荷物輸送は「ローカル線廃止」を阻止できるか? バス転換の前に考えたい、線路の有効な使い道とは
Melkmal より 220901 山本哲也(交通ライター)
⚫︎活況を呈すJRの鉄道荷物輸送
JR各社において、新幹線や在来線を利用した「荷物輸送」が、にわかに活発になりつつある。JR1社単独で行う事例をはじめ、複数のJRが連携する事例や、他の事業者と共同で取り組む事例もある。
実は、現在のように道路が発達していなかった頃、貨物輸送だけでなく荷物輸送も鉄道が中心だった。昨今のトラックドライバー不足解消や地球温暖化対策をふまえると、鉄道荷物輸送はローカル線を救う切り札になり得るのではないだろうか。
鉄道のメリットである
・速達性
・定時性
を生かした鉄道荷物輸送が、にわかに活況を呈している。というのは、鉄道各社が新型コロナウイルス感染拡大により落ち込んだ輸送収入を補うべく、絶滅の危機にひんしていた鉄道荷物輸送に活路を見いだしたからだ。
JR北海道は2021年3月から、JR九州は2021年5月から、新幹線を利用した荷物輸送サービスを開始した。
JR東日本は2021年10月から、もともと行っていた「新幹線レールゴー・サービス」を引き継ぐ新たなサービスを、東北新幹線、上越新幹線で開始している。
JR各社が単独で行うサービスだけでなく、JR北海道とJR東日本は北海道・東北新幹線を、JR東日本とJR西日本は北陸新幹線を利用して荷物を輸送している。また、JR東海とJR西日本が、東海道・山陽新幹線を利用した荷物輸送の実証実験を行った。
新幹線だけでなく、在来線においても荷物輸送サービスが実施されている。JR四国は、特急列車を利用したJR特急便荷物(レールゴー・サービス)を、JR西日本は在来線単独のサービスを開始するとともに、在来線特急と新幹線を組み合わせた実証実験を行った。
⚫︎かつて荷物輸送の中心だった鉄道
道路があまり整備されていなかった時代、荷物輸送といえば鉄道だった。JRの前身である国鉄時代は、貨物列車で輸送するものが貨物輸送、旅客列車などを使って旅客サービスの一部として輸送するものが荷物輸送と住み分けされていた。
1975(昭和50)年10月号の時刻表を見ると、旅客列車に加えて荷物列車の時刻が掲載されるとともに、国鉄旅客営業案内に、小荷物輸送サービスの内容と料金が載っている。
当時は、小荷物を駅に持ち込み、荷札に駅留めの場合は到着駅、個別配送の場合は住所などを書いて荷物を送っていたのだ。ちなみに駅留めとは、到着駅で荷物を預かり、受取人が受け取りに行く方法だ。
また、今でこそ博物館などでしかお目にかかれないが、クモニ、キニ(郵便輸送も行う列車は、クモユニ、キユニ)などの、荷物専用の車両も存在していた。しかしながら、宅配便サービスの台頭や、国鉄改革によるサービスの縮小により、次第に鉄道荷物輸送は忘れさられていった。
⚫︎鉄道インフラの活用は切り札になるか
JR各社が単独で行うサービスだけでなく、JR北海道とJR東日本は北海道・東北新幹線を、JR東日本とJR西日本は北陸新幹線を利用して荷物を輸送している。また、JR東海とJR西日本が、東海道・山陽新幹線を利用した荷物輸送の実証実験を行った。
新幹線だけでなく、在来線においても荷物輸送サービスが実施されている。JR四国は、特急列車を利用したJR特急便荷物(レールゴー・サービス)を、JR西日本は在来線単独のサービスを開始するとともに、在来線特急と新幹線を組み合わせた実証実験を行った。
⚫︎かつて荷物輸送の中心だった鉄道
道路があまり整備されていなかった時代、荷物輸送といえば鉄道だった。JRの前身である国鉄時代は、貨物列車で輸送するものが貨物輸送、旅客列車などを使って旅客サービスの一部として輸送するものが荷物輸送と住み分けされていた。
1975(昭和50)年10月号の時刻表を見ると、旅客列車に加えて荷物列車の時刻が掲載されるとともに、国鉄旅客営業案内に、小荷物輸送サービスの内容と料金が載っている。
当時は、小荷物を駅に持ち込み、荷札に駅留めの場合は到着駅、個別配送の場合は住所などを書いて荷物を送っていたのだ。ちなみに駅留めとは、到着駅で荷物を預かり、受取人が受け取りに行く方法だ。
また、今でこそ博物館などでしかお目にかかれないが、クモニ、キニ(郵便輸送も行う列車は、クモユニ、キユニ)などの、荷物専用の車両も存在していた。しかしながら、宅配便サービスの台頭や、国鉄改革によるサービスの縮小により、次第に鉄道荷物輸送は忘れさられていった。
⚫︎鉄道インフラの活用は切り札になるか
新幹線を使用した貨客混載事業の輸送フロー(画像:JR北海道)
ここにきて、トラック物流業界におけるドライバー不足の解決や温室効果ガス排出量削減に向けて、ローカル線と宅配輸送を組み合わせた貨客混載輸送が開始された。
2019年4月に北海道運輸局が認定した、JR北海道と佐川急便が行う、貨客混載輸送による総合効率化計画の概要は以下のとおり。
・稚内営業所~稚内駅(トラック輸送4.2km):佐川急便
・稚内駅~幌延駅(鉄道輸送60km):JR北海道
・幌延駅~各配送先(タクシー25km):地域の交通事業者
この取り組みにより、次のような効果が得られるとのことだ。
・過疎化や広域分散型の地域構造による非効率な物流の改善
・トラックドライバーの運転時間の削減
・トラックからの二酸化炭素排出量の削減
⚫︎鉄道×バスという異色の組み合わせも
九州産交バス、JR九州、タクルーの3社は、各社が提供する輸送サービスの特性を生かしながら、短期的にはMaaS(マース。次世代移動サービス)などの新たなテクノロジーの導入・活用により、熊本県内の輸送サービスの利便性向上に取り組んでいる。
この取り組みのなかで、九州産交バスとJR九州は、荷物輸送事業の実証実験を開始した。具体的には、バスの広域ネットワークとJR九州の新幹線による速達都市間輸送を組み合わせ、地域で採れた野菜や海産物などの生鮮食品を、その日のうちに福岡に届けるとのことだ。
この取り組みのユニークなところは、フィーダー部の輸送に、トラックでもタクシーでもなく、路線バスを使用するところにある。今回は新幹線との組み合わせであるが、山間部の地域バスとローカル線を組み合わせた物流体系を構築できないかなど、興味はつきない。
⚫︎課題は安定した輸送の確保
過疎化がますます進む地方においては、鉄道が旅客を運び、トラックが荷物を運ぶという住み分けが、かえって非効率を産む構造となっている。
旅客と荷物という垣根を取り払い、輸送手段としてローカル鉄道を有効活用するのであれば、ローカル線の活性化や収支改善、トラックドライバーの労働問題、地球環境問題の解決につながる可能性を秘めているのではないだろうか。
観光中心のローカル線利用促進策や、バス路線への転換が議論の中心になりがちなローカル線問題だ。今後は荷物輸送を含めて、
「線路を使って何が運べるのか、何ができるのか」
まで掘り下げて議論を行うべきであろう。
とはいえ、輸送量の多い幹線と比較して、災害対策が脆弱(ぜいじゃく)であるローカル線は、安定した輸送の確保がネックとなる。
旅客と荷物という垣根を取り払い、輸送手段としてローカル鉄道を有効活用するのであれば、ローカル線の活性化や収支改善、トラックドライバーの労働問題、地球環境問題の解決につながる可能性を秘めているのではないだろうか。
観光中心のローカル線利用促進策や、バス路線への転換が議論の中心になりがちなローカル線問題だ。今後は荷物輸送を含めて、
「線路を使って何が運べるのか、何ができるのか」
まで掘り下げて議論を行うべきであろう。
とはいえ、輸送量の多い幹線と比較して、災害対策が脆弱(ぜいじゃく)であるローカル線は、安定した輸送の確保がネックとなる。
降雨などによる相次ぐ運転休止に伴うサービスの低下、災害復旧費用の問題など、整理すべき課題も多い。