人生で3回目の手術を受けた。
背中の粉瘤を切除してもらったのだ。
粉瘤の歴史は長い。
20~30年くらい前からあった。
右肩甲骨下あたりだ。
最初に見つけた伴侶がギュッと押してみたら、灰色っぽいものがニュルッと出てきたそうだ。
ティッシュに取り出したものを見たが、臭く油っぽいものだった。
それから20~30年だから、ものすごく長い間、背中にしょっていたことになる。
最近、大きくなってきて、おまけに悪臭が漂うようになって来た。
これはもう限界だ。
近くの評判のいい皮膚科に行った。
いつも混雑するという評判だったが、運よく駐車場が空いていた。
受付に入ると、待合室のみんなが一斉にこっちを見る。
それもそのはず、待合室の向きが受付の方を向いていたのだ。
おまけに、テレビ画面が受付の上にあった。
患者が多い。
こりゃあ時間がかかるな・・・と思っていたら、初診だったせいか、意外に早く名前を呼ばれた。
「背中ですね。見せてください」
看護師さんにガバッとTシャツを上げられた。
「はい、はい」
「はい、はい」ってなんだよ?
こんな患者よく来るってこと?
「こっちの椅子でお待ちください」
座ろうとしたらそこはちがっていて、外のベンチに追い出された。
「○○さん~」
診察室に入ったら、先生がいた。
なんだか少し枯れかかった先生だった。
「背中を見せてください」
クルッと振り返って背中を見せたら、即、「粉瘤ですね!」と言われた。
即答だった。
見ただけで分かるのか!?
最初に見た看護師さんの「はい、はい」がよく分かった。
「切除します!」
先生は小さな紙に絵を描きながら、二つの方法を説明した。
「ゴッソリ取る方法と穴をあけて抜き取る方法です」
ワタクシは抜き取る方法に該当したようだ。
「うつぶせに寝てください」
またTシャツを上げられて、ベッドの上で麻酔をうたれた。
「10分ほど時間がかかります」
「楽にしてください」
うつぶせのままのワタクシを案じたのか、看護師さんが声をかけてくれた。
「は~い」
10分がたった。
「切りますね」
何にも感覚がない。
触っている感覚はあるが、痛くも痒くもない。
途中、「見ますか?」と聞かれた。
「見ます!」とこたえたら、粉瘤の中身を見せてくれた。
ピーナツくらいの大きさの物がティッシュに転がっていた。
「袋を取り出します」
なんでも袋状のものが残っているそうで、それをピンセットか何かで引っ張っているのはなんとなく感じた。
先生は何度も、引っ張っていた。
「癒着しているんで・・・」
先生が難儀しているのが分かった。
10分くらいで終わった。
「ありがとうございます!」
ワタクシはこんな時、ていねいにお礼を言うタイプだ。
受付で3110円払った。
三日後にまた来ることになった。
薬局でも何百円か払った。
もう粉瘤はなくなっている。
何十年間も背中にしょっていた瘤は跡形もなくなった。
早く行けばよかったと思った。