散歩に出かけるつもりで外に出たら、斜め向かいの奥さんが後ろ向きで片づけをしていた。
ああ、となりの人が亡くなったことを知っているだろうか?
「〇〇さん!」
・・・
?
聞こえなかったか?
「〇〇さん!」
・・・
あれ?
「〇〇さ~ん!」
「はい?」
やっと振り向いた。
実はその時気づかなかったが、話の途中で〇〇さんが耳が遠くなっていることを知った。
「うちの人の声が大きいからよ」と言っていたが、この人は耳から先に老いたのだろう。
久しぶりに長話をした。
去年の夏、キュウリを大量に持って行って以来か?
〇〇さんは話好きだ。
ポンポン飛躍しながら話が続いていく。
家族のこと、近所のこと、コロナのこと、スマホのこと・・・ポンポンポン・・・
途切れることなく話が続き、30分が一気に過ぎた。
ところで、奥さんはとなりの人が亡くなられたことを知らなかった。
救急車が来ていたことは知っていたが、なんと、わが家で何かあったんだろうと思っていたそうだ。
だから、よその家に救急車を止めるなと言ったんだ!
たぶん、亡くなられたことは2~3軒しか知らないのではないだろうか。
団地あるあるの話だ。
みんなよそから集まって住んでいる団地では、何十年たっても、深い付き合いにはならない。
「それも団地のいいところかも?」
斜め向かいの奥さんはなんと理解のある人だろう。
「そうですねぇ~」
話を合わせるのがうまいワタクシは終始、決して否定することなく、肯定的に話を聞いた。
だが、耳が遠いのは不便だ。
「はぁ?」と言いながら、奥さんがだんだんこっちに近づいてくる。
そのたびにボリュームを上げて、押し戻さなければなかった。
ケッキョク、家に戻って伴侶に話したのは、斜め向かいの奥さんが耳が遠くなったという話だった。
みな老いる!
タガの低いところから先に老いる!
耳老いる人・・・
目老いる人・・・
足老いる人・・・
頭老いる人・・・
ところで、ワタクシは散歩を忘れて家にUターンしていた。
頭老いる?