交通の安全と労働を考える市民会議~ライドシェアを考える~は、2023年7月31日、「ライドシェア解禁論を、いま、改めて考える集会~地域公共交通はこう担う~」と題して、たましんRISURUホール(立川市市民会館)にて、多摩地区においては6年ぶりにシンポジウムを開催した。
《①からの続き》
管俊治(弁護士・日本労働弁護団常任幹事)「自由な働き方?~日本においてギグエコノミー・フリーランスで働く者の抱える課題」
ライドシェア解禁論がなぜ始まったのか、なぜ食い止めることが出来ているのか振り返りたい。
ライドシェアのビジネスモデルとは、公共交通を自由市場にし、ダンピングしてシェアを取りに行くというもの。
労働法を適用しないことでコストを抑制し利益を上げるビジネスモデルであるが、そのためにライドシェア事業者は業法(業種ごとの基本的な事業要件を定める法律。)を突破しないといけない。
しかしライドシェアは、日本ではその業法によって阻止できていることが特徴である。
2015年のウーバーの福岡での実証実験では国交省がいち早く業法違反として止め、業界や労働組合が反対運動を展開しロビー活動も功を奏し、行政や政府を巻き込んで、ライドシェアを阻止することが出来ている。
これは諸外国からしても優れたシステムで、私たちが誇ってもいい。
しかしこの成功に安穏としていてはいけない状況もある。
業法に頼っていると別の部分で弱点もある。
特に日本の場合、労働者性の問題に十分にチャレンジしていない、解決していない。
諸外国では、フードデリバリーなど、労働者性の問題について、この数年間に解決している。(労働者性を認めることについて判決を勝ち取っているし立法化も進んでいる)
また日本では、配車アプリ事業者がタクシー事業者の運賃収入を吸い取るシステムが広がっていることにも注意が必要。
そしてアルゴリズムの管理についての規制も、日本は遅れている。
指導や教育などもアプリに移管している、ウェアラブルカメラなどを使って収集した個人情報プロファイルをアルゴリズムと連携し人事考課や雇用管理する。
海外では、個人情報は目的外で使ってはいけない、アルゴリズムは労働条件に影響を与えるのだから情報を開示しろと、個人情報保護法と団体交渉権を使って闘いを始めている。
これはタクシーだけではなくすべての労働者の問題、日本だけでなく世界の問題、運動を広げていく必要がある。
「三多摩地域におけるラストワンマイルの課題」
大和田寛(東京交運労協三多摩ブロック協議会幹事)
神田康裕(東京ハイヤータクシー協会三多摩支部長)
住野敏彦(全国交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)議長)「ラストワンマイル・モビリティ/自動車DX・GXに関する検討会について」
ライドシェアについてはもちろん反対ではあるが、ライドシェアがなくてもタクシーはじめ公共交通でいかに持続可能な交通を確保していくのかが重要である。
国交省の委員会や検討会で、わたしは働く者を代表する立場で参加し意見を言っている。
国鉄の民営化以降、すべての交通モードが規制緩和されてきたが、一番の問題は需給調整規制の撤廃から、運賃を上げていけない状況になり、少子高齢化での利用者減も相まって、成長できない産業になっていること。
JRの廃線や交通事業者の廃業もあり、また運転者不足によってバス・タクシーを動かせず、地方・観光地では移動の足が確保できない現状があって、またぞろライドシェアを解禁してはどうかという声が上がってきた。
どういった形で交通を復活していくか、どう持続可能なものとしていくのか、という問題意識で、検討会で議論してきた。
ラストワンマイル・モビリティを守るための検討の理念は5つ。
・地域住民が行きたいときに行きたい場所へ自由に移動できる環境を整備する必要。
・担い手不足が深刻化し、交通サービスが提供されておらず、供給力の回復・強化による地域ニーズに即した交通サービスの確保が急務。
・賃上げにつながる運賃改定や、快適な職場環境の整備により採用力を向上させ、制度の見直しや運用の弾力化により地域住民が交通サービスの選択肢を吟味・選択できる環境を整備。
・交通分野におけるDX/GXは交通サービスの生産性・効率性・利便性の向上を可能としており、これらを駆使して供給力の強化を図ることが重要。
・地域公共交通活性化再生法(地域交通法)に基づく関係者における連携・協働を通じて、持続的で利便性の高い交通サービスにリ・デザインしていく。
基本的な考え方として3つ
〇地域公共交通のあり方
・地域が主体性をもってデザインしていくことが重要。
・地域公共交通会議等において、サービスのあり方について議論を重ねていくことが重要(ラストワンマイル・モビリティについては特に実質的な議論や積極的な取組が必要)。
・交通事業者(緑ナンバー)による持続的で利便性の高い交通サービスを第一に検討・模索するとともに、交通事業者は旅客運送のプロとして、その実現に協力することが重要。不十分な場合には、自家用有償旅客運送も組み合わせることができる。
〇交通不便地域における公共交通サービスの維持・確保
・社会インフラであり、「地域の財産」として位置付け、最大限活用することが重要。
・担い手不足が深刻化するとともに、移動ニーズが小口化・多様化しており、これらに対応できる持続可能で利便性の高いサービス形態が求められる。
・タクシー及び乗合タクシーについて、「供給力の強化」や「地域実情に即した多様なサービスの提供」を実現するための制度の見直しや運用の弾力化により、地域公共交通会議等において様々な交通サービスの選択肢を吟味・選択できる環境を整備することが必要。
〇自家用有償旅客運送制度の活用
・自家用有償旅客運送は、バス・タクシーを補完する交通手段であり、交通事業者が深刻な担い手不足に陥る中、地方公共団体や住民が主体となって、交通サービスを供給する手段として活用されている。
・他方、非営利の取組であるため、持続可能性を向上させるための基盤の強化が必要。また、サービスの円滑な導入のための方策を講じることが必要。
そして12の改善策が出てきた。
(1)タクシー事業者の供給力の強化のための制度・運用の改善
【施策①】 営業所ごとのタクシー車両の最低車両台数の緩和
【施策②】 営業所等の施設設置要件の緩和
【施策③】 運行管理のDX の推進
【施策④】 地方部にU ターン等した個人タクシー事業の経験者の活用
(2)多様なサービスの提供の検討を可能とする制度・運用の改善
【施策⑤】 タクシー事業者による乗合タクシー展開にあたっての法令試験免除
【施策⑥】タクシーと乗合タクシーの事業用車両の併用の柔軟化
【施策⑦】 乗合タクシー事業における補完的な自家用車の活用
(3)自家用有償旅客運送の円滑な導入や持続可能性の向上のための制度・運用の改善
【施策⑧】 事業者協力型自家用有償旅客運送の活用促進
【施策⑨】 「交通空白地」に係る目安の設定及び「地域交通の把握に関するマニュアル」の活用促進
【施策⑩】「地域交通の検討プロセスガイドライン」の活用促進
【施策⑪】 自家用有償旅客運送に係る「運送の対価」の目安の適正化
【施策⑫】 自家用有償旅客運送に係る更新登録手続の簡素化
いくら制度改正してもそこで働く人がいなければどうしようもない。
ほとんど事業者が努力をして交通を維持してきたが、文教費や社会制度費も使って支え行く必要もあるのではないか。
税を使って地域の交通を支えていくというものにしていくのが本来の公共交通のあり方ではないかと思っている。
山口広弁護士
雇用社会は社会の安定の基盤であるはずながら雇用の基盤を壊すのは、社会基盤を壊す。
二種免許が安全の基盤でありながら、それを壊すと利用者や市民の安全の基盤を壊す。
私たちはこれらの二つの重要な基盤への、ライドシェアがもたらす弊害について、運動を展開していく。
《①からの続き》
管俊治(弁護士・日本労働弁護団常任幹事)「自由な働き方?~日本においてギグエコノミー・フリーランスで働く者の抱える課題」
ライドシェア解禁論がなぜ始まったのか、なぜ食い止めることが出来ているのか振り返りたい。
ライドシェアのビジネスモデルとは、公共交通を自由市場にし、ダンピングしてシェアを取りに行くというもの。
労働法を適用しないことでコストを抑制し利益を上げるビジネスモデルであるが、そのためにライドシェア事業者は業法(業種ごとの基本的な事業要件を定める法律。)を突破しないといけない。
しかしライドシェアは、日本ではその業法によって阻止できていることが特徴である。
2015年のウーバーの福岡での実証実験では国交省がいち早く業法違反として止め、業界や労働組合が反対運動を展開しロビー活動も功を奏し、行政や政府を巻き込んで、ライドシェアを阻止することが出来ている。
これは諸外国からしても優れたシステムで、私たちが誇ってもいい。
しかしこの成功に安穏としていてはいけない状況もある。
業法に頼っていると別の部分で弱点もある。
特に日本の場合、労働者性の問題に十分にチャレンジしていない、解決していない。
諸外国では、フードデリバリーなど、労働者性の問題について、この数年間に解決している。(労働者性を認めることについて判決を勝ち取っているし立法化も進んでいる)
また日本では、配車アプリ事業者がタクシー事業者の運賃収入を吸い取るシステムが広がっていることにも注意が必要。
そしてアルゴリズムの管理についての規制も、日本は遅れている。
指導や教育などもアプリに移管している、ウェアラブルカメラなどを使って収集した個人情報プロファイルをアルゴリズムと連携し人事考課や雇用管理する。
海外では、個人情報は目的外で使ってはいけない、アルゴリズムは労働条件に影響を与えるのだから情報を開示しろと、個人情報保護法と団体交渉権を使って闘いを始めている。
これはタクシーだけではなくすべての労働者の問題、日本だけでなく世界の問題、運動を広げていく必要がある。
「三多摩地域におけるラストワンマイルの課題」
大和田寛(東京交運労協三多摩ブロック協議会幹事)
神田康裕(東京ハイヤータクシー協会三多摩支部長)
住野敏彦(全国交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)議長)「ラストワンマイル・モビリティ/自動車DX・GXに関する検討会について」
ライドシェアについてはもちろん反対ではあるが、ライドシェアがなくてもタクシーはじめ公共交通でいかに持続可能な交通を確保していくのかが重要である。
国交省の委員会や検討会で、わたしは働く者を代表する立場で参加し意見を言っている。
国鉄の民営化以降、すべての交通モードが規制緩和されてきたが、一番の問題は需給調整規制の撤廃から、運賃を上げていけない状況になり、少子高齢化での利用者減も相まって、成長できない産業になっていること。
JRの廃線や交通事業者の廃業もあり、また運転者不足によってバス・タクシーを動かせず、地方・観光地では移動の足が確保できない現状があって、またぞろライドシェアを解禁してはどうかという声が上がってきた。
どういった形で交通を復活していくか、どう持続可能なものとしていくのか、という問題意識で、検討会で議論してきた。
ラストワンマイル・モビリティを守るための検討の理念は5つ。
・地域住民が行きたいときに行きたい場所へ自由に移動できる環境を整備する必要。
・担い手不足が深刻化し、交通サービスが提供されておらず、供給力の回復・強化による地域ニーズに即した交通サービスの確保が急務。
・賃上げにつながる運賃改定や、快適な職場環境の整備により採用力を向上させ、制度の見直しや運用の弾力化により地域住民が交通サービスの選択肢を吟味・選択できる環境を整備。
・交通分野におけるDX/GXは交通サービスの生産性・効率性・利便性の向上を可能としており、これらを駆使して供給力の強化を図ることが重要。
・地域公共交通活性化再生法(地域交通法)に基づく関係者における連携・協働を通じて、持続的で利便性の高い交通サービスにリ・デザインしていく。
基本的な考え方として3つ
〇地域公共交通のあり方
・地域が主体性をもってデザインしていくことが重要。
・地域公共交通会議等において、サービスのあり方について議論を重ねていくことが重要(ラストワンマイル・モビリティについては特に実質的な議論や積極的な取組が必要)。
・交通事業者(緑ナンバー)による持続的で利便性の高い交通サービスを第一に検討・模索するとともに、交通事業者は旅客運送のプロとして、その実現に協力することが重要。不十分な場合には、自家用有償旅客運送も組み合わせることができる。
〇交通不便地域における公共交通サービスの維持・確保
・社会インフラであり、「地域の財産」として位置付け、最大限活用することが重要。
・担い手不足が深刻化するとともに、移動ニーズが小口化・多様化しており、これらに対応できる持続可能で利便性の高いサービス形態が求められる。
・タクシー及び乗合タクシーについて、「供給力の強化」や「地域実情に即した多様なサービスの提供」を実現するための制度の見直しや運用の弾力化により、地域公共交通会議等において様々な交通サービスの選択肢を吟味・選択できる環境を整備することが必要。
〇自家用有償旅客運送制度の活用
・自家用有償旅客運送は、バス・タクシーを補完する交通手段であり、交通事業者が深刻な担い手不足に陥る中、地方公共団体や住民が主体となって、交通サービスを供給する手段として活用されている。
・他方、非営利の取組であるため、持続可能性を向上させるための基盤の強化が必要。また、サービスの円滑な導入のための方策を講じることが必要。
そして12の改善策が出てきた。
(1)タクシー事業者の供給力の強化のための制度・運用の改善
【施策①】 営業所ごとのタクシー車両の最低車両台数の緩和
【施策②】 営業所等の施設設置要件の緩和
【施策③】 運行管理のDX の推進
【施策④】 地方部にU ターン等した個人タクシー事業の経験者の活用
(2)多様なサービスの提供の検討を可能とする制度・運用の改善
【施策⑤】 タクシー事業者による乗合タクシー展開にあたっての法令試験免除
【施策⑥】タクシーと乗合タクシーの事業用車両の併用の柔軟化
【施策⑦】 乗合タクシー事業における補完的な自家用車の活用
(3)自家用有償旅客運送の円滑な導入や持続可能性の向上のための制度・運用の改善
【施策⑧】 事業者協力型自家用有償旅客運送の活用促進
【施策⑨】 「交通空白地」に係る目安の設定及び「地域交通の把握に関するマニュアル」の活用促進
【施策⑩】「地域交通の検討プロセスガイドライン」の活用促進
【施策⑪】 自家用有償旅客運送に係る「運送の対価」の目安の適正化
【施策⑫】 自家用有償旅客運送に係る更新登録手続の簡素化
いくら制度改正してもそこで働く人がいなければどうしようもない。
ほとんど事業者が努力をして交通を維持してきたが、文教費や社会制度費も使って支え行く必要もあるのではないか。
税を使って地域の交通を支えていくというものにしていくのが本来の公共交通のあり方ではないかと思っている。
山口広弁護士
雇用社会は社会の安定の基盤であるはずながら雇用の基盤を壊すのは、社会基盤を壊す。
二種免許が安全の基盤でありながら、それを壊すと利用者や市民の安全の基盤を壊す。
私たちはこれらの二つの重要な基盤への、ライドシェアがもたらす弊害について、運動を展開していく。
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