訪問診療を行っている患者さんで、Afがある脳出血後の患者さんがいました。訪問診療の依頼があった時点では脳出血の発症から4か月以上たっていましたが、抗凝固療法は再開されていませんでした。医学的には実際どのようにするのがよいのか・・・ 今回はそれを調べた内容をのせたいと思います。
★2011 American Stroke Association guidelineの推奨
①脳出血後少なくとも1~2週は抗凝固療法は再開しない
②脳梗塞のリスク少ないPt(脳梗塞既往ないAfなど)や皮質下出血のPt、重度の機能障害あるPtには再開は推奨しない。アスピリンは考慮。塞栓リスクが高い患者では再開する。
★Up to date
①抗凝固療法をすすめる状況
脳出血の再発低リスク(皮質下でない、血圧コントロール良好)
塞栓の高リスク(CHADS2≧5)、最近の梗塞・TIA、人工弁、弁膜症
②抗凝固療法をすすめない状況
脳出血の再発高リスク(皮質下、血圧コントロール不良)
塞栓の低リスク(CHADS2≦2)
Mark H Eckmanらの報告(Stroke 2003)
69歳以上の脳出血・非弁膜性心房細動の435例を対象にDecision Analysis
皮質下出血に関しては、QALYs(quality-adjusted life years)が非ワーファリン群で1.9年延長。それ以外の脳出血では、0.3年のみ延長。
後ろ向きに、再開なし群・ワーファリン再開群・アスピリン群で検討
⇒致死的・非致死的脳卒中で有意差なし(ただし、後ろ向き・N40程度)
Maedaらの報告(J Neurol Sci 2012):329名の神経内科医が回答(回答率79%)。
91%が抗凝固薬を再開、3%が抗血小板薬を開始した経験あり。
半数はCT所見を参考に再開。(2w以内の再開が半数以上)
あたりまえではありますが、出血と梗塞のリスクの兼ね合いではあるのでしょうね。さきほどの方は皮質下出血ではありませんでした。Afは非弁膜性。血圧のコントロールもまずまず。CHADS2=3点。これらを考えると、抗凝固療法を再開したほうがよいのかもしれません。 中止してからずいぶん時がたっているのは、いまさらなんとなく再開しづらくなりますね・・・。本人や家族のくすり(抗凝固療法)に対する解釈も参考にする必要もあるのかもしれません(医学的に誤った解釈はある程度ただす必要があるかもしれませんが、出血したことは抗凝固療法の影響が大きいと考えていれば、再開により不安感が強くなるかもしれないし・・・)。
くすり1つ再開するのも、医学的な根拠はもとより、様々なことを考えていかなくてはならないなと実感しました。