橘の香をなつかしみほととぎす
花ちる里をたづねてぞ訪ふ (花散里)
花橘と古歌でも読まれる橘とはどんな花なのだろう。
柑橘系の木だと思うのだが、ミカンに近い木なのだろうか。
おりしも、A新聞 [高橋睦郎 花をひろう ]に
橘の記事が載っていたので、調べてみた。
橘は万葉の昔から愛でられた。
左近の桜、右近の橘 雛人形の飾りでも有名である。
花は6月ごろに咲き、実は黄色で秋~冬になる。
古歌では花たちばなとも読まれる。
ホトトギスと一緒に歌われるのは、
鳥が柑橘系を好むからであろうか?
オレンジの実を半分に切って木に下げると、鳥がよくつつく。
昔の人を思い出す事で、有名な和歌
五月待つ花橘の香をかげば、昔の人の袖の香ぞする (伊勢物語)
まさしく香は昔の人への追憶。
しかし、古事記と日本書紀には橘に関する記事がある。
多遅摩毛理(たじまもり=田道間守)は、
垂任天皇の命をうけて常世へ行った。
ときじくのかく木の実(時を定めずに輝く果実)を探しに。
しかし、実を手に入れて帰ってくるも、すでに天皇は亡くなっていた。
悲しみのあまり死んでしまうたじまもり。この実が今の橘であるという記事。
それゆえ、橘は異次元の神仙境の実を表す。
古代人は冬に黄色に輝く実に生命力を見、不死を感じた。
そして葉は常緑でもある。
橘は亡くなった人を追想し、失われた時を夢みる。
まさしく花散里も源氏にとって亡き桐壺院を思い出すよすが。
同じく「古典植物誌 知っ得」には、枕草子の事例も載っていた。
花の中より黄金の玉かと見えて、いみじう鮮やかに見えたるなど
朝露に濡れたるあさぼらけの桜に劣らず (枕草子)
橘はミカン(柑子)よりも実が小さいイメージがする。
今でいうと、ジャスミン系の白い花のイメージ?
源氏物語には柑子も見えるから別物と思う。
レモンの木の花もそんな感じだった。
ちなみに和服の模様の橘はお目出度い柄。
後に武将が桐のように家紋にしていたりする。
やはり永遠の生命を感じさせるからだろうか。
画像は橘のwikiより拝借。