goo何気無い日々が心地よい安寧

何気無い日々が続く様に。生きていく事の大変さがカナン。ある種空気の様な存在になりたいもの。

⚠️ GM作物は食べたくないのに輸入する日本人の身勝手 202212

2022-12-27 21:24:00 | 気になる モノ・コト

GM作物は食べたくないのに輸入する日本人の身勝手さ
 Wedge より 221227     唐木英明


 日本では遺伝子組換え作物(GM)の栽培が法律的には可能だが、反対運動により食用作物は全く栽培していない。
 その一方で、海外から多量のGMを輸入している。一見不合理なことをしているように見えるが、実はそうとも言えないのだ。GMをめぐる世界の複雑な事情を考えてみたい。

⚫︎農家の夢
 GMの商業栽培が1996年に始まってから四半世紀。その間のGMの広がりは驚異的だった。バイテク情報普及会によれば2019年には世界各国の1億9040万ヘクタールの耕地でGMが栽培されている。これはロシアの全耕地とほぼ同じであり、日本の耕地面積433万ヘクタールの44倍だ。

 GMがこれほど広く受け入れられている理由は、農業労働を削減するためだ。
農業の3つの大敵は、雑草と害虫と作物の病気だが、GMはこれらの問題を解決するために開発された。

 雑草の除去は機械化が難しいため多くの人手と時間を要し、農業経営を圧迫する。除草剤耐性品種は、除草剤を散布しても枯れない。だから畑全体に除草剤を散布すると雑草だけが枯れて、作物には何の影響もない。人手も経費も大きく削減され、家族農業が可能になった農家も多い。

 害虫抵抗性品種は、害虫には有毒だが人には無害な成分を含む。高価な殺虫剤が不要になり、農家には大きな経済的利益になった。

 作物の病気対策の例として、ハワイでウイルスによるパパイアの病気が広がり、生産が大きく落ち込んだことがある。この危機を救うためにウイルス抵抗性のGMが開発されて、生産は劇的に回復した。

 現在、世界で栽培されているGM作物の大部分は除草剤耐性品種、害虫抵抗性品種、そして一つの作物にこの2つの性格を持たせたスタック品種の3種類である。

⚫︎環境保護の敵
 第二次世界大戦が終わり、先進国では経済が成長し、生活は豊かになった。しかしその暗い面として化学物質公害が起こり、反公害運動や反化学物質運動が起こった。

 1970年代から環境運動が盛んになり、多くの環境団体が生まれた。それらの多くは寄付金で活動しているが、寄付を集めるために分かりやすい攻撃目標を設定し、実力行使まで行う団体も出てきた。捕鯨船に体当たりして批判された反捕鯨団体はその典型だが、GMは多くの団体の攻撃目標になっている。

 彼らの手法は、GMが危険であるような偽情報を大量に拡散することだが、ネット住民は「いいね」を獲得するために陰謀論などのありえない話を好んで拡散する。GM危険論もまた面白い話として世界に広がった。
 そんな虚偽を真実と勘違いする人が多いことは、トランプやプーチンが発する明らかに事実に反する言動を信じる国民が一定数いることからも理解できる。

 環境団体と一体となって反対運動を進めるのがオーガニックビジネスだ。反GM、反農薬で両者は協力し、反対運動が広がるほどオーガニックの売れ行きが上がり、それが運動資金になる。

 こうしてGM危険論はネット社会では「常識」になり、現実社会では農薬と並んで環境保護の最大のターゲットになった。すると反GMを支持する政治家が出て来る。
 その結果できたので2006年に成立した有機農業推進法で、化学肥料や農薬とGMを使わない農業をめざすものだ。環境保護の観点から化学肥料や農薬の削減は理解できるが、GMを否定する科学的根拠は見当たらない。

 悪いうわさがある食品は買いたくない。本来であれば、消費者がそのような判断をするはずだ。しかし、実際に判断しているのは消費者の意向を先読みすることで売上を図ろうとする小売業者である。

 GMは売れないと判断し、仕入れることはない。環境団体が小売業にGMを販売しないように圧力をかけることもこの動きを加速する。そしてGMが店頭から消える。

 消費者はこれに疑問を持つことはない。すると食品製造業者はGMを原材料に使用できない。農家はGMを栽培する理由がなくなる。そんなサイクルが定着して、日本ではGM食用作物の栽培が一切行われていない。

⚫︎世界の対応
 GMをめぐる対立は世界各国で見られる。にもかかわらず、南北アメリカ、中国、インド、南アフリカ、豪州などではGMを栽培している。他方、日本ではまったく栽培せず、欧州連合(EU)諸国ではスペインとポルトガル以外は栽培していない。

 一見、GMを受け入れる国と受け入れない国があるのだが、実はそうではない。世界人口を養うのは小麦と米だが、この2大主要穀物にGMはない。

 GMの大きなメリットを考えれば、小麦と米のGMを真っ先に作るべきなのだが、それは断念されたのだ。その理由は、世界のどの国でもGMは食用として受け入れられないという判断があったからである。


(筆者作成) 写真を拡大

 最近、アルゼンチンでは乾燥耐性のGM小麦の栽培が認可になった。しかし最大の輸入国であるブラジルがこのGM小麦を受け入れない限り、栽培に踏み切れないという。
 売れなければ栽培する意味がないのだから、当然の結果だ。

 それでいくつかの国でトウモロコシと大豆のGMを栽培しているのはなぜだろうか。
それはその用途が食用油と家畜飼料であり、直接食用になる量は少ないからだ。インドと中国は世界5位と7位のGM大国だが、栽培しているGMのほとんどが綿である。

 ということで、世界は直接食用にならないGMだけを栽培している。それでは日本はどう対応しているのだろうか。

 日本が輸入する穀物は年間3000万トンだが、その半分以上は大豆とトウモロコシのGMである。栽培はしないが、輸入はするという一見おかしな対応をしているのは日本だけでなく、EU諸国も同じである。
 結局、世界中の人は、直接食用になるGMは拒否するが、食用油と家畜飼料のGMは許容範囲という判断をしているのだ。

⚫︎日本の事情
 日本が海外と違うのは、かなりの量の大豆を豆腐や納豆などの形で食用にすることだ。
そしてこれらの食品の原材料としてGMを使うことを消費者は、あるいは小売業者は、嫌っている。そこで行われているのがIPハンドリングである。

 これは大豆やトウモロコシを米国から輸入する際に、生産から輸送、販売のすべての段階において、非GMだけを分別して管理する仕組みである。
 こうして輸入された非GMは「遺伝子組換えではない」あるいは「分別生産流通管理済」などの表示ができる。世界的に見ると大豆を食用にする国は少なく、これは日本の特徴と言える。

 それでは日本でGMの国内栽培ができない理由はなんだろうか。国内で栽培される大豆とトウモロコシの大部分は食用であり、それらはすべて非GMである。そして非GMは一種のブランドになっている。

 もし日本のどこかでGMを栽培すると、非GMと分別するために全国でIPハンドリングを行うことになり、大変な経費が掛かる。それだけでなく、GMを栽培した地域は風評が起こり、農作物の価格は急落するかもしれない。多くの農家や農協がそのような懸念を持ち、一部の農家がGM栽培を望んでも周囲がこれを抑え込んでいるのだ。

 そんな日本で、GM花卉である青いカーネーションと青いバラだけは商業栽培している。またインシュリンを始め多くのGM医薬品が治療に使用されている。多くの人はGMを全否定するのではなく、食品にすることは嫌うが、それ以外の有益なものなら受け入れている事実がある。

⚫︎GM推進運動に何が求められるか
 筆者自身、この20年近くGMの普及と国内栽培の実現を目指して努力した。やってきたことは、GMが安全であること、農薬の使用量を減らすなど環境にやさしいこと、農家の経営にプラスになること、そして作物の生産量を増やすことで食料の安定供給に役に立つことなどを訴えることだった。

 しかし、GMに不安を持つ消費者は、自分だけでなく子どもに食べさせたくないと思っている。だから環境問題や食料安定供給問題を持ち出されても全く心に響かない。

 農家の経営にプラスになるということは、農家だけが利益を得て、消費者はリスクだけを負わされているという不公平感から反発される。
 GMの安全性とメリットを理解してもらうことは重要だが、それはGMの受け入れにはほとんどつながらなかった。それではどのような方法があるのだろうか。

 まずは直接食用になる米と小麦にはGMがないこと、食用の大豆とトウモロコシは非GMを分別して輸入し、表示していること、すなわち嫌な人は食べなくてもいいという選択の自由が確立していることを十分に伝えることだ。

 筆者はこの事実を全く評価しなかった。小麦や米のGMがないことや非GMを分別して輸入することは不合理と思ったからだ。
 しかしいくら批判しても現実は変わらない。そうであれば、事実を受け入れるところから再出発する必要があると考え直した。

⚫︎鍵は消費者の支持
 再出発の第一歩は最終目標の設定である。これまで通り、GMの国内栽培の実現を目標にするのであれば、実現を阻む多くの要因、例えば地域の同意、販売経路の確立、IPハンドリングの実施などについて、具体的な解決策を示す必要がある。
 まただれが何のために国内栽培を望み、だれがどのような理由で反対しているのか、肝心の農家はどのように考えているのかについても、十分な検討が必要だ。

 栽培するのであれば大豆とトウモロコシになるのだろうが、その用途は食用油と家畜飼料だ。それでは世界的な価格競争に勝てる見込みはなく、あえて栽培を始めようとする農家はないだろう。

 国内栽培を可能にするただ一つの方法は、消費者が喜んで受け入れるGMを開発することだ。たとえば、体内でビタミンAに変化するベータカロテンを作り出すゴールデンライスの研究がフィリピンを中心に進んでいる。
 ビタミンA欠乏症のため失明など重大な健康被害に苦しんでいるが、高価なビタミン剤は購入できない途上国の人にとっては大きな福音になるため、商業栽培が計画されている。

 これまでのGMは農家の利益だったのだが、ゴールデンライスのように消費者が利益を実感できるようなGMを作り出すことが次の大きな課題である。

 日本で期待されていたのが花粉症対策になるアレルギー緩和米だが、開発から10年以上たっても実用化していない。その理由はGMを栽培しなくても医薬品があるという事実である。

 消費者が反対から賛成に回るGMとは何か。それは食用なのか。青いバラに続くGM国内栽培の拡大はその答えにかかっている。

 最後に、これだけ大きな問題を解決するためには国が確固たる方針を作り、それに沿って施策を推進することが必要である。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 🚶‍♀️…宇治川高架橋…槙島…宇治🏣…🥐... | トップ | ⚠️ 《日本はなぜ没落したか?》匿名の学者集団「グループ19... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿