伊勢のタクシーの運転手さんの話

読者が伊勢神宮へ新年の参拝に行かれた時のタクシーの運転手さんとの会話。

タクシーの運転手さん：
「伊勢神宮に来れる人って人生うまく行ってる人なんだよね。誰もが来れるわけじゃないよ。
伊勢の近くに住んでいても、お金だけあっても、人は時間に追われていたり、家族に病人や介護があったり、小さいこどもが居たら神宮には来れないしね。
もし自分に深刻な願い事があれば、ここ伊勢神宮ではなくて癌などに効果がある御利益神社に行ってしまい、こっちには来ないもんなんだよ。

人生が本当に恵まれている人しか伊勢神宮には来れないんだよ。
それも生涯に一度とかでも来れたら幸せなほーなのに、お姉さんは御白石持ち行事も来て、遷宮の時も来てるって、そりゃあ有り得ないくらいのコトだよ～。日本人で何人いるんだろうか？
姉さんはどこの県？　何、OO県！そりゃ、そんな遠い県では姉さん一人だけじゃないのかな？毎年来れる人なんてさ。
もう顔覚えたからさー、また来たらこのタクシーに乗ってよ。いつもあそこに停めてるからさー」

（感想）
最後にキッチリと営業トークをしているところが憎い運転手さんです、笑。
でも確かに伊勢神宮には、何拍子も揃わないと来られません。
伊勢神宮は神様に願掛け（眼欠け）を行う神社ではありません。自分なりの感謝を「奉納する」場所です。

苦労した修行僧・西行法師が伊勢神宮内宮の五十鈴川の対岸から詠んだ
「何事のおわしますをば知らねども 　かたじけなさに涙こぼるる」
という有名な歌があります。
伊勢神宮の長い歴史には、一般人や僧侶の参拝が禁止されていた期間も長くあるのです。五十鈴川のこちら側（外界）にあります、大鳥居の外側から一般人も僧侶も参拝していたのです。
今では五十鈴川をキャッキャと簡単に渡っていますが、これも有り難いことなのです。
生きている間は誰もが今は五十鈴川を渡れますが、死にますとまず無理です。アノ世のほうが今でも厳格です。

時代を遡るほど伊勢神宮は、天皇の皇女を神懸りの中心として置き、非常に実践的で高度な秘教的な神事を遂行する場所でした。
いまだに八咫の鏡（ヤタノカガミ）の三種の神器や、心御柱（しんのみはしら）というヒノキのヨリシロに関することは秘密にされています。
皆さんが思われる以上に、伊勢神宮は非常に霊的であり実践的なホンモノの場所なのです。

江戸時代は一生に一度、伊勢神宮に何とか参拝することが日本人の夢であり大冒険でした。旅費が足りず参拝旅行の途中で各地で働きながら、１年も掛けて参拝した人もいたのです。
江戸期の神人である黒住宗忠（くろずみ・むねただ）氏にしても、旅行のための借金をして、途中で盗賊にも遭い、命懸けで伊勢神宮に生涯で６回も参拝されたことは、当時では稀有なことでした。
まず一般人は藩を出ることも関所があり簡単には許されず、伊勢神宮参拝だということで特別に許可をされていたのです。

伊勢神宮ほど、今でも精霊が多い神社は他に無いです。これは神様への「感謝の奉納」をいまだに頑なに守るからです。
しかし、伊勢神宮に参拝出来ない人も問題はありません。伊勢神宮は日本のすべての氏神神社の親神にあたります。
だから心ある人だけでも、地域の氏神（家から近い神社）に感謝の奉納をして生きましょう。これが伊勢神宮への参拝と繋がるからです。

生かして頂いて　ありがとう御座位ます

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