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わずか2年で、驚くべき進歩を遂げる量子コンピュータ。IBMが発表した新ロードマップとは 202205

2022-05-30 23:00:00 | 気になる モノ・コト

わずか2年で、驚くべき進歩を遂げる量子コンピュータ。IBMが発表した新ロードマップとは
 ASCII より 220530  大河原克行

 IBMは、2022年5月10日、量子コンピュータに関する新たなロードマップを発表した。 ここでは、2025年に、モジュール式に拡張されたプロセッサーを活用して、複数のクラスターで構築した4000量子ビット以上のプロセッサーの実現を目指す内容も含まれている。

米IBMのリサーチディレクター ダリオ・ギル(Dr. Darío Gil)シニアバイスプレジデント

 米IBMのリサーチディレクターであるダリオ・ギル(Dr. Darío Gil)シニアバイスプレジデントは、IBMの年次イベント「THINK 2022」の会期2日目(現地時間5月11日)の基調講演に登壇し、次のように語った。

「わずか2年間で、量子ロードマップは驚くべき進歩を遂げた。2020年に発表した量子ロードマップは、科学とビジネスのために,量子コンピューティングの力を開放する道筋を示し,2023年までのビジョンを共有した。そのロードマップの目標はすべて達成してきている。
 今回のロードマップは、さらに先へ行くものであり、2025年に向けて、スケール、品質、スピードが大きく進化する。インテリジェントなソフトウェアと、個々が接続可能な形にモジュール化した新しいプロセッサーを連携するとともに、量子と古典的なコンピューティングの強みを活用することで、Quantum Advantageに到達することができる」――。

 IBMでは、2022年に433量子ビットの「IBM Osprey」プロセッサーを投入し、2023年には、1121量子ビットの「IBM Condor」プロセッサーを開発する計画を発表している。今回の新たなロードマップでは、それらのロードマップを実現しながら、その先の未来を示したものになる。

⚫︎4000量子ビット以上のプロセッサーを実現する
 IBMが示した新たな量子ロードマップでは、3つのポイントがある。

 最初のポイントは、2025年を目標に、モジュール式のプロセッサーを複数のクラスターによって構築し、4000量子ビット以上のプロセッサーを実現するというものだ。

 これは、量子プロセッサーに関わる3つの領域での進化によって実現したものだ。

 ひとつめは、複数のプロセッサー間で、古典領域での通信と並列処理を行う機能を構築することだ。従来の計算リソースと、サイズを拡張できる量子プロセッサーを組み合わせることで、エラー緩和技術の向上や、インテリジェントなワークロードのオーケストレーションなど、実用的な量子システムに必要とされる技術を備えることになる。

 2つめは、スケーラブルなアーキテクチャーを実現するために、短距離のチップ間接続を導入したことだ。複数のチップを緊密に接続することで、単一で、より大規模なプロセッサーを効率的に形成し、スケーリングの鍵となる「モジュール」化が可能になる。

 そして、3つめが、量子プロセッサー間の量子通信リンクの提供だ。ここでは、クラスターを、より大きな量子システムに接続するための量子通信リンクを提案している。

 これら3つの拡張技術を活用し、IBMではモジュール式量子コンピューティングを導入。ギル氏は、「これによって、量子ロードマップが飛躍的な変化を遂げることになる。2025年には、4158量子ビットを達成し、さらに、最大で数10万量子ビットのスケールにまで対応できることが示せた」とする。

⚫︎エラーの抑止と緩和を向上させるソフトウェアの進化

 2つめのポイントは、量子セントリック・スーパーコンピューティングのファブリック構築である。

 IBMでは、ハードウェアのブレークスルーだけに留まらず、エラーの抑止と緩和を向上させるソフトウェアの進化に向けた取り組みにも余念がない。この取り組みが、アプリケーションに対するノイズの影響を最小限に抑え、量子ソフトウェアの性能を向上させ、誤り訂正を持つ量子システムへの実現につながると位置づけている。

 今回のロードマップでは、この部分において、Qiskit Runtimeの拡張を発表。開発者は量子や古典リソースを、柔軟に、容易に利用できるようになる。

 「Qiskit Runtimeを開発者に提供することで,量子コンピューティングへのアクセスのし易さや利便性,性能などを大幅に向上させられる。開発者は好きな言語を使って,量子コンピューティングの世界に自然に入れる。そのコアになるのがQiskit Runtimeである」と語る。

 Qiskit Runtimeは、2022年初めに、アルゴリズムで使用される一般的な量子ハードウェアクエリを、使いやすいインターフェースにカプセル化するソフトウェアとして発表。2023年には、Qiskit Runtimeを拡張して、開発者が並列化した量子プロセッサー上で実行できるようにし、アプリケーションの高速化が可能になるという。

 「Qiskit Runtimeでは、モジュール式の量子プロセッサーと古典的なインフラストラクチャーを組み合わせ、ユーザーがワークフローに量子計算を簡単に組み込めるプラットフォームを構築し、それによって現代の本質的な課題に取り組むことができる。量子コンピューティングのパラレル化を実現でき、そのスケールをさらに高められる。量子指向のスパコンの時代がやってくる」と語る。

 IBMでは、2023年を目標に、サーバーレスによるアプローチを採用することで、Qiskit Runtimeをより柔軟に活用できる環境の実現を目指している。またこれだけでなく、古典リソースと量子リソースを、インテリジェントにトレードオフして切り替えを行い、量子セントリック・スーパーコンピューティングのファブリックを形成することができるようになるという。

 「スピードと品質に妥協することなく、拡張が可能な能力であり、量子コンピュータを中心としたスーパーコンピュータの基盤を構築することができる」とする。

 また、IBMでは、拡張版量子ロードマップで示された新しいシステムが、IBM Quantum System Twoで稼働するように設計されており、このプロトタイプが、2023年に稼働する予定であることも示している。

⚫︎将来の復号リスクなどを見据えた量子の安全性の強化

 そして3つめのポイントが、量子の安全性の強化だ。

 IBMでは、「サイバー・レジリエンシーを新たなレベルへ導き、量子コンピュータの進歩によって想定される今後の脅威から、データを保護するためのコミットメントを含んだものになる」と位置づける。

 実は、現時点では復号化できないセキュリティー性の高いデータでも、量子技術の進歩で、数年後には復号できてしまう可能性が指摘されている。そのため、いまから解読不能な暗号データをあらかじめ収集し、数年後に量子コンピュータによってそれを復号化し、悪用しようと考えているグループも存在するほどだ。

 IBMでも、「現在、安全に保護されていると考えられるデータでさえ、将来の復号化のために盗まれ収集されると、未来の量子攻撃者に侵害されてしまう可能性があり、大きな懸念材料になっている。過去、現在、未来を問わず、量子安全セキュリティを使用して保護されていないすべてのデータがリスクにさらされることになり、量子安全規格への移行が遅れれば遅れるほど、より多くのデータがリスクにさらされることになる」と警鐘を鳴らす。

 IBMでは、米国国立標準技術研究所(NIST)をはじめとした学術機関や、関連企業との連携を強化する一方、量子力学の時代において顧客の最も貴重なデータを保護するために設計された暗号技術と、コンサルティングの専門知識からなるIBM Quantum Safeポートフォリオを近々発表する予定も明らかにした。

 IBM Quantum Safeポートフォリオでは、量子による安全な暗号化に関する知識や、暗号技術が組織にどんな影響を及ぼすのかといったことを理解するための教育を提供。
 さらに、IBM Quantum Safe Scope Garageのワークショップを通じて、IBMコンサルティングが量子を活用した暗号技術を戦略的に活用するためのガイダンスを提供したり、リスク評価と発見を自動化する機能の提供、暗号化すべきデータのインベントリー管理や、サプライチェーン全体に対する依存関係の管理、セキュリティーのポスチャー管理を確立したりする。
 大きな変更を加えることなく、俊敏に多様な暗号方式に切り替えられるアジャイル暗号技術と、量子コンピュータでも解読されない安全な暗号化技術を実装することで、新時代の暗号技術に対応できるとしている。

⚫︎新たな業界を生み出し、既存の技術を変えていくためのロードマップ

 今回の新たなロードマップの発表とともに、ギル氏は、IBMが量子ロードマップを示すことに、大きな意義があることを改めて強調した。
 それを、次のように比喩しながら説明する。
「我々は探検家である。日々刻々と環境は変わり、社会や政治は変化し、それに対応するために、進化する技術を活用しなくてはならない。
 だが、探検はエキサイティングだが、恐ろしくもあり、危険でもある。使える情報も完ぺきではない。ただし、偉大な探検家に共通しているものがある。
 それは、ナビゲーションの重要性を知っていることだ。ナビゲーションはスキルであり、それを活かすためには、データとツールが必要にする。その良い例が地図である。
 しかし、地図にも弱点がある。発見していない場所の地図をどうつくるか、将来の地図をどうやってつくるかという点である。IBMは、毎日、これに挑戦している。その成果が、量子をはじめとする技術ロードマップである。新たな業界を生み出し、既存の技術を変えていくための地図が技術ロードマップであり、その最たる例が量子ロードマップになる」

 IBMリサーチでは、「Atlas」と呼ぶ技術ロードマップを持っている。ここでは、今回発表した量子ロードマップだけでなく、半導体やAI、ハイブリッドクラウド、セキュリティ、システムに関する技術の将来についても指針を示している。

 ギル氏は,「Atlasには、IBMの野心的なロードマップが描かれている。量子と半導体、AIなどの様々な技術が組み合わさって,新たなケイパビリティが生まれ、将来のゴールに向けて、どのような技術を使えばいいのか,なにを組み合わせればいいのかがわかる」とする。

 そして、「技術の将来をマッピングするのは難しいが、重要なことである。戦略的なロードマップを作り、複雑性の海を航海し、潜在的な可能性を開放することが必要である。将来の地図を一緒に作っていこう」と呼びかける。

 IBMが発表した新たな量子ロードマップは、量子技術を用いたコンピューティングの規模や品質、スピードの可能性を示したものではあるが、様々なテクノロジーの進化と関連しながら、新たな世界を切り拓くためのひとつの地図にすぎないともいえる。

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