テレビの報道番組を見ていましたら、殺人事件の誤認逮捕により20年近くも拘束されていた方の、解放されてから数ヶ月経った一人暮らしをされている現在の模様が放映されていました。
彼が一人で街の飲食店に入り、ラーメンをすする姿を見て、心からの喜びをラーメンに感じている姿に、私は胸を打つものを感じました。
これほど美味しそうに一杯のラーメンを食べる姿は、演技では出来ません。彼の心が喜んでいるのが、画面を通して分かりました。刑務所では湯気の出ている麺類などは、出されないのでしょう。20年近い禁欲生活は、一杯のラーメンをも最高の御馳走にさせました。人間が食べ物と喜んで一体化する姿は、本当に美しいです。
神道では、神事の後に直会(なおらい)が行なわれます。
直会とは、神事の最後に参加した全員で、神様に供えられた御酒と食べ物を食する行事です。
一般には、神事が終わった後の打ち上げの食事会と誤解されている面がありますが、本当は神事が継続しており、最後の神人合体を成す重要な「締めの神事」なのです。
だから神事だけに参加をして直会を遠慮すれば、その人の神事参加は不成立とも言えます。
神前に供えられて神様の神気が降りた食べ物を、口から体内に入れる事により、神人合一を成すとします。
私は女性が家庭の神官であり、女性が神祭りをすれば良いと勧める理由の1つには、この直会の観点からの訳も在ります。
神棚の御世話を行なう女性が作る料理を、家族に食べさせる行為には、1つの直会に通じるものが在ると思うからです。
一人暮らしの男性も、自宅で神祭りをしながら自分で食事を作り食せば、やはり直会に成ります。
直会とは読む字のごとく、神様に直接に会う、接する、事です。
私たちの毎回の食事を「神事」と考えて、ゆっくり食す事が大事です。食事の場に「笑い」が有ればなお良いです。
神話においても、世の中の犯罪に傷付いて、洞窟に「引き篭もる」天照太御神を表の世界に連れ出したのは、楽しい食事の席と「笑い声」だったと明記されております。
誤認逮捕された人物が食事後に公園に行きますと、TVカメラの珍しさもあり、子供たちに囲まれていました。
子供たちに囲まれている時の彼の嬉しそうな無垢な笑顔には、良寛の様な雰囲気が在りました。
彼は一人暮らしを始めて一番に辛い事は、他人との会話が無い事だと漏らしました。嫌で辛い刑務所には、仲間同士の会話と触れ合いが、それなりに在ったのでしょう。
今、辛い環境で暮らしている人々も、もしかしたら有り難い事が、まだまだ隠れているのかも知れません。
気付く事が出来さえすれば、幸福に成れます。
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