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日本 莫大な家計金融資産 韓国 家計が借金まみれの国

2019-07-25 17:33:02 | 日記

資金循環統計

新宿会計士

 一部抜粋

莫大な家計金融資産

「資金循環統計」という統計があります。これは、たいていの国が作成している統計で、家計、企業、政府などの金融資産、金融債務の様子を一覧で確認することができるものです。

先日、日本銀行が公表するわが国の資金循環統計上、家計における投資信託が30兆円ほど過大計上になっていたとする報道がありました。

しかし、かりにそうだったとしても、家計が保有する金融資産は依然として1829兆円という巨額に達していて、家計資産のおよそ53%が現金・預金で、29%が保険・年金・定期保証で占められており、株式と投資信託を合計しても全体の15%、投資信託に至っては4%に過ぎません(図表1)。

 

物価水準の違う日本を上回る家計債務

ところで、私は以前からこの資金循環統計で、さまざまな国の債務状況を分析しています。ユーロ圏や米国なども興味深いのですが、やはり気軽に入手でき、分析できる国といえば、お隣の国でしょう。

これについて、韓国銀行が発表する資金循環統計によれば、2018年3月期における家計資産は3719兆ウォン、つまり約370兆円です。日本円に換算すれば、日本の家計資産(1829兆円)と比べて、ちょうど5分の1程度です(図表4)。

図表4 韓国の家計の金融資産(2018年3月末)
取引項目金額
現金・預金 1608兆0022億ウォン 43%
保険年金基金 1173兆0030億ウォン 32%
株式・投資信託 766兆0020億ウォン 21%
金融資産合計 3718兆0024億ウォン 100%

(【出所】韓国銀行データより著者作成)

しかし、家計債務は1710兆ウォン、つまり約171兆円であり、日本円に換算すれば、日本の家計債務(318兆円)の半分以上を占めています(図表5)。

図表5 韓国の家計の金融負債(2018年3月末)
取引項目金額
借入金 1603兆0041億ウォン 94%
(うち短期借入金) 381兆0014億ウォン 22%
(うち長期借入金) 1221兆0026億ウォン 71%
金融負債合計 1709兆0033億ウォン 100%

(【出所】韓国銀行データより著者作成)

冷静に考えれば、韓国の人口(5125万人)は日本(1.27億人)の半分以下ですから、人口当たりで見た家計債務負担は日本を上回っています。

  • 韓国の人口当たり家計債務…約334万円
  • 日本の人口当たり家計債務…約250万円

韓国の家計が日本の家計と比べてカネを借り過ぎているのか、日本の家計が韓国の家計と比べてカネを借りていなさすぎるのかは一概にはいえません。なぜなら適正な債務の水準は収入や資産の水準、経済成長率やインフレ率などに応じて変わるからです。

いずれにせよ、日本の家計債務は韓国の家計債務と比べて少ない、あるいは韓国の家計債務は日本の家計債務と比べて「多すぎる」、と申し上げて良いでしょう。

家計が借金まみれの国

では、韓国の場合はこの借金をどう見れば良いのでしょうか?私自身が先日からコメントを禁止されてしまった『中央日報』(日本語版)に、昨日、こんな記事が掲載されています。

韓経:借金まみれの韓国の自営業者…金利上がれば48万人が信用不良者(2018年07月31日10時10分付 中央日報日本語版より)

といっても、元記事を配信したのは『韓国経済新聞』であり、中央日報はこれを翻訳しているに過ぎません(ただし、ここでは掲載しているのが中央日報であることから、「中央日報によると」、などと表現したいと思います)。

この中央日報の記事によれば、退職金に加えて借入までして食堂などの店を開きながら、借金を返せなくなる自営業者が増加しているのだとか。そして、自営業者世帯当たりの負債は1億ウォンを超えたなどと記載されています。

ここで、1円=10ウォンと換算すれば、自営業者は1人あたり1千万円程度の借金を負っている計算です。といっても、日韓の物価水準の違いなども考えれば、日本でいえば実質的・心理的には2千万円程度の借金を負っているようなものではないでしょうか。

中央日報は韓国の債務負担の問題を、こう述べています。

「稼ぐ金額より返さなければならない利子が多く増え負債を返せない自営業者が続出している。統計庁によると、1カ月以上返済を延滞した経験がある自営業世帯は2016年基準で全自営業世帯の4.9%に達した。常勤労働者世帯の延滞世帯の割合1.7%と比較すると3倍に達する水準だ。」

なるほど。債務の延滞が生じるのは、日本でいえば不良債権の一歩手前であり、状況はかなり深刻です。

利上げしたら爆死する経済

要するに、韓国経済は現在、利上げをしてしまえば、金利負担で家計債務の破綻が相次ぐ、ということです。

日本の場合は、これだけ利下げをして、日銀当預の一部にはマイナス金利まで適用している状況にあるというのに、それでも家計も企業もおカネを借りてくれません。しかし、韓国の場合は逆に、利上げをすると家計債務の破綻が相次ぐため、下手に利上げをすることができない、ということでもあります。

もし中央銀行である韓国銀行が利上げを行えば、市中の銀行の貸出金利も上昇し、家計としては収益力が追い付きませんから、借金を返そうにも返せないという悪循環に陥ります。その結果、家計債務が返済能力を超えてしまい、多くの人々が破産に追い込まれるのです。

では、どうして韓国では日本と違って、ここまで家計が重い債務負担を負っているのでしょうか?

おそらくその理由の一つは、雇用政策の失敗です。

日本だと、大企業や中小企業などが従業員を雇い、経営の専門家に経営を任せ、人々は安心して会社などの組織で働く、という仕組みが整っています。また、万が一、会社が潰れたりしても、雇用保険などの制度も整っているため、一時的な失業で生活が破綻する、ということは、あまりありません。

さらに、とくに大企業がそうですが、50代以降に第一線から外れた人であっても、子会社、関連会社などに出向先が用意されていることがあります。年金が支給される60代半ばまで、どこかで働くことができるため、わざわざリスクを取って、慣れない事業を起こす必要がないのです。

これに対し韓国の場合は、そもそも企業が40代の時点で「肩たたき」を行います。そして、第一線から外れた人は、まだまだ働けるにも関わらず、自分で転職先を探すか、それともリスクを取って、慣れない事業を起こす必要があります。

貯金をしていなければ、銀行から借りるしかありません。だからこそ、事業性ローンの残高が積み上がっているのです(※もしかしたら、「カネを借りるのに抵抗がない」という民族性もあるのかもしれませんが、このあたりの事情は定かではありません)。


韓国「WTOの支持取り付け失敗」

2019-07-25 17:14:19 | 日記

韓国経済.com

韓国経済を中心に北朝鮮・中国・台湾・日本そしてアメリカの経済状況を説明するサイトです。
 
韓国「WTOの支持取り付け失敗」
韓国産業通商資源省は24日、日本政府が安全保障上の友好国として輸出上の手続きを簡素化する「ホワイト国」から韓国を除外する方針を示していることについて、不当な措置であり、即時撤回を求めるとする意見書を日本政府に提出した。
ジュネーブで24日に開かれた世界貿易機関(WTO)一般理事会では、韓国を支持する動きがなく、ロイター通信は「韓国は支持を取り付けることに失敗した」と報じた。 
 
24日は「ホワイト国」除外に関して日本政府が実施しているパブリックコメント(意見公募)の締め切り日に当たる。
 
除外措置が実施されれば、半導体材料3品目について4日から行われている輸出管理の厳格化に比べ、自動車産業など広範囲に影響が及ぶと予想され、韓国は強く警戒している。
成允模産業通商資源相は、記者会見で「韓国の輸出統制制度の未熟さや両国間の信頼関係の毀損など、日本側が挙げる措置理由には全て根拠がない」と批判。
 
日韓の経済協力の「根幹を揺さぶる重大事案」を事前協議なく通告したとして遺憾の意を表明した。
 
「韓国政府は未来志向的な関係発展のため、いつどこでも対話する準備ができている」とも述べ、日本側に協議に応じるよう促した。
 
韓国の主要経済5団体も23日に「世界経済に相当なマイナス影響を及ぼす」として措置の撤回を求める意見書を日本側に提出した。
 
一方、訪韓したボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は24日、康京和外相と会談し、日韓関係のさらなる悪化を防ぎ、対話を通じた外交的解決を模索する上で、意思疎通を密にすることで一致した。韓国外務省が発表した。 http://www.zakzak.co.jp/
 
コメント
 
思い付きで動くだけで、戦略で動くことができない韓国人では、WTOの支持取り付けに失敗するのは当然だろう。
 
軍事目的における規制を、報復とするはずもない。弱い国ほど大騒ぎするだけとなる。
 
騒げば助けてくれるという甘い考えが今なお強い。
 
孤立を高める意味が理解できないのだから、自己都合の何物でもない。
 
韓国の主要経済団体も「世界経済に相当なマイナス影響を及ぼす」として措置の撤回を求める意見書を日本側に提出したというが、サムスンを語ったところで、既に企業関係は話が出来上がったころだろう。
 
別に世界経済に影響するほどの国ではない。すでにサムスンは米国の企業と化している。
一方、訪韓したボルトン米大統領補佐官は、
 
康京和外相と会談し、日韓関係のさらなる悪化を防ぎ、対話を通じた外交的解決を模索する上で、意思疎通を密にすることで一致したというが、
 
日米は一致した動きの中にいるわけで、韓国だけが米中ロとふらついているわけで、これでは、米国ボルトン氏が訪韓したところで、話は別の議題となる。

第15話・なぜ日本は強いのか? 黒字体質その2・有望な第一次所得収支

2019-07-25 17:08:08 | 日記

前のエピソード――第14話・なぜ日本は強いのか? 黒字体質その1・恒常的な貿易黒字                   

第15話・なぜ日本は強いのか? 黒字体質その2・有望な第一次所得収支

 日本の強さは貿易収支で黒字を出せる強い産業力があるということを述べた。大災害が原因で、数年に渡って赤字になることもあるが、それでも年月を重ねれば黒字化に持っていけるだけの基礎体力を備えている。貿易収支で黒字が出ていることは産業力の強さの証拠でもある。ものづくりに関してはいまだに健在なのだ。

 

 だがしかし、いまや貿易収支は「最重要ではない」。というのも、いま対外収支で黒字をもたらしているものは別の項目、「第一次所得収支」だからだ。

 

 第一次所得収支は対外金融債権・債務から生じる利子配当金などの収支状況で、なによりこの黒字がとても大きい。主に証券投資収益と直接投資収益だ。

 証券投資収益は海外からの株式債券の配当金や利払いで、直接投資収益は海外での投資により得られる所得だ。

 

 特に直接投資収益の伸びが顕著だ。1990年代以降、グローバル化の進展に伴って日本企業の海外移転や対外投資活動の強化の結果として現れてきたものだ。これがやたらとデカい。

 2016年時で約18兆円もある。貿易黒字の四倍以上だ。しかもこれは2015年度に比べて円高になっての数字だ(2015年は約20兆円の黒字。つまり2兆円ほど大きかった。当時はいまより円が安かった)。

 

 実はいま、日本の黒字のかなりがこの第一次所得収支だ。貿易収支が赤字になった時でも、この第一次所得が常に黒字だったために経常収支が黒字になる・・・というのが近年の傾向だ。

 

 前述のように東日本大震災の悪影響で生産力が減衰し、貿易収支が赤字になっていた時、この赤字分を補って黒字を出していたのがこの第一次所得収支だった。

 しかも海外から早急に大規模に撤退するということも考えられないため、これからドンドンと蓄積し、黒字も累積していく可能性が高い。今まで頑張って海外に投資してきた分がリターンバックし始めてきたのだ。これからの伸びが期待できる。円安になれば儲けも相対的にデカくなる。

 

 意外と大切なのは知的財産権に関わる黒字だ。技術移転に対する著作権料みたいなもので、主に自動車関連技術だ。知財収支自体は2015年の財務省統計では毎年2.5兆程度の黒字に過ぎないが、それでもアメリカに次いで世界第二位で、日米でほぼ八割を占める。また今後も増加が望める。

 

 そもそも2.5兆円程度・・・と言ったが、2016年の貿易黒字は4兆円だ。

 この対比50%以上の額をゲット出来ているのだ。しかも「座ったまま」で、だ。そしてこれらの資産は海外に置いてきた「財産」であり円安になれば資産価値は更に増える。

 

 さらに最近では海外旅行客の激増もある。旅行収支は訪日客の増加を背景に約1兆2800億円の黒字が出ている。旅行収支に関しては、円安による海外旅行客の増加が主な要因なので、円安が続く限りこれからもますます増加する期待が持てる。

 

 なによりこの二つの勘定科目が含まれる「サービス収支」は(これだけの黒字が出ていても)まだ1兆円近く赤字なのだ。ということは、知財収入と外国人訪日客が増えればサービス収支の赤字を消すことが出来るようになる。

 

 そしてトータルとして2016年の経常収支は約20兆円のプラスだった。

 

 この国際収支の黒字分は日本国の家計簿±ゼロに「プラスの収支」として計上出来る。つまり日本国は黒字になった。

 先程も言ったとおり、黒字分が出ている間は国債という借金をしても、まずはなんとかなるのではないか? という安心感を持てる。

 

 しかし、黒字が出ているという事以上にさらに重要な事がある。経常収支の構造に変化が出てきているのだ。おそらく「良い方向に」だ。

 1996-2016年の経常収支の傾向を調べてみると、以下の傾向が読み取れた。

 

・経常収支は主に「貿易収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支(対外無償資金協力など)」「サービス収支」。そして経常収支は常に黒字。

 

・黒字は「第一次所得収支」と「貿易収支」、赤字は「サービス収支」と「第二次所得収支」。

 

・第一次所得収支は伸び続けている。常に黒字で過去30年で二倍に伸び、今後とも累積効果によって増加する。

 

・貿易収支は減少傾向にあるものの、基本的には黒字。

 

・貿易収支が赤字だった時期(2011-2015年間)でも、第一次所得収支が埋め合わせることで、経常収支は黒字を維持した。

 

・サービス収支には知財収入と旅行収支が含まれていて今後の伸びが期待できる。つまりサービス収支の赤字は減少し、黒字化さえ可能。

 

・・・このことから言えるのは、「何があっても赤字にならないor極めてなりにくい」ということと、赤字を出しているサービス収支の赤字幅が激減するだろうということだ。

 

 これはつまり「赤字になる要素が、さしあたり無い」ということでもある。

 

 これが円高にブレたがる理由の一つだろう。黒字が出ていることと、今後、より黒字が出続ける傾向にある・・・というのでは、円が弱くなりようがない。つまり国力の低下する理由がさしあたり無いのだから。

 

 そして対外的に黒字が出ている間は、国債の発行に関しても「なんとかなるのでは?」と思えるのならば、この状態は「とてもなんとかなる」と思えるはずだ。これが日本国債が結局は市中で買い取られ、また長期国債の金利が低い理由の一つになっているのだ。つまり「日本国は信頼されている」ということだ。真面目に働くことの意義深さだ。

 

 さらに日本には、他にも収支には現れない財産がいくつもあるのだ。

 シアワセなことに・・・。


韓国「WTOの支持取り付け失敗」 ロイター通信報道

2019-07-25 16:44:52 | 日記

韓国「WTOの支持取り付け失敗」 ロイター通信報道

 

2019.7.25
 
【ソウル=桜井紀雄】
 
韓国産業通商資源省は24日、日本政府が安全保障上の友好国として輸出上の手続きを簡素化する「ホワイト国」から韓国を除外する方針を示していることについて、不当な措置であり、即時撤回を求めるとする意見書を日本政府に提出した。

ジュネーブで24日に開かれた世界貿易機関(WTO)一般理事会では、韓国を支持する動きがなく、ロイター通信は「韓国は支持を取り付けることに失敗した」と報じた。

24日は「ホワイト国」除外に関して日本政府が実施しているパブリックコメント(意見公募)の締め切り日に当たる。

除外措置が実施されれば、半導体材料3品目について4日から行われている輸出管理の厳格化に比べ、自動車産業など広範囲に影響が及ぶと予想され、韓国は強く警戒している。

成允模産業通商資源相は、記者会見で「韓国の輸出統制制度の未熟さや両国間の信頼関係の毀損など、日本側が挙げる措置理由には全て根拠がない」と批判。

日韓の経済協力の「根幹を揺さぶる重大事案」を事前協議なく通告したとして遺憾の意を表明した。

「韓国政府は未来志向的な関係発展のため、いつどこでも対話する準備ができている」とも述べ、日本側に協議に応じるよう促した。

韓国の主要経済5団体も23日に「世界経済に相当なマイナス影響を及ぼす」として措置の撤回を求める意見書を日本側に提出した。

一方、訪韓したボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は24日、康京和外相と会談し、日韓関係のさらなる悪化を防ぎ、対話を通じた外交的解決を模索する上で、意思疎通を密にすることで一致した。韓国外務省が発表した。

ボルトン氏は、韓国大統領府の鄭義溶国家安保室長や鄭景斗国防相とも会談、北朝鮮核問題などでの日米韓協力の重要性を再確認した。

韓国は、深刻化する日韓対立の仲裁を米国に期待しているが、米側は、まずは日韓で解決すべきだとの立場を維持している。

(産経新聞)

 


輸出規制に文在寅は打つ手なし、日本を非難するほど半導体は「韓国離れ」の皮肉 韓国観察者の鈴置高史氏の解説日本の新聞では報道されてない真実

2019-07-24 15:45:25 | 日記

輸出規制に文在寅は打つ手なし、日本を非難するほど半導体は「韓国離れ」の皮肉

韓国・北朝鮮2019年7月23日掲載

 

韓国は八方塞がりだ。

半導体素材の輸出管理を強化する日本への対抗策が見当たらない。

日本を非難するほどに自身の地政学リスクを浮き彫りにしてしまい、半導体産業の顧客離れを加速する。

韓国観察者の鈴置高史氏が対話形式でその七転八倒ぶりを解き明かす。

日本の記者にはこれほどの識見があるのか。新聞は産経のように主義主張を書くべきだ。

「米国を脅すな」

鈴置: 日本との紛争に困惑した文在寅(ムン・ジェイン)政権は米国に助けを求めました。

まずは7月10日、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官がポンペオ(Mike Pompeo)国務長官に電話したのですが、相手にされませんでした。

 それどころか、韓国が逃げ回ってきた「インド太平洋戦略」――中国包囲網への参加を念押しされてしまいました(「日本に追い詰められた韓国 米国に泣きつくも『中国と手を切れ』と一喝」参照)。

 そこで韓国政府は揺さぶりに出ました。

7月18日、青瓦台(大統領府)の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が日本とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)について「状況によっては(延長を)再検討する可能性がある」と述べたのです。

 GSOMIAは米国が苦労して日韓に結ばせた経緯があります。それを壊すぞと脅すことで、米国の仲裁を引き出す作戦でした。

 しかし同じ7月18日、米国務省は自身が運営する放送局、VOA(アメリカの声)を通じ、「日韓GSOMIAの延長を支持する」と表明したのです。

米国務省『日韓GSOMIAを全面支持』…非核化の重要な手段」(韓国語版)です。要は「つまらない小技を使って米国を脅すな」と韓国を叱りつけたわけです。

突き放したトランプ

 トランプ大統領も韓国には極めて冷淡でした。

翌7月19日、記者から「日韓間の緊張」に関し聞かれると、以下のように答えました。ホワイトハウスのサイトから一部を引用します。

・In fact, the President of Korea asked me if I could get involved.  I said, “How many things do I have to get involved in?”  I’m involved with North Korea — on helping.  You know, I’m involved in so many different things.

 仲介を頼んできた韓国の大統領に対し「いったいどれだけ私が仲介せねばならぬというのか?北朝鮮でも仲介し、助けているというのに。

そうだろ、私は実に様々のことに巻き込まれているのだ」と言った――とトランプ大統領は明かしました。「

これ以上、面倒をかけないでくれ」と韓国を突き放したのです。

 さらに「日韓双方が望むのなら仲介する。しかしそれでは私は日韓の仲介に専念することになってしまう」とも語りました。原文は以下です。

・So maybe if they would both want me to, I’ll be.  It’s like I’m — it’s like a full-time job getting involved between Japan and South Korea.

 日本は仲介を望んでいないので「双方が望むのなら」とは「仲介する気がない」との意思表示です。

さらに「そんな時間はない」とも言い足して、拒否の姿勢を明確にしたのです。

 なお、文在寅大統領から直接頼まれた可能性は極めて低い。

最後の米韓首脳会談は6月30日でしたがこの時、韓国政府は日本が半導体素材の輸出管理強化に動くとは考えてもいなかったと見られるからです。

「嘘を書くな」と怒る読者

――トランプ発言を韓国紙はどう書いたのでしょうか。

鈴置: 「双方が望むのなら仲介する」という部分だけを取り出して、トランプの介入があるかのように報じました。政府に近い左派系紙のハンギョレは、その前提で社説まで書きました。

安倍政権は韓日関係・東アジアの平和を重く受け止めよ」(7月22日、日本語版)で以下のように現状を説明しています。

・ドナルド・トランプ米国大統領が一昨日、「韓日首脳が望むなら」という条件を付けながらも、介入の可能性を示唆したのも、韓日関係が単に両国の問題にとどまらないことを示している。

 保守系紙の朝鮮日報も同じ手口を使いました。

トランプ『文大統領が韓日関係への関与を要請…両国が望めば役割果たす』」(7月20日、韓国語版)では「いったいどれだけ私が仲介せねばならぬというのか?」などの否定的な部分を全く引用しなかったのです。

 この記事で面白いのは、読者がコメント欄で「嘘を書くな」と朝鮮日報を厳しく批判したことです。次です。

・VOAにはこのニュースが出ている。朝鮮日報はまた歪曲報道している。(トランプ大統領は)「北朝鮮問題にも私は介入して解決に努めている。この問題までも介入せよと言うのか?(中略)」とインタビューに答えているのだ。

 確かに、VOAは「トランプ大統領『文・韓国大統領が韓日葛藤に関与を要請…2国間で解決を希望』」(7月20日、韓国語版)で、この問答を報じています。

 見出しには「2国間で解決しろ」とのトランプ発言をとっています。

記事にも「要請に応え仲介に乗り出す」とのニュアンスは全くありません。

「歪曲報道の朝鮮日報」

――「朝鮮日報はまた歪曲報道」とは?

鈴置: 朝鮮日報を含む韓国メディアは7月10日の康京和・外交部長官との電話協議で、ポンペオ国務長官が「理解する」と語ったとして、いかにも仲介に乗り出すかのように報じました。

 しかし「日本に追い詰められた韓国 米国に泣きつくも『中国と手を切れ』と一喝」で申し上げたように、米国側の発表は全く異なるものでした。

 この時も、朝鮮日報の記事のコメント欄には「VOAを見よ。事実は朝鮮日報の記事と全く異なるぞ」との読者の指摘が載りました。

 政府に厳しい朝鮮日報だけは本当のことを書くと思っていたのに、ハンギョレみたいになってきた、と失望する韓国の保守が増えているのです。

――なぜ、朝鮮日報も「歪曲報道」するのでしょうか?

鈴置: このまま日韓対立が深刻化すれば大変なことになる、と心配しているからでしょう。

そこで「米国が仲介してくれる」との希望的観測をついつい、記事にしてしまうと思われます。

 日韓対立が深まれば、保守派として「文在寅政権の責任だ」と書けますが、韓国人としては、それは避けたいのです。

 結局、韓国の被害を恐れる保守系紙も、文在寅政権を擁護したい左派系紙も「米国が助けてくれる」と書いてしまうわけです。

 そんな韓国メディアの歪曲報道を見越して、VOAも――米政府も、ポンペオ発言なりトランプ発言の「正しい読み方」をわざわざ韓国語版で報じているのかもしれません。

突然の利下げ

――韓国人も「まずい」とは思っているのですね。

鈴置: 経済的な大打撃を受けると懸念しているのです。

7月18日、韓国銀行(中央銀行)は突然に利下げしました。

3年ぶりに基準金利を0・25%下げて年1・50%としたのです。

 韓銀は米国の利下げを待って下げるとの見方が大勢でした。

ウォン金利を先に下げると、資本逃避が起きかねないからです。

予想に反し米国に先行したのは「日本の輸出規制強化で景気が悪化するのを防ぐため」と韓国では見なされています。

 韓国銀行は同じ日に「2019年 下半期の経済展望」を発表しましたが、2019年の成長率見通しを2・5%から2・2%に引き下げました。

 7月23日には韓銀の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁が国会で「日本の輸出規制によるマイナスの影響が拡大すれば、今年の経済成長率はさらに低下する可能性がある」と述べています。

 韓国人なら誰もがこれ以上の景気悪化を食い止めたい。

そこで韓国紙は日本語版でも「トランプが介入するぞ」と報じ、日本に「規制をやめよ」と圧迫しているのです。

日本語版を読んで「日本が孤立している」と信じてしまう日本人も結構いますし。

 一方、韓国人に対しては「大丈夫だ。トランプが助けてくれる」と元気づけたいのです。が、韓国人もだんだんそれを信じられなくなってきた。これには文在寅政権も手の打ちようがない。

メモリーは余っている

――そこで韓国メディアは「日本の輸出規制は日本の首を絞める」と書くのですね。

鈴置: その通りです。「世界を混乱させる日本は世界中から非難されるだろう」と、以前にも増して熱心に書くようになりました。

 日本政府が韓国向けの素材輸出を規制すれば半導体の生産が滞り、ユーザーが困って日本批判を始める、とのロジックです。韓国紙には連日のようにそう主張する記事が載ります。

 例えば、朝鮮日報の「『韓国がなくなればIT生態系に打撃』…アップル、台湾企業も大いに懸念」(7月22日、韓国語版)です。

もちろん翻訳し、同じ日に日本語版に「『韓国なしではIT生態系に打撃』…アップル、台湾企業も懸念」を載せています。

 韓国語版で韓国人の士気を鼓舞する一方、日本語版で日本人に「規制を強化すると日本が墓穴を掘るぞ」と脅す――。2面作戦です。

 ただ、韓国紙が訴えるこの「懸念」も、幸か不幸か今のところ現実化していない。

北朝鮮への『横流し疑惑』で、韓国半導体産業の終わりの始まり」で説明した通り、世界市場で韓国が生産の過半を担う半導体――メモリーは供給過剰で余っているからです。

 それに日本政府は素材を全面禁輸するわけではありません。

韓国の半導体メーカーが「本当に必要な分」の素材は輸出を許可するでしょう。米国や日本のメーカーもあり、世界からメモリーが消えてなくなることはないのです。

WTOでは返り討ちに

――韓国政府はWTO(世界貿易機関)で訴える、と息まいてもいます。

鈴置: それは返り討ちにあいます。日本政府は、兵器にも転用される半導体の素材に関し「韓国に関する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生した」と管理強化の理由を説明しています。

日本に追い詰められた韓国 米国に泣きつくも『中国と手を切れ』と一喝」で指摘した通り、韓国の国会でも「韓国の不適切な事案」――日本に返品したはずのエッチングガスがどこかに消えた事件が野党議員によって暴かれたのです。

 韓国政府はWTOで「日本は政治的な報復のため自由貿易を侵害した」と主張する方針です。でも、この「不適切な事案」をきちんと説明しない限り、主張は通りません。

 そのうえ「韓国の国会でも問題になった、日本に返品したはずのエッチングガスはどこにあるのだ」と問い質されることになると思われます。

――韓国政府は「日本の輸出管理こそ、いい加減だ」と言い始めました。

鈴置: 韓国がそう主張するなら、日本に対する「ホワイト国」指定を外して、軍事用に転用されかねない物質の対日輸出の管理を強化すればいいのです。

日本が韓国へのホワイト国指定を外すのと同じことです。

 韓国が対日輸出を渋っても、日本は困りません。他の国から買えば済むのです。一方、韓国は日本から輸出を絞られると困る品目が出てきます。

 日本以外からは買えない品目もあるからです。だから韓国からは「対抗して、こちらもホワイト国の指定を外すぞ」との声が上がらないのです。

自分の首を絞める韓国人

――韓国では日本製品の不買運動が始まりました。

鈴置: でも、日本の産業界から懸念する声は出ていません。過去の不買運動もすぐに「盛り下がり」ました。仮に長続きしたとしても、日本の消費財メーカーの韓国依存度は高くない。

 韓国に対する日本人の不信感の高まりを考え、日本企業も「不買運動があるから輸出管理の強化はやめよ」とは言い出さないでしょう。そう主張するのは日本の左派系紙ぐらいです。

 韓国の政府もメディアも、不買運動する一部の人々も、自殺行為に及んでいます。「日本が半導体素材の輸出を規制するのはけしからん」と騒ぎ立てるほどに、自分の首を絞めています。

 世界の半導体ユーザーは韓国の2社――サムスン電子とSKハイニックスにメモリーを依存するのは危ないな、と考えるからです。

 大量のユーザーは長期契約を結んでいますから、今すぐに韓国2社への注文を減らすわけではありません。

 でも契約更改の際には、DRAMだったら米マイクロン・テクノロジー(Micron Technology)に、NAND型フラッシュメモリーなら東芝メモリに、発注先を次第に切り替えて行くはずです。

なお、マイクロンも東芝メモリも生産能力を増強中です(「北朝鮮への『横流し疑惑』で、韓国半導体産業の終わりの始まり」参照)。

 韓国の一番の失敗は、米国に助けを求めたことです。

米国からは冷たくあしらわれたのですが、その結果、「今回の日本の措置は米国との合作」との見方が浮上したのです。

 日米合作説、あるいは米国黒幕説に立てば、韓国が泣こうがわめこうが、米国が日本に輸出管理の強化をやめさせることはありない――。

そう見切った世界の半導体ユーザーはますます発注先を切り替え、「韓国離れ」が激化してしまいます。

困った時だけ米国頼み

――韓国人は「日米合作」に気づいているのでしょうか?

鈴置: 気づかないわけがないと思います。ただ、メディアにはそうした見方はあまり載りません。書けば、絶望的な心境に陥るからでしょう。

 私が見た限りですが7月16日、朝鮮日報がちらりと書きました。

まず、社説「米が『韓日仲裁』しないのなら、我々に他のテコはあるのか」で次のように指摘しています。

・憂慮すべきは米国が今、積極的に(仲裁に)出ないのは、日本が貿易の報復措置に出る前に米国に事前に協力を要請し、了解を得ていた可能性だ。

 ・米国が精魂込めるインド太平洋戦略、反ファーウェイ(華為技術)戦線への参加要求に日本は積極的だ。

が、韓国は微温的だ。「困った時だけの米国頼み」に効果があるかは疑問だ。

 言わば「米国の事前了解説」ですが、同じ日に同紙の金大中(キム・デジュン)顧問は文政権の国家経営能力は限界に」で、もっと厳しい「合作説」を打ち出しました。

・日本の報復措置は米日合作の作品である可能性が高い。

 ・対北朝鮮制裁の解除にだけにこだわり、対中牽制要求から目をそらす文政権にトランプは警告(?)する必要性を感じた可能性がある。

米国主導の「韓国叩き」

――「中国側に寝返った韓国」に米国もお灸をすえる……。

鈴置: 米国は今、中国との覇権争いを始めました。

その中国側に寝返った韓国に、米国がメモリー生産の過半を任せるわけはない――と考えるのが普通です。

 半導体は戦略商品です。

清涼飲料水やピーナッツバターとは異なります。

1980年代、日本を仮想敵と見なした米国が、世界市場を独占していた日本のメモリー産業を、ありとあらゆる手を使って潰したのを皆が思い出し始めたのです(「北朝鮮への『横流し疑惑』で、韓国半導体産業の終わりの始まり」参照)

 そもそも、北朝鮮の多連装ロケット砲の射程に韓国の半導体2社の主力工場が入ってしまった(「北朝鮮への『横流し疑惑』で、韓国半導体産業の終わりの始まり」参照)。

 最近、北朝鮮が配備した8連装の300ミリロケット砲の射程は200キロを超えるとされます。サムスン電子の平沢工場も、SKハイニックスの清州工場も軍事境界線から200キロ以内の場所にあるのです。

 韓国人が「日本にいじめられた」と騒げば騒ぐほど、世界は韓国半導体産業の地政学的な弱点に気がつくわけです。

日本政府が素材の輸出を絞らなくても、世界の半導体のユーザーが韓国メーカーへの注文を減らし、そのシェアが落ちて行く構図です。

分裂し始めた韓国

――保守系紙も案外と文在寅政権に協力的ですね。

鈴置: 日本に肩をそびやかし、なめられまいとする点では政権と歩調を合わせてきました。ただ次第に、保守系紙と文在寅政権の対立が表面化しています。

 文在寅政権が日韓関係に関し、政府を批判したメディアを「売国だ」「利敵だ」と決めつけたからです。

挙国一致を図る狙いでしょうが、保守メディアから強い反発を呼んで逆効果となっています。

 日本との戦いに備え団結すべき時に、韓国は分裂し始めたのです。日本人が言うのも変かもしれませんが。

――その話は次回にでも。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ) 韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集