以前、セフトリアキソンの皮下投与について調べたことがあり、このブログにものせさせていただきました。http://blog.goo.ne.jp/higashisaitama/e/062165a294a2b7781f6c9021e563e0ed
最近、抗菌薬の皮下投与(他の薬剤で)がカンファレンスで話題となったので、ここ最近の論文を、追加で調べてみました。
Age Ageing. 2017 Jan 8;46(1):151-155. doi: 10.1093/ageing/afw143.
Tolerance of subcutaneously administered antibiotics: a French national prospective study.
抗菌薬の皮下投与に対する耐性を調査した多施設前向きの観察研究。
フランスの50病院の感染症科もしくは老年科の医師66名が研究参加を承認。1日以上の抗菌薬皮下投与を行った患者を対象。
⇒219例の患者(平均年齢83歳)が対象となり、うちセフトリアキソン163例(74.4%)、エルタペネム30例(13.7%)と多かった。皮下投与の理由は静脈路確保が困難であることが65.3%と主な理由であった。50例(22.8%)に少なくとも1つのadverse effect(AE)を認めた。2例はそれにより入院期間が延長となっており、6例が皮下投与中止となった。AEに関連していた因子は、抗菌薬のクラス(特にテイコプラニン)とrigid catheterの使用であった。8割の患者は、問題なく皮下投与が行えて、臨床的に回復していた。
結論:皮下投与は静脈投与の代替手段として安全であり、効果や薬物動態に関する研究が必要である。
Med Mal Infect. 2014 Jun;44(6):275-80. doi: 10.1016/j.medmal.2014.03.007. Epub 2014 Jun 2.
Subcutaneous and intravenous ceftriaxone administration in patients more than 75 years of age.
75歳以上の患者を対象にセフトリアキソンの静脈投与と皮下投与を比較した後ろ向き研究。⇒148例の患者が対象となり、110例が静脈投与・38例が皮下投与であった。平均年齢は84.7歳であり、皮下投与群が有意に高齢であった(86.9歳vs83.9歳)。皮下投与群は有意に認知症が多く、寝たきり患者が多かった。培養結果・感染巣・死亡率・治癒に関しては有意差を認めなかった。
結論:セフトリアキソンの皮下投与は脆弱な高齢者でより使用されていた。治療の失敗や死亡率とは関連していなかった。
Clin Microbiol Infect. 2015 Apr;21(4):370.e1-3. doi: 10.1016/j.cmi.2014.11.017. Epub 2014 Nov 23.
Subcutaneously administered antibiotics: a national survey of current practice from the French Infectious Diseases (SPILF) and Geriatric Medicine (SFGG) society networks.
フランスの感染症科もしくは老年科の医師を対象に行った、抗菌薬の皮下投与に関するアンケート調査。⇒367人(96.1%)が抗菌薬の皮下投与の経験があった。そのなかで、1人を除いてセフトリアキソンの皮下投与を行っており、エルタペネム・テイコプラニン・アミノグリコシド・アモキシリンの皮下投与は、それぞれ33.2%・39.2%・35.1%・15.3%が行っていた。皮下投与は経口・静脈などの投与が行えないときに、特に緩和ケアの間に行われていた。痛み・皮膚壊死・効果の欠如が主な副作用で、それぞれ70.8%・12.8%・19.9%の医師が経験していた。
それぞれ他国での研究にはなりますが、抗菌薬の皮下投与を結構多くの医師が行っているのだなと思いましたし、まだまだ研究がないものの(緩和ケアが中心となる)高齢者が増えるなかで、少しずつ注目されている部分なのかなと感じました。さらに研究がすすみ、もう少し自信をもって抗菌薬の皮下投与ができるようになってくるといいですね。