EUにおける越境する(cross-border)契約における適用法について、EU委員会は2005年12月15日に1980年6月15日施行の「契約債務の準拠法に関するローマ条約(The Rome Convention on the Law Applicable to Contractual Obligation)」 (注1)の内容の更新・変更を規則草案(注2)公表した。(注3)
同草案は、家族関係、仲裁契約(arbitration agreement)、会社法によるべき紛争は対象外である。委員会はEUにおける国際私法としてローマ条約がEU加盟国にとって好ましくないと考えており、その近代化を強く望んでいた。さらに、現状、EU司法裁判所の裁判権は署名国が裁判権を与えなければ及ばないという問題もある。委員会は、①加盟国が要件協定(requisite protocol)を批准するのに25年かかったこと、②司法裁判所の判決はすべての加盟国に対し拘束力がないこと、③一方、各国の裁判所はその点について義務を負っていないということを問題視していた。
今回の新規則は、ROMEⅠの中核部分の補強―ビジネスの世界における相互関係に適応して適用法を選ぶ原則―の補強を狙ったものである。すなわち、その国の法律、国際協定、国際的な商品販売に係るウイーン条約のような国際的に認められ私的に法典化されたものなどの適用、選択を可能とするものである。当事者の法的な期待や効果は、売り手、サービス提供者、運送業者、仲介業者等が扱うサービスの特性に応じて行なわれるべきであるとする考えに基づいている。
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(注1)契約債務の準拠法に関するローマ条約(ROMEⅠ)本文:http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=CELEX:41998A0126(02):EN:HTML
(注2)「Proposal for a Regulation of the European Parliament and the Council on the law applicable to contractual obligations (ROME Ⅰ)」(https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A52005PC0650)
(注3)2003年1月14日にEU委員会は1980年ローマ条約(ROME Ⅰ)はEU指令や規則というものに変更すべきか否かを問うとともにその内容の近代化の求める「グリーンペーパー」(https://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=COM:2002:0654:FIN:EN:PDF)をまとめ公表している。今回の計画内容は、それに即したものである。
また、この問題と区別しなければならないのは、2003年7月22日、EU委員会が提案した
「ROME Ⅱ規則最終(案)」(注4)である。2007年7月11日に欧州議会と理事会規則「ROME Ⅱ規則」を採択した。これは、非契約的な状況下での規則案であり、名誉毀損(defamation)、広告、知的財産、製造物責任を含む請求時の適用法問題を定めたものである。同意規則は2009 年1 月11 日に発効した。
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=COM:2003:0427:FIN:EN:PDF
(注4) 片岡雅世「ローマⅡ規則における不当利得準拠法について――EU 国際私法統一の一局面として―」
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(今回のブログは2005年12月25日登録分の改訂版である)
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