■政府やメディアが刷り込んだ“消費税の目的”の嘘~“社会保障の充実と安定化”のための増税という謳い文句とは正反対の現実~
論座(朝日新聞)2019年09月20日 斎藤貴男
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019091900001.html
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・全世代型社会保障改革を掲げた新内閣
「新しい社会保障制度のあり方を大胆に構想してまいります」と安倍晋三首相は胸を張った。
9月12日、第4次再改造内閣発足に臨む記者会見。
「全世代型社会保障改革」を新内閣の“旗”に掲げ、その担当を兼務する西村康稔経済再生相(56)を中心に、「70歳までの就労機会の確保や年金受給年齢の選択肢の拡大」などの“改革”を進めるという。
いわゆる年金カット法(年金制度改革法)に基づくマクロ経済スライド方式の強化をはじめ、医療費や介護費用の自己負担比率増大、介護保険制度の利用者制限、生活保護の生活扶助費や住宅扶助費の減額等々、過去数年にわたって重ねられてきた社会保障の縮小あるいは削減に、よりいっそうの大ナタが振るわれていく。
側近の衛藤晟一氏が担当相に起用された「1億総活躍」の国策と合わせれば、権力に近くない人間は死ぬまで働くしかない時代が見えてくる。
ちなみに西村氏は内閣官房副長官だった2018年7月5日夜、安倍首相とその取り巻きたちによるどんちゃん騒ぎの大宴会「赤坂自民亭」の模様を、「いいなあ自民党」のコメントとともにツイートし、問題になった人物だ。
翌日にオウム真理教事件の死刑囚7人の死刑執行が予定され、また中国・四国・九州地方で200人以上の死者を出すことになる西日本大豪雨がすでにその予兆を示していたそのタイミングが、今も記憶に生々しい。
・社会保障の充実と安定化のための増税だったが……
“大胆”な社会保障“改革”の実相も、それを担う人々の資質も、しかし、マスメディアは特に報じも、論じもしなかった。
新閣僚の首相との距離感や、派閥の内幕については過剰なほど詳しい新聞は、国民生活を左右する政策の意図や意味には関心がないらしく、政権側の言い分をおおむねそのまま垂れ流す。
「全天候型社会保障改革」に批判的な報道が皆無だったとまでは言わないが、その場合でも、なぜか、この“改革”と、ある要素との関係だけは、とことん避けて通られているようだ。
「ある要素」とは何か。
消費税増税の問題だ。
来たる10月1日に、消費税率は8%から10%に引き上げられることになっている。
そして、政府とマスメディアはこの間ずっと、“社会保障の充実と安定化”のための増税なのだと謳(うた)い続けてきた。
それが、どうだ。
現実は、まるで正反対の姿にしかなっていないではないか。
・尻すぼみに終わった「老後2000万円問題」
例の「2000万円問題」を、改めて考えてみよう。
さる6月、政府の審議会が公表した報告書に、“今後の日本社会で高齢夫婦が老後を暮らすには、支給される公的年金の他に約2000万円が必要になる”旨が書かれていて、日本中が大騒ぎになった、あの問題だ。
だからどうするべきなのか、という問題提起ではない。
金融庁長官の諮問を受ける「金融審議会」の「市場ワーキンググループ」が、あくまでも金融サービス事業者向けに、だからこういう金融商品を作って売ったら儲かりまっせ、と“啓蒙”するのが狙いの文書であり、2000万円うんぬんは、その前提となるデータとして提示されていたのにすぎない。
目的はどうあれ、それでも多くの国民は反発しかけた。
官邸前の抗議集会や、デモがあった。野党も結束して追及した……かに見えた。
だが、やがて尻すぼみになり、7月の参院選でも、さしたる争点にはならなかった。
原因は明確でない。
野党のだらしなさ、権力になびく一方のマスメディアといろいろあるが、それだけでは説明できない。
しかし、そうなった決定的な背景が、私にはわかるような気がする。
・消費税率は上がれど悪化する社会保障
1988年のことである。
ある不動産会社が、自社商品の宣伝本を出版した。
題して『パートナーシップ』。
一言に要約すると、こんな内容だった。
日本銀行の試算によれば、現役を退いた高齢夫妻の老後は公的年金だけでは賄えず、平均でざっと1500万円の貯蓄が必要です。
だから皆さん、当社のワンルームマンションに投資して、安心な老後に備えましょう。
時はまさに金ピカ・バブル経済の真っ盛り。
週刊誌の記者だった私は、その本を地上げ絡みのネタ元にさせてもらっていた同社幹部にプレゼントされ、思うところあって、大切に保管してきた。
消費税が導入されたのは翌89年。
“高齢化社会への対応”が前面に打ち出され、紆余曲折を経てのスタートだったが、その後も同じ理由が繰り返し掲げられ、税率が3から5、8%へと引き上げられて、ついには2桁の大台に乗ろうとしている。
考えてももらいたい。
いくらなんでも、おかしすぎはしないか。
消費税の導入前は1500万円の不足。
税率10%を目前にした現在は2000万円の不足。
何も変わっていない、どころか、事態はかえって悪化している。
いったい何のための消費税だったのか。
・消費税は大企業や富裕層の減税の財源
……などと吠えてみせるのもカマトトではある。
財務省の資料「法人税率の推移」によれば、88年度に42%だった法人税の基本税率は、翌年に消費税が導入されてからは減税に次ぐ減税で、現在は半減に近い23・2%だ。
また、これも財務省のデータ「一般会計税収の推移」は、税収全体に占める税目別の割合が、消費税と法人税がほぼ反比例している様子を示している。
この間には所得税の累進性もかなり緩んだ。
99年からの8年間は累進の上限が年間所得1800万円超の37%。
少し大きな会社の部長さんも、大財閥のオーナーも、同じ税率だった。
財政健全化の財源にすると強調された局面もしばしばだった。
けれども、この点にしたところで、消費税が導入されて以降も、財政赤字は膨らむ一方であり続けてきた。
税収が増えると、増えた分だけ“土建屋政治”や“軍拡”に勤(いそ)しんできたからに他ならない。
要するに、消費税は社会保障の充実や安定化、財政健全化のために導入されたわけでも、増税されてきたわけでもない。
敢えて単純化してしまえば、それはただ、大企業や富裕層の減税の財源になった。
すなわち、この間に政府やマスメディアが国民に刷り込んできた“消費税の目的”なるものは、何もかも嘘(うそ)だったと断じて差し支えないのである。
・自己責任論が強調される社会保障
もっとも、ことの善悪の一切をさて置く限り、とりわけ近年における状況は、いわば必然的な結果でもあった。
民主党政権と自民、公明両党との「3党合意」で、国策「社会保障と税の一体改革」の目玉としての消費税増税が決められた2012年の冬、「社会保障制度改革推進法」が可決・成立している。
その第2条の1が、社会保障を、こう定義していた。
――自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。
一般の認識とは、天と地ほどもかけ離れてはいないだろうか。
社会保障と言えば、普通は社会保険や公的扶助、公衆衛生、医療、社会福祉などの概念をまとめたものと理解されている。
1950年に当時の「社会保障審議会」が打ち出した「狭義の社会保障」の定義が、多くの人々には、なお生き続けているのだ。
いずれにせよ、今風の表現では「公助」のイメージだ。
「社会保障制度改革推進法」の定義と対比されたい。
そして、消費税率が8%に引き上げられる4カ月前の2013年12月、今度は「推進法」を具体化していくための「社会保障制度改革プログラム法」が可決・成立。同法では社会保障における政府の役割が規定されているのだが、こちらはもっと凄まじい。
――政府は、住民相互の助け合いの重要性を認識し、自助・自立のための環境整備等の推進を図るものとする。
徹底的な自己責任論であり、政府は努力義務しか持たないと定めている。
書籍や雑誌の記事、講演会などの場で、私が幾度も幾度も書き、語り、批判してきたことである。
こう書くと確実に返ってくるのは、“消費税がなければ、社会保障そのものが解体していた”などといった反論だろう。
制度の“持続可能性”を錦の御旗とする政府やマスメディアが近年多用したがるロジックだが、これほどの本末転倒もない。
制度だけが持続しても、国民生活を支えることができない制度なら無意味だ。
「社会保障は国民生活に必優なものであるから、財源が足りなければ、どこからか財源を工面して、社会保障の充実に充てるのが、政治家の仕事ではないか」と、鹿児島大学の伊藤周平教授(社会保障法)は喝破してのけている(『社会保障入門』ちくま新書、2018年)。
生存権を規定した憲法25条を持ち出すまでもなく、消費税は上げるが社会保障の水準は下落の一途、などという“政策”は、本来、許されてよいはずがないのである。
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政府やメディアが刷り込んだ“消費税の目的”の嘘~“社会保障の充実と安定化”のための増税という謳い文句とは正反対の現実~
論座(朝日新聞)2019年09月20日 斎藤貴男
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019091900001.html
■“節税の教祖”が緊急提言「消費税減税の財源はある。断行すべきは消費税のサプライズ減税」
文春オンライン(文藝春秋)富岡幸雄
https://bunshun.jp/articles/-/14678
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消費税については、2019年10月から10%へと税率を上げる決断を下しました。
しかし、この増税は景気対策に逆行しています。
なんとしてもデフレから脱却しなければならないのに、日本経済へ冷水を浴びせるどころか、大打撃を与えてしまう最悪のシナリオです。
いま、なすべきことは「消費税のサプライズ減税」を断行することです。
世間の意表をついて税率を2014年以前の5%に引き下げる。
これによって国民を喜ばせ、消費意欲を喚起して内需を拡大する。
これを日本経済復活への導火線とするべきです。
・消費税減税の財源はある
こう言うと、かならず「財源はどこにあるのだ」と異を唱える層が出現するでしょう。
財源はあります。増税の必要もありません。
これまで寛大な法人税制の様々な恩恵をうけながらも、過去最高となる約446兆4844億円(2017年度)もの内部留保(利益剰余金。金融・保険業を除く)を積み上げている大企業に、「まとも」な納税をしてもらえばいいのです。
いま日本の法人税制は、企業活動のグローバル化にともない、課税逃れもグローバル化したことによって崩壊しかかっています。
国境を超えた企業活動に対して、国単位の税制が追いついていないのです。
また租税特別措置など大企業への優遇措置も目に余るものがあります。
こうした状況を是正し、法人税制を再建することによって、私の試算では約9兆円の増収が期待できます。
この増収を減税の財源とすればよいのです。
・実質的な負担は低い日本の法人税
すると大企業を中心とした財界、多くのメディア、官僚にミスリードされた人たちは、こう叫ぶことでしょう。
「日本の法人税は高い。これ以上、負担を増やすと、ますます企業が海外へ流出して、日本国内の空洞化が進んでしまう」
実際は違います。
高いのは法定税率という数字だけであり、実際の税負担は極めて低いのです。
しかも企業規模が拡大するにつれて負担率は低下しており、名だたる大企業であっても、「極小」と言っても過言ではない額しか納付していないケースもあるのです。
(中略)
・税制のゆがみを正せ
私が「節税」を唱えたのは、国税当局の人間ではありましたが、「税金は取れるだけ取ればいい。多ければ多いほどいい」とは考えていなかったからなのです。
重要なのは、税制の大原則である「公平・中立・簡素」、そして負担能力に応じて納税する「応能負担原理」、これにのっとって税を納め、国と社会に貢献することです。
そのためには大本である税制が大原則から外れることがあってはいけません。
税の現場から大学での研究に転じて以降も、税制はどうあるべきかを生涯のテーマにしてきました。
ところが近年の税制の動向をみると、政治が不当に介入してきたことにより、大原則に反する改定や財源あさりなど異常なことが少なからず見うけられます。
その最たるものが消費税の導入であり、その税率の引き上げです。
それに大企業優遇という不公平も一向に是正されないどころか、安倍政権下では、それに拍車がかかっています。
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“節税の教祖”が緊急提言「消費税減税の財源はある。断行すべきは消費税のサプライズ減税」
文春オンライン(文藝春秋)富岡幸雄
https://bunshun.jp/articles/-/14678
■消費増税で輸出企業と金持ちが得するカラクリ。一方で「庶民の非正規雇用は拡大」
ライブドアニュース 2019年9月10日 週刊女性PRIME
https://news.livedoor.com/article/detail/17060996/
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・増税しても社会保障費が削られるワケ
施政方針演説で「全世代型社会保障制度を築き上げるために、消費税率の引き上げによる安定的な財源がどうしても必要」と、増税の必要性を力説した安倍首相。5%から8%に引き上げた2014年も同様に、増税は社会保障のためとしていた。
「消費税が上がって社会保障が充実するどころか、反対に削減され続けています」
そう指摘するのは鹿児島大学の伊藤周平教授だ。
「8%増税の使い道をみていくと、国民年金の国庫負担財源に回したのが3・2兆円、負担のつけ回しの軽減、つまり借金の穴埋めに使ったのが3・4兆円。社会保障の充実に回されたのは16%だけでした。充実分は大半が子育て支援に回り、医療や介護分野は逆に削られています」
とりわけ介護分野で削減・給付の抑制が目立つ。
「要支援1・2の訪問・通所介護サービスを介護保険の給付からはずし、特別養護老人ホームの入所基準を要介護3以上に厳格化。要介護1・2の生活援助を介護保険からはずすことも検討され始めています。介護保険の利用者負担もすべての利用者について1割から2割に引き上げることが計画されています」
こうした利用者負担や窓口負担の増大により、必要な医療や介護が受けられない人も出てきている。
さらに、社会保険料の負担も増している。
「医療や介護などの社会保険料は、所得の低い人・所得のない人にも負担がかかる。消費税と同じように、弱い立場の人ほど負担が重くなる逆進性が強い点が問題です」
少子高齢化が加速して社会保障費が財政を圧迫しているのだから、負担はしかたがないと消費税を必要悪のようにとらえる人も珍しくない。
だが、それは違うと伊藤教授。
「なぜ社会保障が削られるのか。保育も介護も家族がやればいい、誰でもできると低く見られているからでしょう。その証拠に、国は保育士の配置基準を緩和して、無資格の人にやらせています。介護も同じで、痰の吸引などの医療行為を、研修を受けたヘルパーなどにもやらせています。専門性の軽視が著しい。そもそも社会保障は命にかかわること。必要な予算である以上、優先されるべきで削ってはならないはずです」
一方、消費増税に合わせるかのように行われてきたのが、法人税の減税だ。
「消費税を社会保障の財源にすると、これまで社会保障に充ててきた法人税収や所得税収の部分が浮きます。東日本大震災の復興特別法人税は予定より1年前倒しで'14年に廃止、1・2兆円が減収に。'12年には30%だった法人税が'18年に23・2%にまで引き下げられました。法人実効税率も20%台にまで下げられた。所得税も同じです。かつては最高税率が住民税特例水準あわせて70%でしたが、'15年以降は55%が上限になりました。こうして見ていくと、消費税の増税分は、法人税や所得税の減税による穴埋めに消えたと言えます。そして、逆進性の強い消費税を社会保障の財源としてひもづける限り、貧困や格差に対応するため、この先も消費税の税率を上げ続けなければならないでしょう」
・消費税をアップせずとも財源は作れる
「税金はあるところから取るのが大原則。赤字でも納税義務がある消費税を上げるより、減収に減収を重ねてきた法人税を見直さなくてはなりません。それも、より多くの利益を上げている大企業には高い税率で、小さい企業には少ない税率という累進課税を適用させるのです」
とは、前出の湖東さん。
そうすれば、消費税を廃止しても財源は作れると断言する。
「予算も組んでいるので、いきなり廃止するのは難しい。2度にわたり引き下げたカナダのように、段階的に税率を下げていくべきでしょう。また、法人税を上げるというと、大企業が海外に逃げてしまうのでは? と心配する人がいますが、その心配はいりません。日本の大企業は諸外国と比べて法人税の実際の負担が極めて低い。試験研究費の税額控除や法人株主の受取配当金など、さまざまな特別措置があるからです。 それに大企業のほとんどは上場企業です。日本での上場をやめてまで海外へ行くのか疑問です」(湖東さん、以下同)
消費税廃止と言えば山本太郎代表率いる『れいわ新選組』。
8月の世論調査では支持率を4・3%に伸ばし、共産党と並んだ。
その山本代表が最近、立憲民主党の若手議員らとともに、昨年に消費税を廃止したマレーシアへ視察に出向いて話題を集めている。
「マレーシアで昨年5月、国政選挙がありました。当時92歳だったマハティール元首相の野党連合が公約のトップに、消費税の廃止を掲げたのです。マレーシアの消費税は税率6%で'15年4月に導入、その後は物価が大幅に上がり、国民の不満は大きくなっていました。選挙前、当時の与党は財源がなくなると廃止に反対しましたが、ふたを開けてみれば野党連合の大勝利。マハティール氏は選挙が終わったすぐあと、6月1日に消費税を廃止しました。財源は、中国との合弁で進めていた新幹線などの無駄な公共事業をやめたり、かつての税制を復活させたりして充てたそうです。その結果、景気が向上し、法人税の税収が大幅に上がり個人消費も伸びたといいます。消費税を廃止すると景気がよくなり、法人税や所得税の税収も増える。日本でも同じことが言えると思います」
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消費増税で輸出企業と金持ちが得するカラクリ。一方で「庶民の非正規雇用は拡大」
ライブドアニュース 2019年9月10日 週刊女性PRIME
https://news.livedoor.com/article/detail/17060996/
■経営者、開業医、地主…本物の富裕層が「日本の税金は世界一安い」とこっそり笑う大きな抜け穴の正体
PRESIDENT Online 2022/4/21
https://news.yahoo.co.jp/articles/0d96d1bb9f5910443a18ac5025196f5a72751da6?page=1
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・「日本の富裕層の税金は高い」という大ウソ
「日本の金持ちは世界でもトップレベルの高い税金を払っている」こんな話はよく聞きます。
インターネットでも、「日本の富裕層は世界一高い所得税を払っている」といった意見を目にすることが少なくありません。
しかし、これはまったくのデタラメです。
たしかに、日本の所得税の最高税率は45%で、先進国ではトップクラスです。
これだけ見れば、日本の金持ちはたくさん税金を払っているように見えるかもしれません。
が、日本の所得税にはさまざまな抜け穴があって、名目税率は高いのだけれど、実質的な負担税率は驚くほど安いのです。
むしろ、日本の富裕層は先進国でもっとも税金を払っていないと言えるのです。
日本の富裕層がいかに税金を払っていないかは、アメリカと比較するとわかりやすいでしょう。
富裕層の最高税率だけを見れば、日本は45%、アメリカは37%なので、日本は8ポイントも高くなっています。
しかし、実際に支払われた税額はどうでしょうか。
2021年度予算における日本の所得税収は、わずか18.7兆円に過ぎません。
一方、アメリカの所得税収は、約200兆円です。
なんと日本の所得税収は、アメリカの10分の1以下しかないのです。
日本の経済規模はアメリカの4分の1ですから、明らかに日本の所得税収は少なすぎます。
経済規模を考慮しても、日本の所得税収はアメリカの半分以下と言えるのです。
ほかの先進諸国と比較しても、同様の結果となります。
アメリカ、イギリス、フランスなどは、いずれも所得税の税収がGDPの10%前後です。
が、日本の場合、6%程度しかありません。
ほかの先進国の半分くらいしか所得税収がないのです。
先進国では、所得税収の大半を富裕層が負担する状態になっています。
所得税収が少ないのはすなわち、富裕層の税負担が少なすぎるのです。
いかに、日本の金持ちの税金が抜け穴だらけか、ということです。
・富裕層の大半が恩恵を受けている優遇税制
なぜ税率は高いのに税額は低いのかというと、日本には、配当所得(株式の配当金などの所得)に対する超優遇税制があるからです。
配当所得は、どんなに収入があっても所得税、住民税合わせて一律約20%でいいことになっているのです。
20%というのは、平均的なサラリーマンの税率とほぼ同じです。
これは、配当所得を優遇することで、経済を活性化させようという小泉内閣時代の経済政策によるものでした。
富裕層には、持ち株の配当から収入を得ている者が少なくありません。
富裕層の大半は、この優遇税制の恩恵を受けているのです。
また配当所得者に限らず、「経営者」「開業医」「地主」など富裕層の主たる職業ではだいたい税金の大きな抜け穴が用意されています。
名目通りの高額の税率を払っている富裕層はほとんどいないといっていいのです。
国会に提出された資料でも、日本の実質税負担率は所得が1億円になるまでは税率が上がっていきますが、1億円を超えると急激に税率が下がるというデータがあります。
・大村 大次郎(おおむら・おおじろう)元国税調査官
1960年生まれ。大阪府出身。元国税調査官。国税局、税務署で主に法人税担当調査官として10年間勤務後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。難しい税金問題をわかりやすく解説。執筆活動のほか、ラジオ出演、「マルサ!! 東京国税局査察部」(フジテレビ系列)、「ナサケの女~国税局査察官~」(テレビ朝日系列)などの監修も務める。主な著書に『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中公新書ラクレ)、『ズバリ回答! どんな領収書でも経費で落とす方法』『こんなモノまで! 領収書をストンと経費で落とす抜け道』『脱税の世界史』(すべて宝島社)ほか多数。
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経営者、開業医、地主…本物の富裕層が「日本の税金は世界一安い」とこっそり笑う大きな抜け穴の正体
PRESIDENT Online 2022/4/21
https://news.yahoo.co.jp/articles/0d96d1bb9f5910443a18ac5025196f5a72751da6?page=1
■資産家にとって消費税が「おいしい税制」である理由
Forbes(フォーブス) 2022/04/27
https://forbesjapan.com/articles/detail/44301
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・消費税は公平なようで不公平
年金、国民保健、消費税、所得税に住民税……。
ただ生きているだけでも、お金はかかる。
もちろん産業や生活の基盤となるインフラ設備は欠かせないし、人々が安心して生活するためには社会保障も必要だ。
そのために国民は少しずつその費用を負担し、税金として納める。
疑うべくもない当然の制度として、私たちは税制度を受け入れている。
しかし、小飼氏はそんな税制度には「歪み」があると指摘する。
「消費税は持てる者のある意味『陰謀』がうまくいった結果なんですよね。これは陰謀論というより、お金の仕組みからすると必然なのかもしれませんが。持てる者=金持ちたちの立場からすると、消費税はとてもおいしい税制です。消費税は一見フェアに見えてこれ以上ないほど、アンフェアな税制です。単にアンフェアなだけでなく経済の邪魔もしてしまう。これほど経済の邪魔をする税制は他にありません」
そう話す理由は、「消費」されるものにしか税がかからないという消費税の特徴にある。
お金に余裕がある人ほど、支出の中で株などの金融商品や不動産を買う割合が増えるが、そうした「投資」は「消費」ではないため消費税はかからない。
節税できる上に、うまくいけばその投資はさらにお金を生む。
つまり、金融資産というストックを「持てる者」は「消費」にあてはまらない買い物でさらに資産を増やすことができるわけだ。
・今の税制は貧乏人の負担が大きい
そうは言っても、社会保障の財源確保のためには消費税は仕方がない。
上がり続ける消費税を合理化するそんな論がある。
一方小飼氏は、消費税とは反対に下がり続けた所得税を取り上げ、これを「大嘘」だという。
消費税導入前の時代、所得税の最高税率は75%だった。
これは高収入の人にとって不公平だという声が経団連など財界を中心に起こり、彼らは所得税の累進性を下げようと政権に圧力をかけた。
それ以降、所得税の累進性は少しずつ下げられ、代わりに消費税が導入され、消費税増税が繰り返された。
「今や日本の歳入に占める消費税の割合は、所得税を上回っています。消費税は、所得税よりもはるかに逆進性の高い、つまり貧乏人の負担が大きい税制です。……(中略)日本よりも消費税率の割合が高い国はいくらでもある、北欧などでは消費税率が25%にも達しています。これをもって日本の消費税率はまだまだ低いという人もいますが、この意見はちょっとおかしい。日本の消費税は、税率が『ようやく二桁パーセント』であるにもかかわらず、所得税を抜こうとしているのです。なぜこんな奇妙なことが起こるのかと言えば、税制がきちんと設計されてないからにほかなりません」
現在、所得税は10種類に分けられその種別により課税率も異なるが、それによると給与に対する課税が最大40%以上にもなるのに対して、土地や借地権、建物、株式等の譲渡、株式から得られる配当にかかる税率は最大20数%だ。
ここでも税制の歪みとも言うべきものがある。
「考えてみてください。労働の対価として手に入れた1円と、株式の配当から得られた1円も、本来は同じ1円のはずじゃないですか?1円の所得に対して、税金をかけるのであれば、同じ額の税金をかけるべきでしょう」
(この記事は、小飼弾著『小飼弾の超訳「お金」理論』から編集・引用したものです)
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資産家にとって消費税が「おいしい税制」である理由
Forbes(フォーブス) 2022/04/27
https://forbesjapan.com/articles/detail/44301
■消費税廃止でニッポン復活
・マレーシアはゼロ達成
~消費税を引き下げた国~
日刊ゲンダイ(2019/7/25)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/258985
■消費税は社会保障に 実際は大企業や高額所得者の減税穴埋めに?
~元国税が暴露。「消費税は社会保障のため不可欠」が大ウソな理由~
ライブドアニュース 2018年11月20日
https://news.livedoor.com/article/detail/15620119/
■『消費税が社会保障を破壊する』
著者/編集: 伊藤周平
出版社: KADOKAWA
発売日: 2016年06月08日頃
https://a.r10.to/hadVkt
○内容紹介(「BOOK」データベースより)
社会保障の充実が目的とされる消費税。だが、現実は充実どころか削減が続く。日本の消費税は実は貧困と格差を拡大する欠陥税制なのだ。真実を明らかにしつつ、社会保障改革と税制改革のあるべき姿を提示する。
○目次(「BOOK」データベースより)
序章 悲鳴続出!消費税増税と社会保障削減/第1章 消費税が増税されたのに、なぜ社会保障が削減されているのか?/第2章 少子化対策ー解消されない待機児童、保育料の値上がり、深刻化する子どもの貧困/第3章 医療・介護制度改革ー給付抑制と負担増で、介護離職ゼロどころか激増の危機/第4章 生活保護制度改革と年金制度改革ー遠のく生活の安心、高まる老後の不安/第5章 消費税ーその本質と問題点/第6章 憲法にもとづく公平な税制で、社会保障の充実を!/終章 課題と展望ー対案の実現のために
○著者情報(「BOOK」データベースより)
伊藤周平(イトウシュウヘイ)
1960年山口県生まれ。鹿児島大学法科大学院教授(社会保障法専攻)。東京大学大学院修了。労働省(現厚生労働省)、社会保障研究所(現国立社会保障・人口問題研究所)、法政大学助教授、九州大学大学院助教授を経て、2004年より現職。主な著書に、『介護保険法と権利保障』(法律文化社、日本社会福祉学会学術賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
・楽天ブックス『消費税が社会保障を破壊する』
https://a.r10.to/hadVkt
■『「安倍増税」は日本を壊す―消費税に頼らない道はここに』
発売日: 2019年03月15日頃
著者/編集:垣内亮
出版社:新日本出版社
・楽天ブックス
https://a.r10.to/haQqau
○内容紹介(出版社より)
消費税の10%への増税は、「アベノミクス」との相乗効果で、暮らしと経済を破壊し、社会のあり方まで大きく変える。7兆円の増税に対し、「ポイント還元」などに6兆円使うという「対策」は本末転倒。具体的な根拠と豊富なデータで、消費税に頼らない財政再建と社会保障充実の対案を提示し、増税ストップの力になる。
○内容紹介(「BOOK」データベースより)
「軽減税率」、インボイスなども消費税のしくみから解説。学習会、講師活動、宣伝・対話で生かせる内容が満載。社会保障財源確保、「財政危機」打開の道すじを示し、「財源と言えば消費税」の呪縛を解く。
○目次(「BOOK」データベースより)
第1章 亡国の大増税ー消費税10%が日本の経済と社会を壊す/第2章 消費税と「アベノミクス」が消費大不況を引き起こす/第3章 消費税と「アベノミクス」が格差と貧困を広げる/第4章 混乱と不公平を拡大する「天下の愚策」/第5章 消費税によらずに財源は確保できる/補論1 消費税の仕組みと問題点/補論2 「アベノミクス」がゆがめた財政と金融
○著者情報(「BOOK」データベースより)
垣内亮(カキウチアキラ)
1952年12月24日、東京都出身。日本共産党中央委員会政策委員会。東京大学工学部計数工学科卒業。党東京都委員会、国会議員団事務局勤務を経て2000年から現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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