当科では、東京医療センターの総合内科から、後期研修医が半年ごとくらいにローテーションで研修に来ます。地域医療の研修として、通常の外来や病棟以外に在宅医療・施設診療・健診・地域のヘルスプロモーションなどを重点的に研修してもらっています。最初は急性期医療との“場の違い”などに戸惑うことも多いようですが、そのなかで様々な経験を積んでくれているようです。
そのような経験を言語化していく作業も重要と考え、毎日一言、その日感じたことや印象に残ったことなどを夕方(夜?)のカンファレンスのあとに言ってもらうようにしています(「日々の振り返り」)。時にはこちらがはっとするような発言もあります。「そんなこと感じていたんだなとか」、「わかるわかる、自分もそこは戸惑うよ」とか。指導医としてもいろいろな気づきがありますね。
あと、後期研修医には朝の時間をつかって、来て2週間程度の時点・研修が半分過ぎた時点・研修終了時の3回振り返りのセッションを行っています。今日は、4月からきた後期研修医の導入時のセッションを行いました。詳細をのせると本人嫌がるでしょうから(笑)のせませんが、早くも今までとは異なる新たな視点を感じているようでした。橋川先生、これから半年間お互いがんばりましょうね!
ちなみに、昨年の国立病院総合医学会で、「日々の振り返り」の記録をもとに後期研修医が在宅医療でどのようなことを感じているのかを質的に分析したものを発表しました。7つの大カテゴリーに分類できたのですが、それを代表的な発言とともにのせておきます。
①<在宅医療の難しさ>
「身体的な変化にどのように対応するか。検査にどうしても頼ってしまう。」 「入院はしたくない人。家でどこまでみるか。」
②<患者を“生活”という視点でみることの重要性>
「病院で急性期を過ごして帰った姿、想像していなかった。」 「○○さん、その人なりの生活をどのように維持していくか。」
③<“連携”の重要性と難しさ>
「OOさんのケアカンファはよかった。それぞれの職種から意見が出て。連携重要と感じた。」
「様々な職種とお話しする機会多い。伝えかたなど病院にいる時とは変えないと。うまく伝わらないことも。」
④<患者・家族とのコミュニケーションの奥深さ>
「○○さんの家族はこだわりが強かった。対応の仕方を変える必要があった。」
「○○さんの気持ちを、○○先生はうまく引き出していた。自分では引き出せず、どのように話せばうまく引き出せるか参考になった。」
⑤<“患者の死”に対する思いや迷い>
「(亡くなりそうな)○○さん、(本人の死に対するいろいろな思いに対して)どうすればよいのか。もやもやしていた。言語化できない。」
⑥<家族ケアの重要性と難しさ>
「どの家も、医学的なこと以上に介護や家族のことが(問題)多い。アドバイスは大変。経験重要。」
⑦<医師としての責任性と視野の広がりの獲得>
「まだわからない部分もあるが、以前と比べるといろいろな視野で見られるようになり、わかる部分が増えた。」
ちなみに、Buchmanらは、在宅医療でより効果的に教育できることとして、「QOL重視のケア」、「患者・家族の疾病経験への深い理解」、「低いテクノロジーのなかで重症患者をみること」、「終末期における心理的・スピリチュアルなサポート」、「多職種協働の中での役割」などを挙げています。(S Buchman,et al . Canadian Family Physician 2012)
ある程度、似通っている部分が出たのかなと思いました。
在宅医療において、どのようなことを教育できるのか、教育すべきなのかについてはまだまだ確立されたものはなく、いまだに試行錯誤な部分は多いですし、まずは経験して、そこから様々なことを感じとってもらい、それについてディスカッションしていくのが重要かと感じています。