アルツハイマー薬5
(杉本さんは部下と共に世界初のプロジェクトを成功に導いてこられましたが、リーダーの条件は何だと思われますか?)
🔹杉本、やっぱり、あの人のためならついていこうというカリスマ性が必要でしょうね。
エーザイは社内での競争も激しかったのですが、
他のチームが攻撃を受けている時でも、私は一緒になって戦っていました。
時には喧嘩してしまう時もありましたけど、
この義侠心があるから部下がついてきてくれるのだと思います。
(義侠心が大切だと)
🔹杉本、あと「飲みニケーション」も大事です。
研究開発の成功に不可欠なのは、研究員一人ひとりのやる気です。
研究員のモチベーションを高めるのがリーダーの役割だと言っても過言ではありません。
リーダーの役割としてわかりやすい譬(たと)えがあります。
西洋型リーダーシップをカッターボードとすると、
日本型は神輿のようなものです。
ボートは1人のリーダーだけが進行方向を見て、その指示に従って全乗組員が後ろ向いてオールを漕いでいます。
一方、神輿の場合は担ぎ手たちが「わっしょい」と声を掛け合いながら前進していくのですが、
リーダーは傍(そば)で担ぎ手たちを煽いでいる。
これと同じように一人ひとりの研究員の心に火がつけば、放っておいても働きますよ。
(火をつけるのがリーダーの役割だと)
🔹杉本、ええ。そのために大切なのがちゃんと評価をし、褒めることです。
指導者がちゃんと見ているチームのモチベーションは絶対に下がりません。
ただし、褒めるだけじゃダメですね。
もちろん9割は褒めていいんですけど、あと1割は恫喝(どうかつ)。
「あの人は怒ると怖い」という威厳も必要です。
これがないと、わさびが効ません。
ですから、「よいしょ」と「恫喝」、この2つがリーダーの条件とも言えますね。
(物事を成就する人と成就できない人の差はどこにあるのでしょうか?)
🔹杉本、これは『致知』だから言える話ですけど、
物事を成功させる条件は、どれだけ「無形財産」を持っているかではないでしょうか。
無形財産というのは、「どれだけ世のため人のためになることをしたか」、
その積み重ねのことです。
いくら優秀でも、無形財産が足りない人は成功しません。
もっと言うと、人生は善いことを思い、善い行いをすれば、善い人生になります。
悪いことを思い、悪い行いをすれば、悪い人生なんです。
世のため人のためになることをすれば、絶対成功する。
そのお手本が大自然ですね。
(大自然がお手本)
🔹杉本、私たちの心臓は生まれた時から1回も休んでないでしょう。
ちょっと疲れたから休暇を取る、旅行に出かける。
そんなことありませんよね。
しかも、心臓は全身の心臓は自分のためじゃなくて、全身の臓器のために生きているんです。
植物だってそうです。
人間を含めた他の動物のために、二酸化炭素を吸って酸素を出してくれる。
大自然というのは皆、他のために生きているんです。
人間だけが自分中心なんです。
この自分自身をなくせば、絶対に世の中は丸く収まると思いっています。
(無形財産を持つというのは「徳を積む」とも言い換えることができますね)
🔹杉本、そういうことです。お金は使ったら減りますけど、この無形財産、徳というのはいくら使っても減らないんです。
そして、魂についているので、死んでもまたその無形財産を引き継いで生まれてくる。
私が強運なのはたぶん前世で何かしらの無形財産を積んでいたからでしょう。
だから今私は自分にできる施しを心がけて、
募金とか托鉢をやっているのでしたら必ず少しでも寄付をしています。
トイレ掃除も1日に3回行っています。
それを積み重ねることで種が植えられ、将来困ったときに助けてもらえるものなのです。
人を助けたことのない人、人のために己を犠牲にしたことのない人は絶対に助からないし、成功しません。
(最後に、人生で1番大切なものは何だと思われますか?)
🔹杉本、やっぱり1番は「恩を知ること」。
これ以外にありません。
今この世の中が乱れているのは、恩を忘れてしまったからだと私は思います。
恩を知っていれば自分がファーストになんなりません。
どれだけ両親が苦労して育ててくれたかを思えば、親孝行するのが当たり前じゃないですか。
それと、奥さんがどれだけ尽くしてくれているか、
その恩を知っていれば絶対に奥さんを粗末にできません。
私は若い頃、よく研究員を自宅に招いて飲み会を開き、部下たちのストレス発散やモチベーションアップを図っていたのですが、
それらをすべてもてなしてくれたのが妻でした。
その恩に至れば、自然と尊敬につながります。
尊敬し合える人間関係は絶対に崩れません。
これは夫婦、親子、上司と部下、どんな関係性でも同様です。
今年私たちは金婚式を迎えるんですけど、50年間1度も喧嘩をしていません。
(恩を知り、尊敬しあえる人間関係を築いていけるかが大事だと)
🔹杉本、あとは、成功者の多くが言っていることですけど、
成功するまで諦めないこと。
「断じて行えば鬼神もこれを避く」
という言葉がある通り、男気や信念が人生を切り拓く力になると思います。
私は12年前から『致知』を愛読しているのですが、
最近『致知』で学んだのは教育者・東井義雄先生の
「本物は続く。続けるから本物になる」という言葉です。
私は諦めずにコツコツやり続けたからよかったのでしょう。
あと坂村真民先生の「鈍刀(どんとう)を磨く」という詩も大切にしています。
「鈍刀をいくら磨いても
無駄なことだというが
何もそんなことばに
耳を借す必要はない
せっせと磨くのだ
刀は光らないかもしれないが
磨く本人が変わってくる
つまり刀がすまぬすまぬと言いながら
磨く本人を
光ものにしてくれるのだ
そこが甚深微妙神の世界だ
だからせっせと磨くのだ」
これは、努力してもなかなか報われないと思っている人には最大の援助の言葉です。
24時間寝ても覚めてもという姿勢で仕事に打ち込んでいると、
人知を超えた大きな計らいが得られる。
それが今年喜寿を迎える私の信念です。
私は老後と言うのは100歳からだと思っています。
まだまだ青春だと思うと頑張れるじゃないですか。
その心意気で、これからもアルツハイマー病の根本治療薬の完成に向けて、精進し続けたいと思います。
(おわり)
(「致知」12月号 杉本八郎さんより)
(杉本さんは部下と共に世界初のプロジェクトを成功に導いてこられましたが、リーダーの条件は何だと思われますか?)
🔹杉本、やっぱり、あの人のためならついていこうというカリスマ性が必要でしょうね。
エーザイは社内での競争も激しかったのですが、
他のチームが攻撃を受けている時でも、私は一緒になって戦っていました。
時には喧嘩してしまう時もありましたけど、
この義侠心があるから部下がついてきてくれるのだと思います。
(義侠心が大切だと)
🔹杉本、あと「飲みニケーション」も大事です。
研究開発の成功に不可欠なのは、研究員一人ひとりのやる気です。
研究員のモチベーションを高めるのがリーダーの役割だと言っても過言ではありません。
リーダーの役割としてわかりやすい譬(たと)えがあります。
西洋型リーダーシップをカッターボードとすると、
日本型は神輿のようなものです。
ボートは1人のリーダーだけが進行方向を見て、その指示に従って全乗組員が後ろ向いてオールを漕いでいます。
一方、神輿の場合は担ぎ手たちが「わっしょい」と声を掛け合いながら前進していくのですが、
リーダーは傍(そば)で担ぎ手たちを煽いでいる。
これと同じように一人ひとりの研究員の心に火がつけば、放っておいても働きますよ。
(火をつけるのがリーダーの役割だと)
🔹杉本、ええ。そのために大切なのがちゃんと評価をし、褒めることです。
指導者がちゃんと見ているチームのモチベーションは絶対に下がりません。
ただし、褒めるだけじゃダメですね。
もちろん9割は褒めていいんですけど、あと1割は恫喝(どうかつ)。
「あの人は怒ると怖い」という威厳も必要です。
これがないと、わさびが効ません。
ですから、「よいしょ」と「恫喝」、この2つがリーダーの条件とも言えますね。
(物事を成就する人と成就できない人の差はどこにあるのでしょうか?)
🔹杉本、これは『致知』だから言える話ですけど、
物事を成功させる条件は、どれだけ「無形財産」を持っているかではないでしょうか。
無形財産というのは、「どれだけ世のため人のためになることをしたか」、
その積み重ねのことです。
いくら優秀でも、無形財産が足りない人は成功しません。
もっと言うと、人生は善いことを思い、善い行いをすれば、善い人生になります。
悪いことを思い、悪い行いをすれば、悪い人生なんです。
世のため人のためになることをすれば、絶対成功する。
そのお手本が大自然ですね。
(大自然がお手本)
🔹杉本、私たちの心臓は生まれた時から1回も休んでないでしょう。
ちょっと疲れたから休暇を取る、旅行に出かける。
そんなことありませんよね。
しかも、心臓は全身の心臓は自分のためじゃなくて、全身の臓器のために生きているんです。
植物だってそうです。
人間を含めた他の動物のために、二酸化炭素を吸って酸素を出してくれる。
大自然というのは皆、他のために生きているんです。
人間だけが自分中心なんです。
この自分自身をなくせば、絶対に世の中は丸く収まると思いっています。
(無形財産を持つというのは「徳を積む」とも言い換えることができますね)
🔹杉本、そういうことです。お金は使ったら減りますけど、この無形財産、徳というのはいくら使っても減らないんです。
そして、魂についているので、死んでもまたその無形財産を引き継いで生まれてくる。
私が強運なのはたぶん前世で何かしらの無形財産を積んでいたからでしょう。
だから今私は自分にできる施しを心がけて、
募金とか托鉢をやっているのでしたら必ず少しでも寄付をしています。
トイレ掃除も1日に3回行っています。
それを積み重ねることで種が植えられ、将来困ったときに助けてもらえるものなのです。
人を助けたことのない人、人のために己を犠牲にしたことのない人は絶対に助からないし、成功しません。
(最後に、人生で1番大切なものは何だと思われますか?)
🔹杉本、やっぱり1番は「恩を知ること」。
これ以外にありません。
今この世の中が乱れているのは、恩を忘れてしまったからだと私は思います。
恩を知っていれば自分がファーストになんなりません。
どれだけ両親が苦労して育ててくれたかを思えば、親孝行するのが当たり前じゃないですか。
それと、奥さんがどれだけ尽くしてくれているか、
その恩を知っていれば絶対に奥さんを粗末にできません。
私は若い頃、よく研究員を自宅に招いて飲み会を開き、部下たちのストレス発散やモチベーションアップを図っていたのですが、
それらをすべてもてなしてくれたのが妻でした。
その恩に至れば、自然と尊敬につながります。
尊敬し合える人間関係は絶対に崩れません。
これは夫婦、親子、上司と部下、どんな関係性でも同様です。
今年私たちは金婚式を迎えるんですけど、50年間1度も喧嘩をしていません。
(恩を知り、尊敬しあえる人間関係を築いていけるかが大事だと)
🔹杉本、あとは、成功者の多くが言っていることですけど、
成功するまで諦めないこと。
「断じて行えば鬼神もこれを避く」
という言葉がある通り、男気や信念が人生を切り拓く力になると思います。
私は12年前から『致知』を愛読しているのですが、
最近『致知』で学んだのは教育者・東井義雄先生の
「本物は続く。続けるから本物になる」という言葉です。
私は諦めずにコツコツやり続けたからよかったのでしょう。
あと坂村真民先生の「鈍刀(どんとう)を磨く」という詩も大切にしています。
「鈍刀をいくら磨いても
無駄なことだというが
何もそんなことばに
耳を借す必要はない
せっせと磨くのだ
刀は光らないかもしれないが
磨く本人が変わってくる
つまり刀がすまぬすまぬと言いながら
磨く本人を
光ものにしてくれるのだ
そこが甚深微妙神の世界だ
だからせっせと磨くのだ」
これは、努力してもなかなか報われないと思っている人には最大の援助の言葉です。
24時間寝ても覚めてもという姿勢で仕事に打ち込んでいると、
人知を超えた大きな計らいが得られる。
それが今年喜寿を迎える私の信念です。
私は老後と言うのは100歳からだと思っています。
まだまだ青春だと思うと頑張れるじゃないですか。
その心意気で、これからもアルツハイマー病の根本治療薬の完成に向けて、精進し続けたいと思います。
(おわり)
(「致知」12月号 杉本八郎さんより)
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