リハビリカンファレンス(このカンファレンスの内容については2015年4/15のブログ記事参照願います)で、初期研修医からの疑問でよく出るものとして、急性疾患で入院した高齢者で、どのような人を廃用予防でリハビリ依頼するかという話題があります。当然、リハビリ依頼という意味ではその病院のリハビリのマンパワーや病棟でどれだけ看護さんが介入できるかにもよるのですが、入院を契機にADL低下しやすいハイリスクな患者さんを、リハビリテーションや病棟でどのようにADL低下しないようにアプローチするかは重要なことと思います。ということで本日は「どのような患者さんが入院契機にADL低下しやすいか?」というハイリスク患者さんの同定について文献的にしらべたものをアップします。
<どのような患者さんが入院契機にADL低下しやすいか?>
•急性イベントがあった際に、在宅よりも入院の方がADL低下しやすい?
Leffらの報告(J Am Geriatr Soc 2009)
前向き研究(RCTではない)。肺炎・COPDや心不全の急性増悪・蜂窩織炎などで入院が必要な患者214例。(在宅84例、入院130例)
在宅群の方が、イベント2週後のIADLの変化が有意に少なかった(ADLはP=0.10と有意差はなかった)
•入院した高齢者の3〜6割がADL低下する
(Boydら,J Am Geriatr Soc 2009 Covinskyら, J Am Geriatr Soc 2003)
•CGA(高齢者総合的機能評価)が入院患者のADL低下を防ぐのに有用である
Van Craenらの報告( J Am Geriatr Soc 2010)
メタ分析で、CGA群の方が有意に機能低下が少なかった。
しかし、CGAを全例に行うのも大変・・・もっと簡便なものは?
•入院でADL低下しやすい患者を簡便に判断する方法は?
★HARP(Hospital admission risk profile)
Sagerら( J Am Geriatr Soc 1996):急性疾患で入院した高齢患者が対象
年齢・認知機能(MMSE)・IADLで評価
★ISAR(Identification of seniors at risk)
McCuskerら(J Am Geriatr Soc 1999) ER受診高齢患者が対象
①自宅での介護者の存在なし ②依存が増えてきている ③入院歴 ④視力障害 ⑤記憶障害 ⑥3剤越える内服 3点以上ハイリスク
★Hoogerduijinらの報告(J Clin Nurs 2010)
65歳以上の一般内科入院患者177例を対象に、ISAR・HARP・COMPRIを比較(退院3か月までに入院前よりADL低下あったか)
感度・特異度 ISAR:93%・39%,COMPRI:70%・62%,HARP:21%・89%
★ISAR-HP(Hoogerduijinら Age and Ageing 2012)
①入院前に助けが必要なIADLあり(1) ②歩行補助具の使用あり(2) ③旅行に助けが必要(1) ④14歳越えてから教育をうけていない(1)
2点以上でリスクあり 感度89%・特異度41%
上記のスコアを実際に使うかは別として、やはりIADLで難しくなっている部分が増えてきていたり、なんとか動けていたみたいな人(歩行補助具が必要など)がハイリスクな人なのかなと、実際の臨床におきかえても思いました。あとは認知機能ですかねえ。
ちなみに、以前のリハビリカンファレンスで、リハビリの先生がおっしゃっていたのは、病前のADL・入院時の活動状況(元々のADLよりどれくらい低下しているか)・今後の見通し(数日以上の臥床が続くか)などで判断するのがよいのではとコメントをいただきました。確かに、研究であると「点」で判断するものがどうしても増えてしまいますが、実際の臨床では「線」で判断し、廃用のリスクを考えることが重要であると感じました。