「橋姫」では、宇治八の宮の2人の娘=大君と中の君が登場する。
薫が宇治の八の宮邸へ訪れようとすると、
おりしも音楽を合奏する音が聞こえてきて、薫はそっと透垣の戸から覗き見をした。
おりしも音楽を合奏する音が聞こえてきて、薫はそっと透垣の戸から覗き見をした。
国宝源氏物語絵巻でも鮮やかな色彩で有名な琵琶のバチをかかげる姫と琴の姫。
おりしも宇治の月と霧の光は絵巻では銀色で表現されている。
霧や月ではっきり見えないところが物語の姫達のようにと表現されて、
薫だけでなく読者もすっかり神秘的な宇治の世界に引き込まれる鮮やかな登場であった。
薫だけでなく読者もすっかり神秘的な宇治の世界に引き込まれる鮮やかな登場であった。
ここで面白く感じたことは、後に匂宮と結婚して皇子を産む中の君に
「いみじくらうたげに匂ひやかなるべし」と「匂う」という言葉が使用された事である。
「いみじくらうたげに匂ひやかなるべし」と「匂う」という言葉が使用された事である。
そしてこの「匂う」という言葉は、
後の「椎本」や「総角」でも中の君に対して繰り返し記述される。
、
「あならうたげにと見えて、にほひやかに」(椎本)
後の「椎本」や「総角」でも中の君に対して繰り返し記述される。
、
「あならうたげにと見えて、にほひやかに」(椎本)
「中の君はげにいと盛りにて、うつくしげなるにほひまさりたまへり」(総角)
「らうらうじくかどあるかたのにほひはまさりたまへる」(総角)
「こまやかなるにほひなど」(総角)
たぶん中の君は年頃でもあり、華やかな感じがする人の設定なのだろう。
「愛嬌つきたり」という表現もある。
「愛嬌つきたり」という表現もある。
それに対して姉の大君は、「今少し重りかによしづきたり」と表現され、
「匂う」という表現は無い。
むしろ、控えめな感じで「よしある」「かをる」と表現される。
「匂う」という表現は無い。
むしろ、控えめな感じで「よしある」「かをる」と表現される。
匂宮には匂ひやかな中の君。薫には控えめなかをる大君。
ちょっと面白い組み合わせに思った。
ちょっと面白い組み合わせに思った。
この2人の様子については紫式部はかなり詳しく描いている。
2人共に背が高くて上品で、大君は中の君よりも痩せすぎと表現された。
2人共に背が高くて上品で、大君は中の君よりも痩せすぎと表現された。
大君の髪の美しさも良く表現される。
「末少し細りて・・翡翠だちていとをかしげに」(椎本)
「末少し細りて・・翡翠だちていとをかしげに」(椎本)
大君を見る限り、外見よりも内面的な奥ゆかしさが薫の心をとらえたと考える。
結局、大君は死んでしまうが、
亡骸になった髪の毛をくしけずると、
さっと生前のままの髪の匂いがしたという表現などもなかなか印象的に思う。
亡骸になった髪の毛をくしけずると、
さっと生前のままの髪の匂いがしたという表現などもなかなか印象的に思う。