今日の勉強会の内容をのせたいと思います。終末期のがん患者さんとコミュニケーションをとるなかで、感情をどのように表出してもらうか、その雰囲気づくりや声掛けに工夫することを試行錯誤することも多いです。患者さんの本音をいかに引き出すか・・・それは難しい作業でありながら、非常に重要な事柄であると思います。今日はそのような観点から調べた内容について紹介します。
<がん患者の感情表出をどのように促すか?>
Back ALらの総説(A cancer journal for clinician,2005)と
「NURSEを用いたコミュニケーションスキル(医学書院)」を参考に
•感情を表出できるよう誘導するためのスキル(Ask-Tell-Ask)
Ask:患者が病気や自らの問題について最新の理解を説明するように促す。「あなたにとって今最も重要な問題は何ですか?」、「病気や療養について最近知った最新のことは何ですか?」、「医師からどのような説明を受けていますか?」など。
Tell:医療者から情報提供を行う。(1度に与える情報は3つまで)
Ask:患者がどのように解釈したかを確認し、患者の理解度を把握する。(患者が繰り返し話す内容や知っておくべきことだが話しには出てこないことなどを観察し、理解度や影響度を把握する)
•患者が話しやすいように導くスキル(Tell me more)
①何が起こっているのか?
患者が今最も困っていることや解決したいことなどについて整理し、解釈するための質問を行う。「今一番困っていることは何ですか?」、「どのように感じているか話してくれませんか?」
②起こっていることについて自分がどう思っているのか?
患者が自分自身について起こっていることを理解しようとし、医療者に伝えるためにどう感じているかを表現しようとしている段階。「私たちが話してきたことに関して、何を感じていますか?」→患者自身が自分の感情に気づくように促す。
③これは自分にとって何を意味するのか?
起こっている出来事が自分にとって何を意味するのか。「それはあなたにとってどのような意味がありますか?」→真のニーズに直結する。
•Respond to emotion with NURSE:感情への対応方法
Naming:感情へのラベリング(感情を適切に認識したというメッセージ、患者は自分の感情を客観的に捉え、感情に気づく)
Understanding:患者の感情に対して医療者が理解を示す技法(偽りの共感・簡単な共感は適切でない。自分が想像できないものであることを伝えることも有効。)
Respecting:患者の努力や対処能力を称賛する。
Supporting:できる限りの支援・そばにいることなどを表明(しめの言葉にしないよう注意:患者のもとを去る手段としないように)
Exploring: 探索の技法(「今どのようなお気持ちですか?」「どのような意味でおっしゃいましたか?」)。どのような影響を及ぼしているかにも着目。患者中心の面接(患者からの表出がない内容には焦点あていない)
内容としては、経験的に行っている部分も多いのかなと感じました。しかし、それを体系化・整理するのに有用でした。
勉強会で話題になったのは、たとえば「Tell me more」の②くらいまではよくやっているが、③はなかなか踏み込めないよねといったことでした。確かに③は非常に踏み込んだ質問をするので、非言語的なコミュニケーションも含めて、患者さんの様子をうかがいながら行うことが重要だよねという話しになりました。また、「Respond to emotion with NURSE」にSupportingはしめの言葉にしがちではあるよね、気をつけなくてはとの話しも出ました。少し自分たちのコミュニケーションを見直すきっかけにもなったかなと思います。
個人的に調べていて思ったのは、表出したくない人もいるでしょうし、医師として気になっていても、それを無理に引き出そうとすることが医師の自己満足にならないよう、見極めていくことが重要かなと感じました。「空気をよむ」という言葉は必ずしも好きではありませんが、「踏み込みすぎないこと」も大事なのかなと思っています。タイミングもありますしね。