近松門左衛門の言う虚実皮膜とは、芸術は事実と虚構との微妙な境界にこそある、という意味だそうです。映画も同様です。虚構に偏ればしらけるだけだし、リアリズムを求めすぎてもしょせん現実の出来事に敵いません。黒澤明監督も、「嘘を信じさせるのが映画の力。嘘から出たマコトを描く」と言っていたそうです。
古き良き時代の映画は、現実にはあり得ない夢を描き、そこに真実を表現していました。しかし1960年代以降はもう人々が単純に夢を信じることはできず、リアリズムの映画が主流になりました。映画が虚実皮膜ではなくなり事実一辺倒になってしまった感がありました。だからといって、過去にもどることはできません。常に新しいものを目指さなければ、これもまた芸術ではありません。
そして、今、映画は新しい時代に入っているように思います。スターウォーズ以降、SFやファンタジーの意欲作が相次いで作られています。新しい技術を駆使して虚構を描きながら、見るものをその世界に引き入れ、真理について考えさせる力を持った映画が、この1年間だけでも何作もありました。
クリスマス・キャロル、ナイン ~9番目の奇妙な人形~、コララインとボタンの魔女、アバター、ヒックとドラゴン、ラスト・ベンダー、ハリー・ポッターと死の秘宝。これらを子供の映画だと誤解して見ていない方、一度ご覧になってください。