一昨日に、病棟看護師さんたちと勉強会をやったので、その内容をアップします。昨年度から月に1回、病棟看護師さんたちと勉強会をやっています。昨年度も高齢者医療におけるコモンディジーズについてのことや、緩和ケアやフィジカルアセスメントについてなど、様々な内容で行いました。
今回は「DNRって?」というお題をいただきました。内容の概要は以下のとおりです。
①そもそも、CPRでどれくらい蘇生できるの?
・院内発生の心肺停止患者でCPR施行した患者が、生存して退院する割合は10~15%程度。
・院内発生の心肺停止患者で、CPR施行した患者が、後遺症が軽度(軽度の麻痺や構音障害)で退院できる割合は10%程度。(Mark H Ebellらの報告:JAMA 2013)
・どのような患者さんにCPR行うかが重要?⇒上記の報告において、高齢、がん(転移あり)、脳卒中、敗血症、腎不全、肝不全、呼吸不全、施設入所者…などは後遺症少なく退院できることは少ない。例えば、85歳以上・施設入所者となると2%未満。さらに心疾患による入院でない場合には、0.8%程度となる。
・どのような患者さんにCPR施行するかによって、蘇生率や後遺症なく退院できるかは異なる。
大事なのはどれくらい蘇生できるかということだけ?(医学的側面)⇒「どのような最期を迎えたいか?」が重要!
②DNRって何?
・DNR(Do Not Resuscitate)DNAR (Do Not Attempt Resuscitate)
心肺停止状態になった時に蘇生措置を行わないこと
(他の治療に関しての意思表示とは異なる)
⇒「なにもしない」人ではない。
③DNRに関する臨床上の問題点は?(Yuenらのレビュー2011を参考に)
・不十分な情報提供
・医療従事者が他の治療について、不適切にDNRオーダーを持ち出す
・本人不在
③-Ⅰ:不十分な情報提供
患者さん・家族は、CPRすれば元気になると思っている?(70歳以上の8割の人が、CPR後に半数以上は退院できると思っていた:Adams DHらの報告2006)
CPRで期待される効果とデメリットの説明がなされていないことが多い
(4%の医師しかCPRの効果について言及しておらず、CPRのデメリットについてはさらに言及少なかった:Tulskyらの報告1995)
③-Ⅱ:医療従事者が他の治療について、不適切にDNRオーダーを持ち出す
抗菌薬・点滴・輸血・胃瘻・透析など、他の医療行為に対して、本来DNRオーダーがそのまま適応されるべきではない。
(155名の外科医に対する調査で、DNRオーダーがあると、43%が輸血を差し控える、32%が抗菌薬投与を行わないという答えであった:Gorman TEらの報告 2005)
③-Ⅲ:本人不在
DNRオーダーにあたり、本人の意思が確認されていることは少ない。
がん124名中、113名(91%)にDNRオーダーあったが、1例も患者自身は同意に関わっていない。(Tokudaらの報告 2004)
DNRオーダーの際に、3/4は本人判断できない状態(Bedellらの報告1986)
④ では、実際にどのようなプロセスでDNRオーダーを行うべきか?(Joint CommisionのDNRオーダーに関する提言より一部抜粋)
(1)DNRについて話し合うべき患者・家族と相談の場を設ける。
(2)DNRについて話し合うべき患者:終末期の患者、重篤もしくは不可逆的な疾病によりADL悪い患者、不可逆的な意識障害ある患者、蘇生の可能性が低い患者、呼吸・心停止のリスクが高くなっている患者。
(3)プロセスに含まれること:ケアのゴール設定、患者の経過・予後・CPRによる利益とデメリットについて説明、推奨を伝える。
(4)入院して72h以内に行う。(患者の状態が変化したら再確認)
(5)その内容と決定事項をカルテに記載。スタッフはその決定に注意を払う。
⑤まとめ
DNRかどうかを決めるまで:
★DNRについて話した方がよい患者に対して、適切なタイミングに(入院して早い段階で)、本人?・家族とDNRについて話す。
★DNRについて話す際には、本人の病状・予後を説明し、ケアのゴールを共有。CPRのメリット・デメリットについて伝える。
DNRが決まったあと:
★スタッフ間での共有
★DNR≠「なにもしない」人
上記内容について、話した後、では実際には?というところで、ディスカッションしました。本人にはなかなか話しづらいよねといったところだったり、そのなかで継続的に関われる病棟であるからこそ、事前にいろいろ聞いていくこともできるのではないかといった話しも出ました。そのなかで少しアドバンスケアプランニングの話もでました。また、実際にDNRの話をうける家族の心情であったり、ケアのゴール共有が大事ではないかといった話しなど、30分では時間が足りないなと感じました。自分としても、DNRオーダーについて考える良い機会となりました。