世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

スピカが主な管理人です。時々留守にしているときは、ほかのものが管理します。コメントは月の裏側をご利用ください。

夢の入り口

2017-05-06 04:24:22 | 月夜の考古学・第3館

これはかのじょの最も初期の作品である。残念ながらほとんど構想のみである。だが埋もれさすのももったいないので、構想のみであるが、紹介する。

舞台はどこかにある深い不思議な森。動物たちが暮らしている。森の真ん中には高い山のような崖がある。

オバミ
尻尾のないキツネ。幼い頃、親に馬鹿にされて、尻尾を食いちぎられたという痛い経験を持つ。それゆえに苦しみ、獲物を狂ったようにむごい殺し方をする。だが自分で殺した獲物を食うことができず、食べ物は妻・マリセに頼っている。森の嫌われ者にして、君臨者。オバミにさからう動物は、この森にはいない。

マリセ
オバミの妻。幼い頃から兄妹のように暮らしてきた。親に噛まれて傷ついたオバミを放っておくことができず、妻として寄り添っている美しい雌ギツネ。獲物をむごく殺すがそれを食うことができないオバミのために、獲物をとって養っている。だがオバミは決してマリセを愛そうとしない。不愛想に無視するばかり。それどころか痛く攻撃してくることもある。それでもマリセは離れられない。その仕打ちがあまりにつらくて離れようとすると、オバミが絶望的に寒い目をするからだ。

スリヤ
マリセに恋をする若い雄ギツネ。オバミを恐れながらも、押さえきれない思いをたびたびマリセに訴える。オバミの仕打ちに苦しむマリセは、結局このスリヤの思いに負けて、オバミを裏切ってしまう。そのせいでオバミは狂い、森の真ん中の高い崖の上から落ちて死ぬ。マリセは悔いるが、スリヤの説得に従い、スリヤとともに生きていくことを決意する。

モースグ
森の長老にして物知りのフクロウ。もうすぐ死ぬからモースグというらしい。主人公のうさぎピロンに、森での生き方を教える。危機にあうピロンをたびたび助ける。ピロンがなぜ森に来ることができたのか、その秘密を知っているらしい。

チガロ
変な動物。何かの動物の皮をかぶって自分の姿を隠している。一応うさぎだと自分では言っているが、実は違うらしい。ほかのうさぎを操って、森の強権支配者オバミに対抗しようとしているらしい。頭はいい。最後にその正体が、実に醜いイタチであることがわかる。イタチに見えないほど醜くなってしまったので、弱いうさぎばかり相手にしていたのだ。

ソクズ
チガロの手下。うさぎ。弱いものには支配的にふるまい、強いものにはへつらうやつ。チガロの前ではおとなしくして、パシリみたいなこともやるが、影ではかなり軽蔑している。オバミに殺されるのが嫌でチガロに従っているのだが、結局はオバミに殺される。

チコノ
ソクズの仲間。めすのうさぎ。世間知らずで頭が弱く、チガロにいいように使われているらしい。

ココリ
森の狂いうさぎ。めす。年中毛が白く、月夜になると、森の一番高い崖の上で踊る。月を見ると踊らずにいられないという。うさぎは天敵から逃れるためには、常に隠れていなければならないのに、そんな約束を自らやぶって、森で一番目立つところで平気で踊るココリを、うさぎ仲間は気味悪がり、馬鹿にしている。しかし天敵のキツネやイタチたちには、狂いうさぎを食べると呪われるという伝説があり、ココリは食べられずにずっと生きている。若いころに、自分の過ちで子供を失ったことがあるらしい。それが原因で狂ってしまったらしい。

ピロン(広)
人間が変身したうさぎ。若草色をしているが、のどのところに白い模様があり、それを理由に三つ目というあだ名をつけられる。三つ目はいやなうさぎだと言われる。養父のいじめに苦しんでいる少年広(ひろむ)は、家出をしてさまよっているうちに、森にまよいこみ、そこで木にたてかけられた小さな古いドアを見つける。それは夢の入り口だった。そのドアを開けると不思議な森があり、広はそこからうさぎピロンになって森に入っていく。そしてそこで、ふしぎなうさぎココリと出会い、彼女と暮らしていくうちに、愛し愛されることを深く経験していく。月夜に踊る不思議なうさぎココリはかわいらしく素直で、奇妙な自分を素直に受け入れている。その素直さが、親に否定されてひずんでいるピロンの心を導いていく。

最後に、ココリはオバミに食われそうになったピロンを救おうと、オバミの前に飛び込み、オバミに噛まれて死ぬ。絶望したピロンはオバミに向かっていく。今まで獲物を殺したことはあるが、歯向かわれたことは一度もなかったオバミは、それだけでピロンを恐れて逃げていく。そして妻マリセもスリヤの元に走ったのを知ったオバミは、絶望して崖から飛び降りて死ぬ。

狂いうさぎは食べてはいけない、食べると死んでしまうのだ。だからオバミは滅びたのだと、モースグは言った。

オバミが死んで、森には平穏が訪れる。オバミを負かしたことで、ピロンはうさぎ仲間に勇者として敬われることになる。

ピロンは月夜に、崖の上で踊りを踊る。ココリがなぜ、月夜に踊っていたのか、その心を知りたかったのだ。


残念ながら、結末は覚えていない。ピロンは結局人間の世界に帰ってくるのだが、どうやって帰って来るのか、養父とのいさかいは決着するのか、そこらへんは未解決のままである。






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