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オペラと日本人②

2017-04-13 11:40:54 | お話
🌸🌸オペラと日本人🌸🌸②


🔹村上、しかし、佐藤さんは若い頃からヨーロッパの舞台で主役を務めてこられたんでしょう。

遺伝的な要素もあると思うけど、どんなご家庭だったのですか?

🔸佐藤、父は銀行員で母は主婦という、純日本的な家庭で育ちました。

しかも私は一人っ子なので、競争が苦手なんです。

それに父からいつも、

「おまえのことはよく知っているから言うけど、

悪いことは言わない、おまえにはオペラは向かないよ」

と言われていました。

母からは、

「人前で女性が大きな声を出すなんて、どうなのでしょう」

と(笑)。

でも、私はオペラに恋をしてしまいました。

先生も「惚れる」と遺伝子のスイッチがオンになると仰られていますね。

私はまさか自分がヨーロッパに行ってオペラの主役を歌うなんて夢にも思っていませんでした。

ただ、オペラってなんて素晴らしいんだろうという憧れと情熱だけでしたね。

だから私にとってはヨーロッパで歌うことが頂点ではなくて、

素晴らしい作品を歌うことができれば幸せでした。

🔹村上、それだけ純粋にオペラを愛しておられる。

🔸佐藤、私は、つくづく歳を重ねるということは素敵なことだと思っています。

大人数で創り上げるオペラももちろん好きですが、

すべてを削ぎ落として限られた方々のためにより丁寧な歌を届けたい、

という思いもより一層強くなりました。

年を重ね自分自身の心のありようが変わってくるんですね。

今は自分の内なる声に耳を傾け、

もっと心を解放し、率直な演奏ができればいいなと思っています。

🔹村上、それはいい人生だな。

🔸佐藤、そうでしょうか。

🔹村上、それはそうですよ。そもそも誰もが本当に好きなものに出会えるとは限らないし、出会っても惚れない場合もあるでしょう。

🔸佐藤、私は、音楽がほんとに好きだったようです。

🔹村上、好きこそものの上手なれって言いますからね。

🔸佐藤、でも先生、下手の横好きとあうものもありますよ(笑)。

日本人の私が苦労して歌わなくても、本場の人たちが歌えるわけでしょ。

それなら私なんかいなくても全然構わないとよく考えます。

でもその一方で、こうして生かされているからには、何か使命があるのだろうとあいう思いもあります。

であれば、少しでも世の中のお役に立てるよう自分を磨いていきたいなと思うんです。

🔹村上、すばらしい考え方ですね。

🔸佐藤、私、自分のためだけには頑張れないんです(笑)。

もちろん音楽は好きなのでずっと続けることができましたが、両親の教えもあり、成功や名誉を意識した途端に、
人間は本当に大切なものを失うように思います。

エゴや邪念に囚われたら終わりだ、みたいな。

ただ、そのおかげでヨーロッパに行ってからは、ずいぶん失敗もしました。

例えば、あるオペラのクラスで、

「この役を歌える人」

と先生から聞かれた時に、
私を除いて皆が一斉に手をあげました。

あとで友達に、

「何で手をあげないの」

と聞かれ、歌ったことがないからと言ったら、

その友人に、

「歌ったことがある人なんか1人もいないわよ。

経験があるかないかじゃなくて、

自分に任せろって言えなきゃダメでしょ」

と言われました。

でも、「私、そんな嘘つけない」って(笑)。

🔹村上、大変正直ですね。

🔸佐藤、今思えば、もう少しエゴを剥き出しにして、自分を焚きつけたほうがよかったかなぁと言う気もしますが、

いやぁ、私にはできません。

とにかく文化の違いもあり、たくさん失敗しました。

🔹村上、成功の反対は失敗だと言われるけど、

実はそうじゃなくて、

成功の反対は、「何もしないこと」ですよ。

何もしなかったら、失敗はしないけど成功もしない。

🔸佐藤、では、むしろいいことなんですね、失敗も。

🔹村上、もちろん。

🔸佐藤、あぁ、よかった。なんだかすごく嬉しいです(笑)。


(つづく)

(「致知」5月号 佐藤しのぶさん村上和雄さん、対談より)