日本福音ルーテル札幌教会 札幌礼拝堂

日本福音ルーテル札幌教会 札幌礼拝堂の最新情報です。

教会学校 午前9時より 主日礼拝 午前10時半より

Q.O.Lの問題~memento mori(死を覚えよ)10

2009年06月30日 | 札幌礼拝堂

                   札幌教会月報 kairos 第22号(5月31日発行)掲載の

                               重富克彦牧師による祈りのエッセイ

         「主は羊飼い、わたしには何も欠けることがない。」    詩篇23:1

 Quality of  Life (略してQ.O.L)。何と訳すればいいのだろうか。「生活の質」

それも「生命の質」、いやその両方を含めて「生の質」とするのが適切だろうか。

わたしが入院していたのは頭頚科だが、これは多分がんセンター独特の専科では

ないかと思う。脳の下から喉にかけての部分を診る。大きく上咽頭、中咽頭、下咽

頭と分けられて、わたしは中咽頭だったが、入院患者には下咽頭をやられた人が

多かった。下咽頭の場合、治療に当たって声帯へのダメージは避けがたい。

 2週間あまりベットを隣り合わせた人は、いったん声帯を取らずに治療を終えたが

2年半後に再発。余命1年半といわれて、声帯ごとの摘出手術を決断した人だっ

た。手術の前日、看護婦さんに「泣こごたる」(泣きたいよ)と漏らしていたのが、

痛々しかった。年齢は68歳。自営業。妻に先立たれ、すでに結婚している息子が

一人。父の身を案じてのことか、これから自分の家族に降りかかってくる「父」とい

う重荷に戸惑ってのことか、手術の日の息子は収支無口で不機嫌そうだった。

 部屋は違ったが、私とほぼ同時期に入院した一人は、老後をゆっくり過ごそうと、

菓子店をたたんだ矢先、食道の付け根とリンパに癌が発見されたという75歳の男

性。彼も手術となれば声帯保存は困難。しかし彼は「手術して命永らえるよりも、

成り行きに任せたい」と放射線と抗癌剤ですませることを選び、リンパの転移部分

にさえメスを入れずにすまそうと腹を決めていた。

 患者の入れ替わりは激しい。退院する数日前には、私の隣と斜め前に、どちらも

80前後の人品卑しからぬ紳士が2人、他の部屋から移ってきた。2人とも声帯を切

除していて、白板でコミュニケーションをとっていた。

 声帯を切除すると言っても、ただ声が出なくなるだけのことではない。気管孔を喉

の付け根の部分から出し、そこで呼吸や発声もすることになる。しかしその孔は自

然に塞がるので、繰り返し手術が必要だという。嚥下力も落ち、誤嚥から肺炎とい

うコースをたどるのも珍しくないという。実際、隣のベットの人は肺炎を起こし、かな

りの高熱を出した。

 けれども彼は、移って来たばかりのとき、付き添いの奥さんに、「僕は幸せ者だ」

と白板に書いて感謝の意を伝えていた。奥さんがそれを読み、「そうよ」と答えたの

がカーテン越しに聞こえた。夫婦とはいいものだ。

 もし自分だったら、どのような選択をするだろうかと考えた。Q.O.Lとは何だろう

か。声帯を奪われれば、生活は一変する。「キリストの語り部」として生きてきた自

分が、突然その道を絶たれる。老いていく「男やもめ」の自分に声を奪われてどん

な生活が出来るのか想像するだに恐ろしい。それによって、どれほどの延命が出

るのか。半年か、1年か、2年か、5年か。

 では、声帯は切除しないことを選択した場合、それは聾唖者の方や、声帯を切除

して懸命に生きている人たちへの否定になるのだろうか。生活に障害が出るとして

も、「生の質」が落ちるとは一概に言えない。外なる自己に障害があっても、内なる

自己を高めることはできる。そういう生き方もある。

 ロックシンガーだった忌野清四郎は、最後まで声帯の保存にこだわり、手術や

途中からは抗癌剤治療もだんねんして代替治療に切り替えたが、発病後3年足ら

ずのうちに58歳という若さで死んだ。彼は声帯を失ってでも延命をはかるべきだっ

たのだろうか。いや、多くの人は、彼の選択に納得しているだろう。

 Q.O.Lに絶対はないのが真実ではないだろうか。人は自ら選ぶところのものとな

る。選んだ自分が自分である。そこでそれぞれの十字架を引き受け、精一杯生き

る自分が、自分にとっての最高のQ.O.Lとなる。少しでも長く生きることを選び、そ

れに伴う困難を雄々しく引き受けるのも一つの生き方。延命よりも、残された命の

中で「日々の質」を充実させようとするのも一つの生き方。あるいは代替療法や実

験的な治療の道を模索し、自分を研究途上の臨床例(例えば今後有望視されてい

るペプチドワクチンによる免疫療法など)として提供するのも一つの生き方。遅か

れ早かれ死はやってくる。Q.O.Lということでは、いずれも等価値なのではないか。

 神の前に絶対的な道はない。どの道も命をかけ、どの道も重荷を負う。それぞれ

の道にそれぞれの高いQ.O.Lがあると言ってよいはずである。

 札幌礼拝堂の「聖書の学び」のとき、このテーマが話題となった。ひとりの婦人が

「それぞれが真剣に選んだ道を神さまは祝して下さるのだと思う」と言った。わたし

もそう思う。                   


6月28日の礼拝案内

2009年06月26日 | 札幌礼拝堂

聖霊降臨後第4主日

説 教    「人を生かす掟」       岡田 薫 牧師

聖 書    旧約聖書 「イザヤ書」  58章11~14節

        新約聖書 「コリントの信徒への手紙Ⅱ」  5章1~10節

               「マルコによる福音書」      3章1~12節


7月4日(土)コンサートを開きます。

2009年06月21日 | 札幌礼拝堂

    ♪ ばら窓コンサートのお知らせ ♪

       Photo_2

札幌礼拝堂で、7月4日(土)コンサートを開きます。


 プログラム
 星野富弘の詩による歌曲集より
 「二番目に言いたいこと」
 「木のように」     他


 ソプラノ 小貫多喜子
 ピアノ  明楽みゆき


 13:30開場、14:00開演


 入場チケット500円(小学生以下は無料)です。

 どなたでもチケットを購入できます。


 残席が少なくなっています。チケット希望の方は、

 重富牧師 電話011-561-9516

       メール sapporo☆jelc.or.jp(☆を@にして下さい)

 まで、ご連絡ください。


ご来場を、心よりお待ちしています。



詳しい情報は下の「続きを読む」をクリックしてください。

演奏者のプロフィール ♪

小貫多喜子(ソプラノ)
北星学園女子高等学校音楽科卒業。武蔵野音楽大学音楽学部声楽学科卒業。
卒業演奏会出演。同大学大学院音楽研究科声楽専攻修了。在学中、大学オペラ本公演モーツアルト「ドン・ジョバンニ」のツェルリーナ役でオペラデビュー。在学中より演奏活動を行い、卒業後も東京中心に活動を続ける。また、合唱団や個人指導を行う。
今までにオペラ、合唱ソロ、ソロ・アンサンブルコンサート、施設訪問コンサート等多数。ジャンル問わず幅広い音楽に積極的に取り組んでいる。2000年より札幌を拠点とし、音楽教室主宰、高校音楽科や専門学校、大学講師を経て、各種コンサートを行い活動の場を広げている。2007年のさっぽろオペラ祭では、チマローザ「秘密の結婚」にフィダルマ役で好評を博した。2008年のさっぽろオペラ祭12月公演では、モーツァルト「フィガロの結婚」にケルビーノ役で出演。
井出祐子、故・
田生次郎、古賀和子の各氏に師事。札幌オペラスタジオ、星音会、G・むさしの、全国大学音楽教育学会。


明楽みゆき(ピアノ)
京都市出身。大阪音楽大学卒業。同専攻科修了。同大学院歌曲研究室、専属伴奏者。作曲家松本民之助、嵐野英彦新作発表会専属伴奏者。大阪にて中田喜直氏を迎え、作品研究会を主宰。V・マルグリス氏(独・フライブルグ音楽大学)のもとでアーティストデュプロマを取得。ソロを始め数多くのオーケストラとの共演やアンサンブル、音楽祭に出演。美術作家とのコラボレーションシリーズ、《音と言葉の絆プロジェクト》、時計台ニューイヤーシリーズなど多彩な活動を展開中。チェンバロにおいてソロ、ルネッサンス・バロック歌曲などの通奏低音奏者としても活躍。古楽研究会“Origo et practica”に所属。2006年秋、ベルギーにてコンサート。2009年1月10日、北海道大学博物館主催・市民セミナーにて『J.S.バッハと同時代の音楽家たち~1700~1750年の音楽模様』と題し、ポプラチェンバロを使いレクチャーとコンサート。


プログラムの詳細 ♪

~星野富弘の詩による歌曲集より~    作曲:なかにし あかね
「二番目に言いたいこと」
♪ いつだったか
♪ 秋のあじさい
♪ 山に行こう
♪ よろこびが集ったよりも
♪ いちじくの木の下
♪ 今日もひとつ
♪ 二番目に言いたいこと


「木のように」
♪ 今日は朝から雨
♪ のろくても
♪ 木の実がまるい
♪ 木のように
♪ 椿


~バッハ カンタータより~           J.S.バッハ
♪ 主よ、人の望みの喜びよ


~オン ブラ マイフ~                          G.F.ヘンデル


「ばら窓」とは ♪
ゴシック建築において、ステンドグラスで作られた円形の窓。この日本福音ルーテル札幌教会札幌礼拝堂では昨年11月、2階の円形窓にステンドグラスが奉献されました。このステンドグラスは、ルーテル教会のシンボルであり、宗教改革を行ったマルティン・ルターの家の紋章を、デザイン化したものです。このページ上の写真です。


コンサート会場の紹介 ♪

日本福音ルーテル札幌教会札幌礼拝堂は、今年3月25日に、景観法に基づく札幌市の重要建造物の第1号に指定されました。また、隣接するめばえ幼稚園も、同建造物第2号に指定されています。


創世記の物語から考える~礼拝案内(6月21日)

2009年06月15日 | 札幌礼拝堂

   創世記の、天地創造の物語は、人間と、他の動物や植物や、さらには広大な

宙との関係を考えるにあたって、多くの示唆に富んでいます。その一つに、創造

の順序があります。神さまは、天地を造り、植物や動物を造られたあと、最後に人

間を造られました。これは、人間が地球環境を汚染してとても住みづらくなってきて

いる現代にこそ、もう一度謙虚に受け止めなければいけないことです。何でも人間

が一番先と思ってきた結果が、このような状態を生み出したのですから。

  もう一つ大切な示唆として、人間は、土から造られたもので、神の息を吹き入れ

られて、生きるものになったと言われていることです。土に過ぎないものが、神の

息、すなわち聖霊をいただいて、人間となったのです。 ここでは、土に過ぎないと

いう人間の低さ、もろさ、弱さへの洞察があると同時に、聖霊をいただいて、霊的

存在として神さまに生かされている人間の尊さが示唆されています。この両面を

新緑の美しい季節に、子どもたちにも感じとっていただきたいと思っています。

                 札幌礼拝堂の「ルーテル教会学校だより」6月号から重富牧師のメッセージ

6月21日の礼拝案内

   *聖霊降臨後第3主日

説教題   「人間の自由」      重富 克彦牧師

聖 書    旧約聖書 「サムエル記」上         6章1~6節

               「コリントの信徒への手紙二」 4章7~18節

        新約聖書 「マルコによる福音書」     2章23~28節