よしーの世界

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老いる家 崩れる街    野澤千絵

2021-06-06 08:33:39 | 
日本には今すぐ手を付けなければならない問題が山積みしている。喫緊には新型コロナだが、五輪の

為に有効な手立てを打つことを躊躇い中途半端な対応に終始している。そこには既得権益を手放さな

い一部権利団体の存在とそこに票を求める自民党の関係がある。本書の空き家問題もすぐにでも検討

をするべき事態で人口は減少しているのに、高層マンションをはじめ新築住宅は造られ続けている。

空き家総数は2013年度調査ですでに820万戸、全体の13.5%でさらに毎年増え続けているのだ。


地方だけの話ではなく東京都においても同じような状況で約1割が空き家である。造れば売れる、し

かも一旦売ってしまえば居住者に責任が移り、住宅メーカー、工務店は責任を負わない仕組みで、活

断層の上でも住宅建築を禁止できない現実がある。野放図な街造りの為に駅周辺に空き家が増え、車

での移動手段が必須な地域に住宅がバラ立ちする現状(高齢化で移動手段がなくなる)。相続を拒否

する物件も増え、資産とならない負動産化が著しい。


著者は豊富な資料と積み上げた調査で厳しい現実を訴えている。専門用語が飛び交い、法律の解説も

多いので読むのに時間も多少かかるかもしれないが、日本に住む全ての人に知っておいてほしい問題

だ。


第4章には7つの方策を示しており、まず自分たちの住む街への無関心・無意識をやめ、住宅総量を

減らし、街のまとまりを造り(コンパクト・シティ)、いまある住宅・居住地を再生、更新し、将来

に対するリスクを見極めることが重要だという。


私たちは自分の住んでいる街の今を知ることから始めたい。


老いる家 崩れる街          野澤千絵             講談社現代新書
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