉妹で匂宮を争う事になる。

しかし、身分も高い中の君が、匂宮の男子を産んでいるため、中の君の立場は安泰
母の身分が低い浮舟は
せいぜい中の君の侍女に手がついたぐらいの世間の評判になると、
あわてて、ひそかに持っていた三条の家に浮舟を移します。

どこへ行っても行き場所がない浮舟なのです。

その後、薫が三条の家へやってきます。
絵巻にもありますね。薫がぬれ縁に座っている場面。

薫は先に弁の尼を送り込んでいるため、
雨の中、次第に中に入れられます。
何故かこの場面は雨なんですね~
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そして翌朝に浮舟を宇治に連れていきます。
その道中も、これから先を暗示しているような、不安材料があります。
昔を思い出し、涙にぬれる薫と弁の尼。
薫は浮舟と牛車に乗りながらも、この道もよく通ったと、
故大君のことを思い出して涙ぐむのです。
弁の尼も涙にぬれ、せっかくの門出ながら、不吉ですね

この巻は、何故か右近、常陸介と、空蝉を思い出す登場人物が多く、
感覚がごちゃまぜになってしまいます。
その後にも、空蝉の弟のような、浮舟の弟などが現れ、
空蝉と似た感じがして不思議だな?と思う
浮舟のまわりの登場人物です☆

浮舟という名前は、後世の人が巻の歌からつけた名前ですが、
舟が浮いているように、流れて、行く場所のない浮舟にピッタリだという事でした。

そして光源氏のまばゆい光と、宇治十帖の影。
見事に光と影を描ききった源氏物語だと、米田明美先生はおっしゃっていました。
 

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宿木 形代(かたしろ)

2013-03-16 13:21:12 | 登場人物
楽しみな源氏講座、今回は宿木の続き
 
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匂宮は、夕霧の六宮と結婚して、
なかなか二条院に引き取った宇治の中の君のところへ通えない。
 
それもそのはず、
匂宮は六条院の南、紫の上の祖母がいた邸宅に住み、
夕霧は同じ六条院の花散里がいた夏の御殿に住んでいる。
落ち葉君も養女となった六宮もそこにいる。
 
重々しい身分ゆえ、
夜に出かけるとなると、はたの目や、夕霧にもすぐわかってしまう。
 
中の君は匂宮の訪れがないのをさびしく思い、
色々と後悔する。
薫が八宮の法事をすませたと阿闍梨に聞き、
ありがたく思うから、一度お話を聞きたいと手紙で伝える。
 
みちのくのゴワゴワした分厚い紙に
要件のみを書く方法で、誰に見られても怪しまれないように。
 
中の君にとって匂宮に捨てられることが、1番恐ろしいことであるから、
薫もよくわかって、そっけないほど同じようにみちのくの紙に返事を書く。
たまたま匂宮が来ていたが、手紙の内容が要件のみだったので、
ホッとする中の君であった。
 
薫も匂宮が六の宮と結婚したことを知っているから、
中の君の心中も察し、いつもよりおしゃれして中の君の所へ行った。
 
丁子染めの扇子を持ち、
今ままでは外の縁側(すのこ縁)での対面だったが、
さすがに来てもらったからにはと、中に入れ、
几帳を隔てて対面する。
1度宇治に連れて行ってくれないかと。
やはり薫の財力の援助なしには宇治でさえ、行くことができない中の君であった。
 
*丁子というのはクローブの蕾で、とても高価なもの
拙ブログ記事を参照
http://blogs.yahoo.co.jp/hana0101/25590372.html 
最近では、
ハーブのポマンダー(オレンジに丁子を突き刺し、
オールスパイスで香りをまぶしたもの)に作られるが、やはり高価である。
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中国では丁子は、皇帝が口にふくんで口臭をとったとさえ言われるものである。
匂宮が着たという丁子染めの着物など染色に、どんなに量が必要だったことか!
香りがするのが素晴らしいのでしょうね^^
(このあたり、香道などでも、恐ろしいぐらいの価格の蘭奢待などがあります)
 
薫は亡き大君に声まで似通っておられると、つい懐かしく
油断をしたすきに、中の君はしっかり薫に手を捕らえられ、添い寝されてしまう。
妊娠した印までわかったという事は、かなり接近したのでしょうね
さすがにそれ以上のことはなく(以前も大君と間違った時に、2人で宇治で何もなく語らった)薫は帰っていった。
 
そんな中、匂宮が訪ねてくる。中の君は嬉しくていつもよりまとわりつくが、
慎重に下着さえも着替えた中の君であったが、
匂宮はすぐに薫の移り香に気づき、中の君を疑う。
匂宮
「また人になれける袖のうつりがを
       わが身にしめてうらみつるかな」
 
しかし、何もないから中の君は身の潔白を訴える代わりに歌を詠む
 
中の君
「みなれぬる中の衣とたのみしを
       かばかりにてやかけはなれなむ」
と、うち泣きたまへるけしきの、限りなくあはれなるを・・
 
しっかり否定しつつ、
何だか可愛らしくも、あわれですね~
 
そして薫が大君の形代(かたしろ)を作りたいと言ったことで、
中の君は、つい薫に、宇治八の宮に隠し子がいたという話をする。
身分の低い母に生まれた腹違いの妹がいるが、不思議に大君に似ていると。
八宮にとって恥であるから詳しいことは知らないと語られる娘、
これがのちの浮舟である
 
形代の話からこういう展開になるのだけれど、
源氏物語は形代の話といってもよく、
非常によく考えられた登場の仕方であると指摘された。
 
光源氏は亡き母の形代に藤壺を慕い、その形代に姪になる紫の上を略奪し、
そして女三宮に興味を持ち、結婚した。
桐壺院も桐壺更衣の形代に、似ているという藤壺を入内させた。
 
紫式部は母も、姉とする人も亡くし、やはり形代を求めたのかどうかわからないけれど、
夫も3年で亡くし、世のなかを憂しと思っていた事は確かである。
 
夕霧も早くに母を亡くしているし、宇治の姫君達も母を早くに亡くしている。
 
そういう意味でも母の無い人が多い源氏物語である。
 

 
 
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宿木

2013-02-17 14:33:24 | 登場人物
国宝源氏物語絵巻には、
巻によって様々な有名な場面が必ず描かれていて、
後の世の絵にも、同じように巻がそれとわかる場面がある。
 
宿木からは3場面
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帝が薫と碁を打つ場面。
その時の勝負のかけものは、女二宮。
帝は薫と女二宮の結婚を考えている。
 
世間では、明石中宮の生んだ女一宮がもてはやされているが
(実際薫も憧れている)女二宮は、1番先に帝に入宮した故藤壺女御の娘で、
あの頭中将の孫にあたる。
母が二宮の裳着を準備している前に亡くなった事、
そして最初に入内したこともあって、
帝は残された女二宮が愛おしい。
何度も女二宮の所へやってきて
その答えぶりなども見極めて、薫に結婚をほのめかす。
 
薫は、帝から言われれば、臣下としては断れない。
薫はあの光源氏でさえ、院の娘(女三宮)であったが、
当代の帝の娘をいただく事になった。大変な誉れである。
 
しかし、薫は亡き大君を思って、心は晴れない
 
次に有名な場面は、匂宮と夕霧の娘、六の君との結婚の場面。
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女房さえ、素晴らしい服装で控える夕霧の六の宮のきらびやかな部屋
匂宮も美しい六の宮と夕霧の扱いにすっかり気にいってしまう。
 
 
六の宮は、惟光の娘。藤典侍の娘だが、
夕霧が故柏木の妻(落葉宮)と結婚したため
養女に出している。
落葉宮はもともとは皇女であったから、六の宮も身分も格高くなる。
幼い明石中宮が紫上の養女となったのと同じように。
 
次は私の好きな中君が匂宮の琵琶に耳をかたむける場面だが、
今回はここまで。
 
米田明美先生が、女性の視点で色々な事をおっしゃるのが、
とても興味深く、お話が尽きないと言われるのも楽しみである。
 
早蕨で、中の君は宇治から、匂宮の屋敷にひきとられた。
当時は通い婚。正式な妻とはならず、女房側室扱い。
紫の上と同じである。
 
娘が多い夕霧は、東宮や二宮にまで、娘を婚姻させているが、
覚えめでたい三宮である匂宮にも六の君をおくりこむ手立てを取った。
 
妹である明石中宮にも頼むから、、匂宮は断れない。
 
後ろ立て、財力の必要な匂宮にとっても、
正室は必要であると明石中宮は賛成する。
 
様々な立場、中の君や皇女の身の振り方、
夕霧・明石中宮の考えなどなかなか感慨深い所である。
 
(訂正)
最初に、間違って六の宮を惟光の娘と書きましたが、
実際は惟光の孫。
惟光の娘は藤典侍と言い、五節の舞にも選ばれた美しい人。
正妻の雲居の雁の子供より、こちらの子供の方が優秀と
どこかに記述があったような気がします。
そして女二宮の母故藤壺女御は、あの頭中将・致仕大臣の三女です。
梅が枝の巻では、麗景殿として最初に入内しています。
後から入内した明石中宮には、女一宮や、東宮、二宮、匂宮など、
子供が沢山できていますが、
こちらは女二宮のみかと。「新潮日本古典集成」系図より
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大君 皇女のプライド

2013-01-21 12:30:52 | 登場人物
バタバタしていたら、早や松の内も過ぎました。
今年もよろしくお願いします。
 
さて総角(あげまき)
大君の死の場面
 
個人的には、大君にはあまり魅力を感じなかったけれど、
米田明美先生のお話をお聞きして、大変納得できるものがあった。
 
大君は最後まで、皇女としてのプライドを持って死んだ。
 
匂宮と中の君との結婚後、
なかなか宇治を訪れられない匂宮。
宮中では大事な匂宮が3日もいなかったとあって、
母・明石女御が外出禁止令を出す。
 
しかも薫が宇治で紅葉狩りをしようと、その紛れに八の宮邸へと計画するも、
あの夕霧大臣までかけつけ、川で紅葉をふいた船(画像参照)と
管弦の調べの様子だけが、八の宮邸に届くのみで、
とうとう訪れる事ができなかった。
 
大君は、中の君は、もてあそばれたと思って
八の宮の遺言も守れずと自分を責め、病気になってしまう
 
しかも、阿闍梨が夢で八の宮を見て、現世の姿で
「なんの執着もなかった現世だが、
すこし気がかりな事があって浄土に行けないのが、残念である。
往生を助ける供養(お経)をせよ」と、ハッキリと言われたと言う。
それで、現世の姿という事は、まだ極楽へ行っていないからと、
お経を唱えにくる。
中の君、もうたた寝をしている時に八の宮の夢を見たと言い、
自分の夢にも現れないのは、私が悪いからとますます病は重くなる。
 
当然、薫がかけつけ、宇治に看病でこもってしまい、
都では、よほど大切な人が宇治にいると噂が流れる。
 
宇治は都と違って雪が早い。
 
ふと薫が、今日は、宮中の大事な行事
豊の明り (今で言う所の新嘗祭)の日だったな~と思い出す場面があった。
 
そして大君は、亡くなる最後まで薫に顔を見せなかった。
この時代に顔を見せるのは夫婦のみ。
皇女のプライドを守ったといえる。
 
細い腕でかけた布団を引き上げ、顔を隠し(もはや扇で隠す力が無い)
人形のように着物だけを着せられたような薄い姿の状態の中、
中の君について薫が語った時のみ、少し返答した。
 
中の君を私と思って結婚してほしかったのに、
匂宮と結婚させたことを、うらめしく残念に思うと言って、
最後は消え入るように亡くなった。
 
死の場面を長く描かれているのは、紫の上と、大君だけだそうだ。
やはり2人とも、源氏物語では、重要な人物なのでしょうという事であった。
 
しかしながら、中の君はその後は匂宮の第一男子を生み、
人生は、逆転してしまう。シンデレラストーリーともいうべきかもしれないが、
やはりその後の夕霧六の姫との結婚などを考えると、色々思う事がある。
 
八の宮は源氏によって、政治的に失脚したが、
その娘はまた宮中に返り咲いた事になる
薫も光源氏よりも出世は早く、将来皇女二の宮と結婚して
傍目には申し分のない幸せ者であるが、
内面はそうでない。
 
源氏物語というのは、なかなか深いものがあり、
それが魅力の一つでもあり、1000年も伝わったのでしょう
 
この時代の皇女や貴族の娘達の没落も沢山あったのでしょう、
それを紫式部は描いて伝えてくれたという事でした。

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姫君の運命

2012-12-22 11:23:49 | 登場人物
久々の源氏物語 総角(あげまき)の巻
 
講師は甲南女子大学教授の米田明美先生。
 
姫君の運命は、手引きする女房で決まると。
それゆえ、女房の存在は大きい。
零落した姫君が更に落ちていくのか、それとも上にあがっていくのか、
どういう女房を使うかということも大切だと。
そういう事も紫式部は源氏物語に描いてくれていると。
 
零落した姫君は、
女房によって、つまらない男に手引きされて落ちていくか、
身分の低い受領階級に嫁ぐか、
あるいはどこかの貴族の使用人にされるか。
 
八の宮邸にはあの柏木邸にいた弁がいた。
弁は柏木邸にいたくらいだから、
教養もあって、姫君の教育係りとしても申し分ない。
中の君の乳母は、幼い頃に逃げてしまった。
しかし、八の宮が弁を雇った事は正解だった。
 
不思議な糸でつながり、結局、薫が弁に裏もなく打ち明け、
匂宮と中の君は結婚することになってしまう。
 
中の君の場合は、これがうまく良い方にいくのだけれど。
 
そして、紫の上も、光源氏の略奪婚であったが、
もしあのまま父のもとに引き取られていても、
正妻のイジメ似合うか、
結婚するにしても、
正妻の子供達よりも低い結婚になるというお話も出た。
 
今も昔も変わらない。
 
久々の源氏物語は、なかなか面白かったです
 
さて、今年も残りわずか。
皆様どうぞ良いお年をお過ごしください。
 
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