ヴァレンティン・セーロフ
原題「ニコライ二世の肖像」
きつい男の絵が続く。画家は本物だが、モデルはとんでもない偽物なのだ。
この紳士的に整った顔の中には、おそろしくちんけなちびがいるのである。その顔は西洋的というより、アジア人種に近い。顔もこんなに長くなく、子供のように小さく丸い。もちろん人生も盗みだ。高い身分の男になりたくて、無理矢理その血筋に生まれてきたのである。本霊が本来生まれるべきところは、もっと田舎のひなびたところだ。
馬鹿なことをして、馬鹿な姿になった自分を、なにもかも改造してまるっきり作り変えてしまったという例なのである。
純粋な盗みではない。本霊の姿を徹底的につぶしている。それでほかのよい男の顔を参考にして、すばらしく整った理想的な男というものに、人間が人間の手で作り変えてしまったという例である。
この所業のせいで、ニコライ二世の霊魂は大変なことになったのだ。自分本来の姿があまりにも痛いことになってしまったのである。嫌なことをして自分を全く作り変えてしまったという愚かな所業の跡が、自分の霊体にくっきり残ってしまったのだ。
それを見れば、だれもが嫌になって逃げるというものに、自分を作り替えてしまったのである。恐ろしい嘘をついた人間だと言うことが、見ればわかるからだ。