先日2/17に茨城町の介護支援専門員研究会に呼んでいただき、「老衰とは何か?」というテーマで今永が講演させていただきました。茨城の診療所に勤務していたときにお世話になったケアマネさんがお声をかけてくださったのですが、4年前に引き続き2回目になります。(4年前は違うテーマでやっています)。貴重な機会をいただき、ありがたい限りです。
このテーマは、今永が以前から細々と「老衰」について調べたり研究したりしており、それらについて話してほしいとのご依頼をいただき、話しをさせていただきました。当日はケアマネさん以外にも介護士さんや看護師さんなどにもご参加いただき、70名ほどの方にお話をさせていただきました。特になにか結論がでるはなしではなく、ぼやけた内容ではありましたが、曖昧な老衰の臨床に対してどのように考えていけばよいかのヒントに少しでもなればよかったなと思っております。
先日の勉強会の内容をアップします。
<施設入所中の糖尿病患者では、血糖コントロールはどれくらいを目標にするのが適切か?>
どのようなマネージメントが、Health outcomeやQOLと関連するかは明らかではない。
その後の報告として・・・
ナーシングホーム適格者(介助が必要で1人では生活できない)の地域高齢者367例を対象。2年後の機能低下もしくは死亡をアウトカム。アウトカムは75%に認めた。年齢・性別・人種・ベースラインの機能・合併症・インスリン使用などで調整した場合、HbA1c:8-8.9%が7-7.9%と比べてリスク少ない(RR:0.88,95%CI0.79-0.99)。
ナーシングホーム入所者のDM583例(米国の117か所NHから)を対象として後ろ向きに解析。
低血糖・ケトアシドーシス・感染・転倒・入院をアウトカム。
平均年齢は78.9歳。平均観察期間は55日(短い・・・)。
低血糖はHbA1c>9.0%でどの(年齢)グループでも最も少なかった。75歳以上では、感染はHbA1c>9.0%で最も多かった。65~74歳ではHbA1cが高いと転倒が増えたが、85歳以上ではHbA1cが低いと転倒が増えた。
よい血糖コントロールが必ずしもよい臨床アウトカムには結び付かず、年齢によっても異なるかもしれない、個別化する必要ありと結論。
イタリアのナーシングホーム入所者のDM863例を対象に前向き観察研究。機能依存・認知機能障害・2~4の合併症を持つ患者はそれぞれ84.1%・68%・66.3%。 HbA1c<7.0%の患者は54.9%で、より認知症患者に多かった。低血糖のエピソードは6.6%で認め、年齢・機能依存・認知機能障害・ HbA1cとの有意な関連はなかった(ただし、 HbA1c はP=0.08)。最適なHbA1cよりも低い患者が多く、特に重度認知症患者では潜在的な低血糖リスクは抱えていると結論。
イタリアのナーシングホーム入所者のDM2258例を対象とした横断研究。
重度の低血糖は、認知症でない患者と比較して認知症患者で有意に多かった。多変量解析で、インスリンアナログ使用患者が有意に低血糖少なく、SU剤もしくはSU剤+メトフォルミン患者で有意に低血糖多かった。
施設入所中の糖尿病患者を対象とした研究は必ずしも多くなく、まだ不確かな部分が多いようです。少なくとも一般高齢者よりは甘めの血糖コントロール設定でよさそうではありますが、年齢や状態(ADL・認知機能)によって個別化が必要そう(あたりまえですが・・)。特に認知症患者では低血糖に注意であり、SU剤はできる限り使用しない方がよいのでしょうね。海外のナーシングホームと日本の特養では入所者の層も少し違いますよね。