厳しい暑さが続きます。
皆様どうぞお身体をご自愛ください。
さて、源氏物語の色に興味を持ってから
吉岡幸雄氏の他に伊原昭先生を知りました。
ご高齢の女性の先生ですが、
様々な時代の色について研究しておられます。
先日、古本市で先生のご本を見つけましたので買いました
昭和57年 中公新書「平安朝の文学と色彩」
様々な色について載っていました。
上代には中国から来たという五行(あか、あお、き、しろ、くろ)の
色と、身近にある自然界の植物や土で染めた色があった。
つゆくさの花から染めたもの、茜や紅花、紫の根で染めたもの。
またドングリの実(つるばみ)で染めた色など。
最初は単色で染めていたが、
平安時代になると技術の発達もあり、
貴族の邸宅に材料を運び、そこで染める場所があった。
うつぼ物語にもその様子が見られる。
最初は呪術的だった色が次第に身近な四季の植物の色を
真似るようになり、
かさね色や薄い色から濃い色のバリエーションの匂いなど
様々なものが出来た。
そしてたて糸・横糸の色を替えることによって
また違う色あいが生まれていったという。
平安時代は身分によって着る衣装の色が違っていた。
「延喜式(醍醐天皇の勅命によってできた儀式の記録)」には
内蔵寮(くらつかさ)の所に、詳しく載っていると。
自然界への興味は
桜を惜しむ気持ちから、衣を桜色に染めていつまでも惜しもうという歌さえ、あった。
古今集
さくら色に衣はふかくそめてきん 花のちりなん後のかたみに
清少納言の枕草子も紫式部の日記にも
衣装に対する興味があります。
日記には、皇子誕生の時の接待役の女房の衣装について
白一色でも凝った刺繍をほどこした女房の衣装は素晴らしく、
普通のものは見劣りがすると、他の女房とつつきあって笑っている様子が描かれています。
百花繚乱の源氏物語おいて、
光源氏の衣装記述は22例あり、その3分の一が
何と白と喪服色であるという事には驚きました。
もっとも、比較的くつろいだ普段着描写が多いようです。
人生において、喪服を着ることが多かった光源氏。
白は誰にも人工的に染められない色。神の領域でもあります。
冬の雪・月の中での場面。
雨の夜の品定めも季節的に白。
何か意図的だったのかもしれません。
私など、光源氏の印象は
皆が黒一色の中、
桜かさねのあざれたる大君姿が大変印象的だったのですが、
源氏物語の違った一面を見たような気がしました。
衣装については女君への正月の衣配りが有名ですが、
これを書いていたら、すべて消えてしまいましたので、
また何かの折に。
源氏物語は奥深いですね~