先日の勉強会で、COVID-19パンデミックによる在宅ケアの変化 について、感染予防の観点からと患者ケアの観点から科内でディスカッションしました。感染予防については、日本在宅ケアアライアンスの指針、日本在宅医療連合学会のQ&Aが最近出ており、それを基に科内としてどのように対処するかについてあらためて相談し、その後、下記のようなパンフをつくり、お願いや理解も含めて、訪問診療時にお渡しすることにしました。長期化することが予測されるなか、患者サイド・医療者サイドがお互い感染しないよう努力していくことが重要であると思います。
また、患者ケアの観点からは少し参考になりそうな文献を引用しつつ、私見を述べながら科内でディスカッションしました。在宅医療も今までにない転換を迫られている気もしており、このようなときこそ、多職種での連携を強めていくことが必要であると感じました。MCSなどのツールももっと積極的に使用できればその方がよいように感じます。
以下、作成したパンフ内容
新型コロナウイルスの感染防止に向けてお伝えしたいこと
新型コロナウイルスの流行はしばらく続くことが予測されます。私たち専門職と患者さん・ご家族が協力して、お互いに感染しないような取り組みが重要となります。以下のことについてご理解やご協力をいただければと思います。
・私たちも日々体温や体調の自己チェックを行いますが、患者さんやご家族にも毎日の体温測定や体調管理をお願い致します。
・訪問前の電話で、患者さんのみならず、ご家族の体調についてもお聞きすることがあります。患者さんやご家族に発熱や体調不良があるようであれば、訪問前に事前にお伝えいただければと思います。
(患者さんやご家族に発熱や体調不良があるから訪問を止めるということはありません。適切な感染予防を行うための準備をすることが目的です。)
・私たちは診察の際に、マスクの装着をし、手指や診察器具の消毒を適宜行います。また、患者さんやご家族に発熱などの症状がある場合には、通常の診察時よりも厳重な感染予防を行うことがあります。
・自宅にある体温計や血圧計を使用させていただくことがあります。
・訪問中、患者さんやご家族にもマスクの装着を可能な範囲でお願いできればと思います。また、室内の換気をお願いすることがあります。
・患者さんのご状態にもよりますが、ご希望があれば、訪問の間隔を延ばしたり、電話による診察で処方箋を出すことができます。
国立病院機構東埼玉病院内科
以下は、患者ケアの観点から議論した際のプレゼン資料
◎患者ケアの観点から
- Tzyy-Guey Tsengらのletterより
(The Gerontological Society of America 2020)
障害者やがん終末期患者は感染しやすく、できるだけ入院せずに自宅で治療ができたらよいであろう→結果として、病院の救急医療の負担も減る
- Milchael A Stelnmanらのview point
Meeting the care needs of older adults isolated at home during the COVID-19 pandemic(JAMA Internal Medicine 2020)
☆孤独やうつは氷山の一角に過ぎない
→食生活の変化に伴う心不全悪化、運動できないことによる筋力低下や転倒、認知機能の悪化など
☆支援サービスが減ることに関する諸々の問題
緊急時の在宅サービスや配食サービスの必要性
☆受診への恐怖→他の重篤な疾患の入院↓、電話やビデオ診察への挑戦(聴力障害者や認知症患者、不慣れな人はヘルスケアシステムが唯一のつながり)
- 文献などをふまえた患者ケアに関する私見
☆療養の場に関する意思決定の変化
患者側の入院のデメリット↑(面会制限、感染のリスク)
医療者側の入院対応の負担↑(COVID-19対応病棟開設に伴う他病棟の負担増、発熱患者への対応の変化など)
→在宅での療養のニーズが、患者・医療者の両サイドから高まっている
☆患者サイドの感染への恐怖やリスクを減らすための試みの必要性(電話再診や訪問間隔をあけること)
☆上記をふまえた患者ケアの実践
環境は目まぐるしく変化→変化に合わせて考え方を柔軟にかえていく
在宅での緊急対応をより考慮(他職種の緊急対応は?連携の強化も):ただし、「在宅の押し付け」にならないよう注意
電話での事前情報収集や電話再診の質を向上する