貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

変なフローライト ④天使の羽根

2021-10-11 21:11:47 | 単品

このところあちこちで見かける、エンジェルフェザーフローライト。
フローライトに白い羽根のような模様が入ったもの。エンジェルフェザーとはよく言ったもので、商品名としても魅力的。
この白いもやもやが何からできているのか、まだわからないらしい。ってそんなことあるのか? 砕いて分析すればいいだけだろうに。まあやったところで何かの得になるわけでもないから誰もやらないのでしょう。そういうことはけっこう多い。
中国浙江省義烏というところで採れるらしい(江西省九江市という説もある)。近年中国はレアアースだけでなく、趣味用の天然石もさかんに掘り出しているように見える。それもチベットとか広西省チワン族自治区とか内モンゴルとか……。もやもやするけれど深入りしない。

これは某安売店でばかばか売り出し始めた頃に買ったもの。



高さ108ミリ。高かった。一万円を超えるものは買わないという貧石の規則を破って、清水の舞台から飛び降りるつもりでぽちっとしたもの。まあ骨折はしなかった。
(安売り店で加工品なので産地表記はない。まあしょうがない。)

なぜそんなにほしかったか。
これ、何かねえ、「天界」の姿に見えるんですよ。
何がだよ、と言われても困る。見たことあるのかよ、と言われても困る。
けど、どこまでも澄んだ青の中を、細かい光の糸が高みへ昇っていく。
ところどころにはクラックの虹が光る。
それがね、あちきにとっては天界のイメージに近いと。
小さいペンダントや六角柱ではこの景色は出ない。だから高かったけど大きいこれがほしかったのです。ま、お笑いください。
これをぼうっと眺めながら天界の神々のことを想う。それも酔狂ということで。


変なフローライト ③ディープブルーフローライト

2021-10-10 17:30:33 | 単品

この石、普通の光では「きたねえ石だな」と言われかねない。あちきもそう思うんだから、知らない人が見たら、「何でこんな石を置いておく」と言われるだろう。
ところが、強い光を当てると、至上のブルーに輝く。

その色はサファイア、アウインに勝るとも劣らない。おおげさか。
この手の「ディープブルーフローライト」ではアフガン産が有名らしいけど、国があんな状態なのでもう絶産とも。内モンゴル産もあるみたい。
これはメキシコ産(だったと思う)。原宿のコスモスペースさんで買った。3000円しなかった。

アラゴナイトやカルサイトで、色のものを下から照らすと、やはり美しい色が出ますけれども、それはまあ同じ色。
ディープブルーフローライトの場合は、見た目(反射光)はどす黒い緑で、全然違うんですよね。
同じブルーフローライトでも、中国産、ドイツ(黒い森)産ではもっと明るい、緑に近い色になってしまう。

これは何なのだろう。
メキシコのものは、ひょっとして「蛍光」? LEDの可視光でも電子の励起と収束が起こって、そのエネルギーが別の光を放っている?
はっきりしたことはわかりませんけど、それくらい、びっくりの輝きなのです。


変なフローライト ②光のミルフィーユ

2021-10-09 20:55:04 | 単品

フローライトはいくつもの色の層を作ることがあります。



これは「レインボーフローライト」という名の、フローライトのスライス。長さ120ミリとけっこうでかい。
クリスタルワールドさんの通販で購入。江西省九江市産。4000円弱。
ただ置いてあるのを見ると暗くて「何じゃ?」となるけれど、強い光に透かすと、これがまあ、なんというか、七色変化というか、光のミルフィーユというか。紫、緑、青、黄色などが薄い層を作って重なっています。



薄いほうの紫・緑・青の鮮やかさは惚れ惚れしますし、濃い色の部分の紫も、ごく薄い別色の層があったり、深~い紫が透けて深紅の輝きを見せたり、実に妖しい。

ちょっと写真じゃ再現できないですね。

この色の層は実に不思議。厚かったり薄かったり、同じ色が繰り返されたり、濃い紫の中に突然まったく違う薄い透明や青の層が入り込んだり。

フローライトの色は、微量の希土類がカルシウムに変わって入り込み、結晶が歪むことで生まれると言われています。そういう元素置換は関係なく、何らかの理由で結晶が歪んだためという説もあります。(結晶の歪みによる発色だから方向変色が起こる。)
いずれにせよですな、こんなにころころ変わる色を、何層も重ねるというのは、どういうわざなのだろう。
ある時はイットリウムを微量に含んだフッ化カルシウムが流れ込み、別の時にはサマリウムを微量に含んだものが流れ込む。それが頻繁に繰り返された?
それとも液状の中で希土類と結びついた微小結晶が生まれ、それが重さの順で沈んだのか。(それでは繰り返しが説明できないのではないか。)
希土類が関係ないなら、ある状態で固まったところに、熱や放射線が作用してある色になり、少し時間をおいて固まったところに、また何かが作用して別の色を作った?

リーゼガング現象といって、あるゲル状の電解質溶液に、それと混ざると沈殿を起こすような別のゲル状電解質溶液を少しずつ注ぐと、層状(ないし同心円状)の縞模様ができるというものがある。瑪瑙の縞模様はこれによると考えられているらしいが、フローライトも同じことなのか。いや、これでは複数色になることが説明できないのではないか。厚さが極端に違う層ができたりはしないのではないか。
はてさて、わかりませーん。本当に神秘的で、実に面白い。


変なフローライト ①変な塔

2021-10-08 20:41:43 | 単品

何かこの頃フローライトがすごく出回ってませんか。それとも以前からなんでしょうか。
きれいな結晶のものがあちこちで売られている。でも結構高い。貧老にはなかなか手が出ない。

フローライトというのは、すごい。
何せ、野党急進派の最大勢力。
CaF2。これだけ。
単純。珪素も酸素もない。これってすごいことでしょ。なんせ地殻で最も多い2つをスルーしている。
「フッ素は地殻の平均的な岩石の中ではケイ素の500分の1、海水中では塩素の1万分の1程度しか存在しない」とのこと。
それでいて、あちこちで採れ、透き通っていて、いろいろな色がある。トルマリンやカルサイトも色はいろいろだけど、単純な透明石でこれだけ色があるのはあまりないんじゃないかな。さらに蛍光したりもする。
すごい。(そればっか言ってるな)

フローライトのコレクターというのはたくさんいるようで(たとえばこんなサイト)、まあ、その愛情たるや恐るべきもので、あちきなんかが何かを言う資格はない。資格はないけど、何かを言ってはいけないということはない。(うるさいね)
美しい結晶ものなんかないから、「変なもの」路線で行く。

(なげーな、おい)
これは、25センチくらいある六角柱。つか塔ですな。2000円もしなかった。何だいこれは、と思わずぽちっとしてしまった。誠安天然石さんというお店。
全体は茶色がかった黄色。ところどころに紫の帯がある。光を当てながらいろいろな方向に向けると、色がころころと変わる。紫や茶色が消えたり、黄金色や虹色に光ったり。美しいとまで言えるかどうかはともかく、なかなか不思議でいいです。
しかしつらつら思うに、これだけの塔が取り出せるというのは、原石はどのくらい大きかったのか。色の層はたぶん水平方向にできるものでしょうから、少なくとも25センチほどの厚さの透明な原石があったということになると思うのです。
どんなものだったのか。こういうものがどれくらい採れたのか。いやそもそもこんな塔をどうして作ろうと思い立ったのか。
わからん。


「カラーチェンジ」って何?

2021-10-07 20:13:35 | おべんきょノート

「カラーチェンジ」と銘打って売られている天然石がたくさんあります。
で、「カラーチェンジ」って何? となると、どうもこれ、いろいろな現象がごっちゃになっているらしい。
新米としてはわけがわからんので、ちょっと整理。

(1) 見る方向によって色が変わる
「多色性 pleochroism」と呼ばれるもの。(ちなみに鉱物分野では「他色性(たしょくせい)」と区別するために「たしきせい」と読まれるらしい。)
「結晶方位により光の吸収帯(または光の反射スペクトル)が著しく異なる」というもの。「光学的異方性」という言い方もあるみたい(それは現象の名前じゃないね)。
単純に「方向変色」と言ったほうがわかりやすいでしょうに。
最も有名なのがアイオライト(Iolite 菫青石。Mg2Al3(AlSi5O18)。与党六環派)で、まあ、神秘的で美しいです。
タンザナイト(青ゾイサイト。Ca2Al3(SiO4)(Si2O7)O(OH)。双結派)、アンダルーサイト(Andalusite 紅柱石。Al2SiO5。単独派)などでも見られます(あまりはっきりしない個体もあるけど)。ケイ酸塩の構造とは関係ないのね。
クンツァイト、トルマリン、アパタイト、トパーズ、ジルコン、エメラルド、サファイアなども多色性は強いとのこと。
ただし、結晶は「立方晶系以外は光学的異方性を持つ」ので、多色性は多かれ少なかれ存在するらしく、偏光顕微鏡での鉱物分析なんかはこれを利用するらしい。(はは、「らしい」ばかりだ。)
あまり言われないけど、フローライトやアメジストだって方向によってけっこう色が変わりますよね。

これはフローライトの小タンブル。この紫の筋は、方向によって消えます。
フローライトの色模様はけっこうこういう現象を見せるようですね。

(2) 光源によって色が変わる
よくアレキサンドライト(クロム含有のクリソベリル[金緑石])が「多色性」の例として挙げられます。
「日光や蛍光灯の下では青ないし深緑、白熱灯や蝋燭では赤ないし赤紫にカラーチェンジする」
つまり「光源の(人間の目にははっきりとわからない)波長分布の違いで、色が著しく異なって見える」ということで、アレキサンドライトの場合はそれがダイナミックで、この石の人気の元になっているわけです。
最近は「カラーチェンジ・ガーネット」も、同じような変色を見せるものとして人気だそうです(スペサルティンとパイロープの中間種らしい)。写真がひどいけど、これ。

けれど、これ「多色性」と言えるのかなあ。
《光源の種類(光源の波長分布の違い)により、わずかながら色が違って見えるのは、多くの鉱物についてあてはまる。たとえば青色のコランダム(サファイア)は蛍光灯下の方が白熱灯下よりも鮮やかな青色に見える。》(倉敷市立自然史博物館
まあ考えてみれば当たり前の話で、どんな石でも、室内の暗い光で見るのと、明るい陽光の下で見るのとでは色は違う。

安物のスキャポライトのブレス。普通の光では黒に近い紫。けれど強い光を当てると全然違った姿になる。

ちなみに、光というのは、だいたいいくつもの波長を含んでいるもので(レーザー光は純粋波長)、石がその中のどれと反応してどんな色を発するかは、ほんとに千差万別。ブレスレットをして出かけると、建物内、電車内、屋外で全然色が変わる。電車内の光でも、会社によって含まれる色は違っていて、ある鉄道会社ではしょぼく、別の会社ではきれいに見えたりする。面白いものです。
こういうのはわかりやすく表現するなら「光源変色」となるのではないでしょうか。

ちょっと面白いのはルビーで、「赤色成分を一切含まない緑色光源下においても赤く光ることができる(レーザーは完全な単色光である)。これは、ルビー中に0.1%含まれるCr3+が紫および黄緑色光を吸収し、そのエネルギーを赤色発光として再度放出する性質による」のだそうです。「光源不変色」(笑い)。ルビー恐るべし。

(3) 蛍光
紫外線を当てると違った色で発光する(時にはしばらく発光し続ける)蛍光鉱物というものが、よく出回っています。時々UVライトと数種類の石がセットになって売られていたりもします。
フローライト、カルサイト、琥珀、ハックマナイト、アダマイト、ソーダライト、アフガナイト、ウェルネライト、ユージアライト、ルビー……。全部で500種類くらいあるそうで(おい、8分の1だぜ)。といってもその中のすべての石が光るわけでもないですが。ダイヤモンド、スキャポライト、グロシュラーなどでも稀に蛍光するのがあるらしい。

ハックマナイト(ソーダライトの一種)というのは中でも不思議な石で、紫外線ライトを当てると赤く発色しますが、それだけでなく、
《自然光の下では元の色が失われて白(透明)になり、紫外線を照射すると元の色(ピンク、杏色など)に戻る「フォトクロミズム」または「テネブレッセンス」と呼ばれるものになります。蛍光灯や強い日差しの下でも僅かな変色を見ることが出来ます。原因となっているのはわずかに混じる硫黄成分です。》ホシノカケラ
だそうです。
見かけるのは紫や青が模様になった石が多いですけど。

蛍光というのは、「紫外線によって原子が励起状態になりそれが基底状態に戻る時にエネルギーを可視光として放出する」という仕組みだそうです。微量に含まれるウランや希土類によるものらしいけれど、どうもはっきりとはわかっていないらしい。なんでピンクになったり紫になったりするのかも。
紫外線を当てる光るというのは、面白いは面白いんですけど、あちきはなんかこう、あまり心惹かれない。ちょっと毒々しい色だし。

これを「カラーチェンジ」というのはちょっと首をひねる感じ。「カラーチェンジ・フローライト」と書かれると、方向変色あるいは透過光変色(次項)のことかと思うけれど、蛍光のことだったり。「蛍光フローライト」と素直に書いてくれたらわかりやすいと思うんですけど。カラーチェンジのほうが売れるのかな。

(4) 反射光と透過光で色が変わる
これ、あんまり書かれたものを見たことがないのですけど、けっこうあって、しかも面白い。
例えば、ブルーフローライト。見た目は濁った深緑の「きったねえ石」ですが、強い光を透過させると、途方もなく美しい青色に輝く。
アンデシンも、見た目は赤いのに、透過光が青く光るものがある。
アイオライトの中には、反射光では濃い青なのに、強い光に透かすと、方向性に関係なく透明(ないし薄黄色)になるものがある。これ、方向変色とは違うと思うんですがね。
これも安物のアイオライトのブレスレット。普通はあんこのような色なのに、光に透かすと薄黄色になる(方向によって変わることはない)。

こういう「透過光変色」に対して、特別な名前は付いていないようですね。なんか素敵な名前を付ければいいのに。
仕組みの説明も見つからない。まあ説明されても理解できないかもしれませんが。

      *     *

ところで、プレシャスオパールの「遊色」は「カラーチェンジ」とは言わないようですね。ラブラドライトの「ラブラドレッセンス」も、表面全体が青や金に輝いたりすると、ほとんど「カラーチェンジ」に近いけれど、そうは言わない。
こういうのは「構造色」というらしいですけど。
この手の「変幻光」はいろいろあって、その命名もまたごちゃごちゃ。これについてはまた改めて。

要するに、「カラーチェンジ」には、
(1)方向変色
(2)光源変色
(3)蛍光
(4)透過光変色(?)
があるということ、かな。

鉱物の色はとても面白い。加えて「色が変化する」のは本当に不思議。心惹かれるものです。
しかし「カラーチェンジ」という言葉、ごちゃごちゃすぎじゃないですかね。

追記
アレキサンドライトの多色については、
アレキサンドライトのカラーチェンジ
で実に明快に説明されています。すごい。
ものすごく大ざっぱに原理的に言えば、「たとえば赤と青の光だけ透過(反射)する」石に、見た目ではわからないけれど赤が強く含まれている光を当てれば赤が見えるし、青が強く含まれている光を当てれば青が見える、ということなんでしょうね。実際はもっと複雑だけど。
譬えれば、ラーメンとカレーが好きな人がいて、中華系ファミレスではラーメンばかり食べ、洋食系ファミレスではカレーばかり食べる。すると「あいつはラーメン狂いだぜ」という見方と「カレーマニアだぜ」という見方が生じる、ということかな。(全然わかりやすくなってねえよ)