東埼玉病院 総合診療科ブログ

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高齢者の家族は、看取りの代理意思決定をどのように行っているのか?

2018-10-21 13:00:02 | 勉強会

 今回は、先日行った勉強会の内容をのせたいと思います。高齢者が終末期となり、看取りに向けての意思決定を行わなければならない状況によく直面しますが、認知機能低下などがあったりしてご本人が意思表示できないことがあります。そのようなときに、家族とともに意思決定を行っていくこととなりますが、家族も代理意思決定をするにあたり、様々な迷いや葛藤を感じられているのを拝見します。看取りの場をどうするのか、人工栄養はどうするのか、どこまで合併症の治療を行うのか、など様々なことを決めていかなくてはならないのは家族にとっても負担なことでしょう。今回は、家族がどのように看取りの代理意思決定を行っているのか、について調べてみました。

<高齢者の家族は、看取りの代理意思決定をどのように行っているのか?>

•二神らの報告(老年看護学,2010)

3か所の介護老人福祉施設において認知症高齢者の代理意思決定を行った家族12名を対象にインタビューを行い、質的に分析

⇒5段階のプロセス(代理意思決定の過程・困難・対処を調査)

プロセスの段階 

        困難

        対処

①看取りに対する情報入手

不十分な情報

情報収集、自分なりの解釈

②看取りのイメージ化

イメージ化不足

自分に置き換えて考える

③高齢者の意思の推測

意思・意向が不明

高齢者の生活史を回顧

高齢者の意思を思い起こす

④実現可能な看取り方針の決定

希望と現実が折り合わない

方針決定が不可能

他の家族に相談、施設にゆだねる、寿命を受け入れる、自分の気持ちや自分なりの看取りを優先

⑤決定への納得

決定の不確かさに悩む

気持ちを整理する

 
 
•湧波らの報告(プライマリケア,2007)

地域住民23名(平均66.3歳)を対象としてフォーカスグループ・インタビューを行い、質的に分析

高齢者の終末期医療に対する自分が患者の場合の意思表示と家族としての意向形成の過程を調査

⇒家族の立場に立つと、高齢者の意思表示を受けた場合であっても、生命への愛情と充分な介護をしたいという感情が延命処置要望へと働く。しかし、家族間の葛藤も起こり、世間体や医師の説明を参考に家族間での話し合いを通じて条件と体験により死の受容に至る。

家族による判断へのプロセスでは「医師の対応」は大きな位置を占める。

 

•Fritch Jらの報告(J Clin Ethics , 2013)

入院した65歳以上の患者の家族で、最近、代理意思決定をした35名を対象に半構造化面接を行い、質的に分析

 代理意思決定の要因について調査

⇒患者中心の要因と代理意思決定者の要因の2つに大別

★患者中心の要因

①患者の考えを尊重

②患者の希望を推測するために患者の過去の認識を使う

③患者の最善の利益が何であるか考える

★代理意思決定者の要因

①代理意思決定者の希望

②代理意思決定者の宗教的信念、スピリチュアリティ

③代理意思決定者の利益(退院の場所に関してなど)

④家族のコンセンサス

⑤義務と罪悪感(やらないで亡くなることに関してなど)

 

まとめ

•(推測した)患者の希望や考えを優先しつつも、家族自身の希望や利益も代理意思決定に大きく影響する?
•愛情や介護したい気持ち、義務や罪悪感などにより、(積極的な治療をやらないことに)家族は葛藤を感じている?
•上記のような背景のもと、家族のコンセンサスや医師の説明はたぶんに影響する?
 
根本的には、「本人にとってどうなのか」を家族と考えることが重要とは考えます。しかし、現実には家族自身の希望が強くでることがあり、医療者としてどのようにしていけばよいのか、迷うことも多いです。家族の希望のなかには、葛藤があるなかでの希望であることも多く、そこにどうアプローチするのか、医療者としてどのように支援して、患者本人にとってよい形とできていけるか(その答えが分からないのがまた難しいのですが・・)、今後も模索していく必要があると感じています。