「真の信仰を身につける好機はすべてのことが順調に行っている時ではありません。そんな時に信仰を口にするのは誰にでもできることです。暗黒の時に身につけたものこそ本当の信念と言えます。
太陽がさんさんと輝き、何の苦労もなく、前途に何の心配もない生活を送っている時に私は神を信じますと言うのは容易なことです。
しかし、そんな呑気な生活の中での信仰の告白には何の価値もありません。
困難の中にあって怖(お)じけず、いかなる緊張の中にあっても動ぜずに次のように宣言できる人の信念にこそ本当の価値があります───風が吹こうが嵐が狂おうが、世界がいかに混乱し全てが暗黒に包まれ絶望的になろうと、宇宙の全生命を創造し神性を賦与(ふよ)した力は決して自分をお見捨てにならないと信じる。
知識と経験による不動の基盤の上に築いた完璧な信念に安住して、私は絶対に動じない、と。
宇宙の大霊すなわち神の力はあなた方人間を通して流れるのです。
もし人間が確固たる不動の冷静さを保ち得ずに怖じけづいてしまえば、その力は発揮されません。
あなた方一人ひとりが神なのです。
神はあなた方から切り離された何か別の存在ではないのです。
宇宙の大霊というのは何か形のない、遠い宇宙の果てにふわふわと浮いている靄(もや)のような存在ではありません。
人間の内奥に宿された霊的な資質を発揮すればするほど、それだけ宇宙の大霊をこの世に顕現(けんげん)させていることになります。
これはぜひ学んでいただきたい教訓です。
霊が進化するということはそのことを言うのです。
そうやって個性が築かれていくのです。
成長するということはそういうことなのです。
まだまだ地上の人類は、悲しみ、苦しみ、艱難、辛苦が存在することの理由を理解しておりません。
その一つひとつが霊的進化の上で大切な機能を果たしているのです。
ご自分の人生を振り返ってごらんなさい。
最大の危機、最大の困難、お先まっ暗の時期が、より大きな悟りを開く踏み台になっていることを知るはずです。
日向(ひなた)でのんびりと寛(くつろ)ぎ、何の心配も何の気苦労も何の不安もなく、面倒なことが持ち上がりそうになっても自動的に解消されてあなたに何の影響も及ぼさず、足もとに石ころ一つなく、自分でやらねばならないことが何一つ無いような人生を送っていては、向上進化は少しも得られません。
困難に遭遇し、それに正面から立ち向かって自らの力で克服していく中でこそ成長が得られるのです。
知識を広める必要があるのは無知という名の暗闇が生み出す無意味な残虐行為、無駄な苦労を一掃するためです。
自然の摂理に反することをしでかしておいて、それが生み出す結果への対処に無駄なエネルギーを費すという愚かさを無くすために霊的真理の普及が必要なのです。
同じ苦しみにも無くもがなの苦しみがあります。
困難にも無くもがなの困難があります。
が、それも霊的な成長と進化、光明へ向けての歩みにとっての糧(かて)とすることができます。
失敗も災難もみな薬です。
何かを教えてくれます。
結局人間は宇宙という大きな学校の生徒というわけです。
これでよいという段階はけっして来ません。
成長すればするほど、まだまだ開発し磨いていかねばならないものがあることに気づくものだからです」
そうした人生において大切な心掛けとして、シルバーバーチはこれまで繰りかえし注意してきたことを再び説いた。
「絶対に許してならないことは不安の念を心に居座(いす)わらせることです。
取越苦労は魂を朽ちさせ、弱らせ、蝕(むしば)みます。
判断力を鈍らせます。
理性を曇らせます。
事態を明確に見きわめることを妨げます。
いかなる人間も自分で解決できないほどの問題はけっして与えられません。
克服できないほど大きな障害は生じません───内在する神性が発揮されるような心掛けをしておればの話ですが・・・・・・。
地上の人間は、少数の例外を除いて、まだまだ本当の意味で生きているとは言えません。
内在する霊的属性のごくごく一部しか発揮しておりません。
よくよくの危機、よくよくの非常事態において、その霊力が呼び覚まされて勇気と知恵とを与えてくれますが、本来はいつでも引き出せるものです。
病気を治し、迷いの時に指針を与え、悩みの時には指導を与え、疲れた時には力を与え、視野がさえぎられている時には洞察力を与えてくれます。
それを可能にするのはあなた方の心掛け一つにかかっております」