東埼玉病院 総合診療科ブログ

勉強会やカンファレンスでの話題、臨床以外での活動などについて書いていきます!

予後告知について

2016-06-27 21:47:42 | カンファレンスの話題
 
今日、訪問診療のみちすがら同行訪問した斉藤先生と予後告知の話しになったので、以前自分が調べた内容をのせてみます。

□予後告知の意義は?

・効果の乏しい化学療法などを行わなくなる?

  Janeらの報告:医師と患者の予後に関する相違が大きいとより延命治療を選択する(1998年、JAMA

・身辺整理や残りの人生やりたいことを行える?

 InnesらのSys review:ある程度の予後告知は、患者の不安を減らし、将来の計画をファシリテートする(2009年、Palliative Medicine)

□患者は予後告知を望んでいるのか?

 InnesらのSys review:2つの量的・2つの質的研究で、治らない・限られた命である事の情報はほとんどのPt望んでいる。実際の期間を知りたがる人は少ない(よいニュースならりたい)

□予後告知を行うことにより、不安が増したり、うつになりやすい?

 Barnett(Psychooncology 2006) 106例の進行がん患者を対象としたインタビュー調査。予後の情報を望んでいた49%のうち、約半数が予後について十分理解しており、22%が大まかな理解はあるが、非現実的な時間軸であった。この2つの群で心理的負担感は有意差あり。(「十分理解」群のほうが少なかった:身体症状の影響?)

□そもそも予後予測は本当に正確なのか?

  実際にホスピスに登録した人の15%が6ヶ月以上の予後で、15%が7日以内に亡くなっていた(Christakisら:NEJM1996)。

   PPIも、予後3週・6週を感度・特異度80%程度

□日本ではどうなのか?

★どのような希望?

Sanjo(Annals of Oncology 2007):general populationPCU遺族対象のアンケート調査

6か月の余命:一切議論したくない1割、詳細に話してほしい4

12か月の余命:一切議論したくない2割、詳細に話してほしい4

・滝沢ら(臨床泌尿器科 2004):がん専門病院の初診時にアンケート調査⇒75歳以上では予後告知の希望は有意に少なかった。

★実態は?

田代ら(緩和ケア 2013):6つの診療所において在宅緩和ケアをうけたがん患者の遺族を対象としたアンケート

病院医師から77%が病名告知。質的予後が46%・量的予後が25

どの程度事前に患者が告知希望をしていたかについては半数の家族が「わからない」と回答。


  質的な予後告知はある程度、本人にも必要なのかなとは思います。量的な予後告知はおそらく個別化が重要なのでしょう。Sanjoらの報告などはそれを表しているのかなとも思います(ただし、実際のがん終末期患者を対象としていない点で参考程度にしかならないかもしれません⇒詳細に話してほしい人のほうが多いから話したほうがよいとはならない、一切議論したくない人がいることにも注目すべき、かつこの割合ががん終末期患者でどうなるのか)。どの程度患者が知りたいのかを様々なタイミングで探りを入れるのは重要なのでしょうね。でも実際は非常に難しいのかなと思います。

 質的予後にしても、量的予後にしても、個人的には実際の臨床にあてはめるときに、考えなくてはならないことが2つあると考えてます。1つはなんのために予後告知をするのか(本人、家族とも)。もう1つは「言わずもがな」も重要。家族に伝えるにしても、本人に伝えるにしても、医療者の安心やエゴのために伝えることは少なくしたいなと思っています。


第7回プライマリケア連合学会学術大会

2016-06-15 22:05:07 | 学会活動

 先週末は、浅草で第7回プライマリケア連合学会が開催されました。私たちも参加してきました。

今永・渡邊が下記の演題で発表しました。また、黒谷が前任地から出した演題で発表しています。

 渡邊「入院中経口摂取が不良であったが、施設に退院することにより経口摂取が改善した3例」

 今永「介護老人福祉施設入所者において、2年以内の死亡に関連する因子は何か?」

 黒谷「エコーガイド下筋膜リリースにより症状・可動域の改善を認めた凍結肩の一例」

  あと、今永はプレコングレスワークショップ「誰も教えてくれなかった御看取り」でファシリテーターの1人として参加しました。

 来月にはまた在宅医学会があるので、そちらも参加予定です。

 学会は懐かしい顔に会ったり、様々な刺激をもらったりするので、仕事へのモチベーションにもつながる部分がありますね。


日本経済新聞の 「自然に逝きたい」増える老衰

2016-06-09 23:55:31 | その他

 先日取材をいただいた日本経済新聞の記事が6/6夕刊に掲載されました。「老衰」について話しをということで、取材いただきました。

「老衰」に関しては、昨年秋のNHKスペシャルでも取材協力をさせていただきましたが、それに続いてメディアの取材は2回目でした。

超高齢者の自然な看取りに対する関心を2回の取材を通じて感じました。日々の臨床においても、患者さんや家族はそれぞれに死生観をもちながら「老衰」というものに対峙していることを感じます。医療者として、「老衰」という医学的な定義がないものをどのように考えるか・・・。非常に重要な問題であると個人的には感じています。今度、日本在宅医学会でも、モーニングセミナーで「老衰」のはなしをさせていただく機会をいただきました。今まで、細々ながら老衰に関して研究を行ってきているのですが、今後も細々続けていたきいと思います。

 もし、日経新聞の記事にご興味がある方がいらっしゃれば、電子版でも公開されているので、下記URLでご参照ください。

http://style.nikkei.com/article/DGXMZO03162350T00C16A6NZBP00

 

                                                              


皮膚真菌感染症について

2016-06-06 21:03:59 | 勉強会

 ずいぶん更新をさぼってしまいました・・・

また、がんばって更新します! 

今日は斎藤先生が提供してくれた勉強会の内容からです。皮膚科をローテートしていた時期もあり、皮膚真菌症についてまとめてくれました。

<皮膚真菌症について>
 
〇診断について
薄皮がはがれるような発疹
特徴は遠心性に広がる小嚢疱、細かな鱗屑
KOH染色で診断(×10で検鏡するとよい)
簡便なセロファンテープ法もある
 ・足白癬以外には適応可
 ・病変部位にセロファンテープを貼付け、角質を採取する
 ・テープの隙間から1/2滴のKOH液を滴下 
  ※試してみましたがまあまあ見えました
 
〇治療について
代表的な外用抗真菌薬:
 <アリルアミン系>
   ・ラミシール®(テルビナフィン) 
 <イミダゾール系>
   ・ルリコン®(ルリコナゾール)    
   ・ニゾラール®(ケトコナゾール)  
 ■優劣を示唆する臨床データなし
 ■接触性皮膚炎が多い(ラミシール®>ルリコン®) 
    ※液剤>クリーム>軟膏の順で接触性皮膚炎の発症が多い 
    ※ルリコン軟膏®が最も刺激が少ない
 ■カンジダの第一選択薬はイミダゾール系
 ■臨床的にはルリコン®の効果が高いと考えられている
 
 治療期間:
 足白癬・手白癬 3〜6ヶ月
 爪白癬 6ヶ月〜1年
 
足白癬の外用指導
片方の趾間のみに所見があっても両足全体に塗布
 
目安:ラミシールクリーム®10日で1本(日頃実際に処方されている量はやや少なめ?)
 
爪白癬の3徴候:肥厚・白濁・粗造化(が一番重要!)…物理的刺激での肥厚も多いため
 
爪白癬は抗真菌薬内服で6−8割が治癒
しかし実際に内服治療が選択されることは少ない
これまでの抗真菌薬外用で爪白癬を治せる確率は1本の指に対して約10%→ほぼ治らない!
 
クレナフィン®(エフィコナゾール)
・日本初の外用爪白癬治療薬
・処方にはKOH染色必須 1回2本まで処方可能
・ただし、1本5900円(1年で7~14万程度)
 
 
Q:接触性皮膚炎?カンジダ性間擦疹?で迷ったら・・
 
KOH染色が困難な条件下での診断的治療
    まずはステロイドvsまずは抗真菌薬
→expert opinion としてはまずはステロイドが推奨 それでも効果ない時は抗真菌薬を考慮
 (「抗真菌薬は接触性皮膚炎が多いので内科の先生方はステロイドを優先したほうが失敗が少ない」とのこと)
 
 
   皮膚真菌症は、高齢者医療において本当によく遭遇しますが、知識としてまとまっていない部分もあったので勉強になりました。
  セロファンテープ法!面倒くさがりな自分には向いてるかもしれないなと思いました。