東埼玉病院 総合診療科ブログ

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インフルエンザの重症化のリスク因子は何か?

2017-04-21 22:08:37 | 勉強会

 

以前、「高齢者施設でインフルエンザが流行したら、抗インフルエンザ薬の予防投与を行うべきか?」というテーマをブログにのせました。(http://blog.goo.ne.jp/higashisaitama/e/dd2a234c82c0274102814fd6ffe16801

そのときに、インフルエンザに罹患することにより入院・細菌感染合併・死亡のリスクが高い患者さんはどのような方なのか疑問に思い、今回調べてみました。

 

<インフルエンザの重症化のリスク因子は何か?>

 

★Populations at risk for severe or complicated influenza illness: systematic review and meta-analysis  (BMJ 2013)

表題のとおり、メタ分析

季節性のインフルエンザにおいて

①    年齢について

高齢者は非高齢者と比較して、入院・全死亡率が有意に高い(それぞれOR:4.65と2.95)。肺炎合併・ICU入室・人工呼吸器使用に関しては有意差なし。

②    合併症について

慢性肺疾患は、入院・ICU入室・人工呼吸器使用のリスク(それぞれOR:2.38、4.46、4.02)。肺炎・全死亡率では統計学的に有意差なし。

喘息は、肺炎合併のみリスク(OR:1.35)。

心疾患は、肺炎合併・入院・人工呼吸使用・全死亡率のリスク(OR:1.56、16.45、3.31、1.97)。

神経筋疾患は、全死亡率のリスク(OR:3.21)。

糖尿病は、入院のリスクとはなっていた(OR:9.91)。

   しかし、文献内ではエビデンスレベルは低いことを指摘。

 

その後の発表されて参考になりそうな研究をいくつか

 

★Clinical courses and outcomes of hospitalized adult patients with seasonal influenza in Korea, 2011-2012: Hospital-based Influenza Morbidity & Mortality (HIMM) surveillance. (J Infect Chemother. 2014)

前向き研究。検査で確認された成人のインフルエンザ患者2184例のうち、123例(5.6%)が入院し、うち40例が合併症(肺炎など)を起こしていた。

多変量解析で、合併症に有意な因子は、糖尿病であった(OR:3.63)。

 

★Patients hospitalized with laboratory-confirmed influenza during the 2010-2011 influenza season: exploring disease severity by virus type and subtype. (J Infect Dis. 2013)

 入院したインフルエンザ患者を対象とした研究。アウトカムは死亡もしくはICU入室。

成人において、医学的状態としては、慢性肺疾患と神経筋疾患が独立したリスク因子であった(それぞれOR:1.46、1.68)。

 

 これらを考えると、エビデンスレベルは必ずしも高くないものの、心肺疾患や神経筋疾患、糖尿病患者などはリスクがあると考えたほうがよいのかもしれません。臨床的な感覚とも一致はしますが、虚弱高齢者や施設入所者に絞った研究などはあまり見当たらず、これらの患者に関して、様々な医学的状態を検討するような研究が出ると参考になるのになと感じました。