■原発の運転停止で電力不足は起こったか? 大飯原発再稼働から40日の状況で分かった原発必要論の大ウソ
現代ビジネス(週刊現代) 2012.08.14 町田徹 経済ジャーナリスト
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/33257
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関西電力の大飯原子力発電所の再稼働は本当に必要だったのか---。
再稼働から40日間の状況をみると、こんな疑問が湧いて来る。
関電の発表をみると、電力使用量が今夏最大に達した8月2日でさえ、その使用量は2650万kWで、供給力(2959万kW)から差し引いた余力は309万kWもあった。
この余力は、再稼働した大飯原発3、4号機の最大出力236万kW(2機合計)を大きく上回るものだ。
ピークが続く9月半ばまで速断は禁物だが、現状なら、稼働していない大飯原発の1、2号機はもちろん、原子炉を3基持つ美浜原発、4基持つ高浜発電所などの原発は「無用の長物」という計算になる。
大飯の2機分ぐらいなら、早期に、火力発電に置き換えることも可能だろう。
関電の場合、節電と地元の有力製造業の業績不振という事情はあるものの、全国レベルでみても、今夏の現状は「電気が足りない」という原発必要論の根拠の乏しさを浮き彫りにしている。
一方、原爆の日に広島を訪れた野田佳彦首相は、「原発ゼロのシナリオの詰めを関係閣僚に指示する」と口にしたが、これも小手先対応の域を出ていない。
今こそ、その場しのぎに終始してきた政府の脱原発依存方針を厳しく問い直す時ではないだろうか。
・「15%の需給ギャップは極めて厳しいハードル」
まず、大飯原発の再稼働論議を振り返ろう。
政府が再稼働を強行する布石を打ったのは、5月18日に開いた経済産業省の「電力需要に関する検討会合」と国家戦略室の「エネルギー・環境会議」の合同会合だ。
古川元久国家戦略担当大臣、藤村修官房長官、枝野幸男経済産業大臣らがズラリと顔を揃えて、今夏は各地の原発の運転停止が原因で電力需給のひっ迫が予想されるとして、関電、九州電力、四国電力、北海道電力の管内でそれぞれ、前年比15%以上、同10%以上、同7%以上、同7%以上の節電を要請した。
6月8日になって、野田首相が記者会見し、「実質的に安全は確保されている」との見解を示したうえで、「関西での15%の需給ギャップは極めて厳しいハードル」だと指摘。
「突発的な停電が起これば、命の危険にさらされる人も出ます」と電力不足から国民の生命や健康を守る観点と、「化石燃料への依存を増やして、電力価格が高騰すれば、ぎりぎりの経営を行っている小売店や中小企業、そして、家庭にも影響が及びます。空洞化を加速して雇用の場が失われてしまいます」とおカネの観点の二つを理由に、「大飯発電所3、4号機を再起動すべきというのが私の判断であります」と述べて、再稼働に踏み切った。
ここで話を進める前に触れておくと、首相の「安全が確保されている」という認識について、筆者は事実と異なると考えている。
この点は、以前に本コラム(6月12日付、「リスクを国民に押し付け続ける政府を信用できない! 大飯原発再稼働と東電国有化の裏に隠蔽された『不都合な真実』」)で取り上げたので参照いただきたい。
話を戻そう。
原発再稼働問題を考えるうえで注目すべきは、関西電力が毎週金曜日に発表する「今週の需給実績」(金曜日分は予測)だ。
丹念に見ていくと、今夏(7月1日から8月10日まで)の最大電力使用の平均(関電の発表値から計算)は2403.4万kWで、供給力の2781.6万kWを大きく下回っている。
余力は平均で378.1万kWもあり、大飯原発3、4号機の最大出力236万kW(2機合計)を大きく上回っているのだ。
特に、4号機が7月18日に再稼働(3号機は7月1日に再稼働)してからは、供給余力が大飯原発3、4号機の合計最大出力を割った日は一日もない。
4号機が稼働する前の3号機だけが稼働していた時期をみても、供給余力が、大飯原発3、4号機の最大出力を割り込んだのは、7月10日だけなのだ。
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原発の運転停止で電力不足は起こったか? 大飯原発再稼働から40日の状況で分かった原発必要論の大ウソ
現代ビジネス(週刊現代) 2012.08.14 町田徹 経済ジャーナリスト
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■「節電しないと今夏、大停電」はウソ、火力・新エネルギーで電力需要は賄える
東洋経済 2011/06/22
https://toyokeizai.net/articles/-/7255
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原子力発電所の停止で大停電がやってくる--。
今夏は原発事故を起こした東京電力だけでなく、九州電力「玄海」のように、定期点検中の原発も再運転が危ぶまれており、全国的に電力不足に陥るという予想が台頭。
東電管内などでは、家庭や企業に対して「一律15%」の節電を要請する構えだ。
が、一部では「夏の停電説は、原発が必要なことをアピールするプロパガンダではないか」との見方が広がっている。
というのも、電力会社が発表する供給能力が、徐々に、だが確実に拡大しているからだ。
東電の場合、今夏のピーク時電力需要予測は5500万キロワットとしたうえで、震災直後に「供給能力は7月末時点で4650万キロワット程度。約1000万キロワットも足りない」と発表。
家庭や企業間で恐怖心が広がった。
ただその後、休止中の火力発電所などを立ち上げることで供給能力が回復。
現状では、8月末の供給力予測は5620万キロワットと、すでに想定需要を上回っている。
事故当初は、被災した発電所をどの程度再開させられるかわからなかったにせよ、「こんなハイペースで引き上げられるのは、もともと能力を隠していたと勘繰られても仕方ない」(業界関係者)。
そもそも、3月に行った計画停電は、原発に加え火力発電所が被災したことによる供給能力の低下の影響も大きかった。
「頑張れば停電しなくて済む日もあったはずだ。東電や政府は、その情報を正確に伝えずに、世論を操作したのではないか」と、名古屋大学大学院環境学研究科の高野雅夫准教授は指摘する。
・原発依存が招いた停電
一方、政府の要請によって浜岡原発の全原子炉を停止した中部電力では、2011年度に占める原子力の電源構成はわずか12%。
「原発を止めたとしても水力と火力だけで3000万キロワットの設備容量があり、今年のピーク容量見通しは賄える」(高野准教授)。
原発停止による電力供給への影響は、各電力管内でも微妙に異なるが、「全国でかなりの原発が止まっても、火力で賄える」と、原子力資料情報室の西尾漠共同代表は言い切る。
西尾氏によると、昨夏のピーク需要量約1.8億キロワット(原発を持たない沖縄電力を除く9社合計)のうち、原子力が担ったのは計算上、わずか1500万キロワットで、約1.6億キロワットは火力や水力が担った。
今夏は需要が昨年を下回ると見られるほか、火力を増強しており、原発による発電量が相当絞られても堪えられる計算になる。
冷夏だった09年は、原発をまるで使わずに最大電力が賄えたという。
夏場のピークといっても、「実際は夏場の数日間、しかも数時間程度。
その9割は事業所が使用する。工場の休み時間を1時間ずらすなど、ピークを下げるやり方はいくらでもある」(高野准教授)。
一方、近年電力消費量が増えてきた家庭部門でも、「電気湯沸かし器など電力消費量の多いものを使うのをやめればバブル期の水準にまで消費量を落とせる」。
・風力で原子力を賄える?
とはいえ、原子力の代わりに石油を使った火力発電量を増やすことは、二酸化炭素(CO2)の排出量の増加にもつながる。
こうした中、新たなエネルギー源を模索する動きも出そうだ。
風力発電の発電量ポテンシャルは19億キロワット--。
4月末、環境省が発表したある調査結果が、関係者の度肝を抜いた。
タイトルは「再生可能エネルギーポテンシャル調査」。
風力や太陽光など日本における再生可能エネルギーの潜在発電力を試算したところ、風力発電は現状の約760倍という驚愕の結果が出た。
もっとも、日本風力発電協会によると、潜在力が高い地域は北海道や東北で、可能な設備容量なども加味すると、「50年までに2500万~3000万キロワットというのが妥当な数字」(斉藤哲夫企画局長)。
加えて「補助金がなくなってからは風力の採算は厳しい」(電力会社)。
ただ、足元では電力の買い取り制度の見直しも進んでおり、今後、利用が伸びる潜在性を秘めている。
仮に2500万キロワット発電すれば、100万キロワット程度の出力を持つ原発の25基分に相当する。
火力発電所や新エネルギーで電力消費が賄えてしまえば、原発の必要性は一段と訴えにくくなる。
「反原発」「脱原発」の波が全国的に広がる中、電力政策は今夏、新たな岐路を迎える。(週刊東洋経済2011年6月11日号)
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「節電しないと今夏、大停電」はウソ、火力・新エネルギーで電力需要は賄える
東洋経済 2011/06/22
https://toyokeizai.net/articles/-/7255
■サマータイム導入、計画停電etc.で疲弊する企業へ贈る「電力余り」をひた隠す、マスコミ、関電のウソを暴く!
ビジネスジャーナル (Business Journal) 2012.05.18
https://biz-journal.jp/2012/05/post_149.html
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昨年に続き、政府、電力業界、マスコミ合同の「電力不足キャンペーン」(以下、キャンペーン)騒ぎが起こっている。
まずはキャンペーン展開の流れをおさらいしておこう。
口火を切ったのは、電力10社が資金を出し合い、政界や官公庁へのロビー活動などを行う電気事業連合会。
3月16日、八木誠・同会会長は会見で「原発を再稼働しなければ今夏の電力供給は非常に厳しい。国民生活や産業に多大な影響を与える」と警告した。
続いて4月9日、経産省は「原発を再稼働しない場合の関西電力管内の今夏の電力需給見通し」を発表、八木会長の警告を公的に裏付ける試算を示した。
それによると、原発稼働ゼロなら平年並みの暑さで7.6%、猛暑の場合は19.6%の電力不足となるとしている。
加えて、原子力発電の代替燃料輸入により、関西電力の燃料費は年間7000~8000億円増、(原発を保有していない沖縄電力を除く)大手9電力会社合計では年間3.1~3.8兆円増としている。
枝野幸男経産相も、「原発を再稼働しなければ今年の夏は電力不足になり、(燃料費増加が電力会社の経営を圧迫するので)電気料金値上げをお願いしなければならない」と強調した。
さらに4月16日、関西経済連合会・沖原隆宗副会長が定例会見で「原発の早期再稼働が必要」と訴え、角和夫副会長も「(電力不足は)さらなる産業の空洞化を招く」と訴えた。
翌17日、「フジサンケイビジネスアイ」(日本工業新聞社)はこの会見を報じる中で、「武田薬品工業が5月のGWの連休を返上して生産を決定、サマータイム導入を決める企業が相次いでいる」と触れ、早くも関西は混乱に陥っているかのような報道を行った。
しかし、電力は本当に足りないのだろうか?
マスコミが電力業界や経産省の協賛報道をすればするほど、国民の素朴な疑問が湧き上がり、それに応えるような報道も次々と発信されている。
原発ゼロでも、夏季の電力不足はわずか58時間 ? 共同通信(4月21日)
関西電力は今夏の需給見通しで「原発ゼロで関西電力が供給できる最大電力量は2574万kW/時。
昨夏の最大使用量は2784万W/時。したがって今夏は210万kW/時の電力不足が発生する」と主張している。
しかし、共同通信が関西電力の公表資料から、昨夏の1時間ごとの電力使用量を調査したところ、2574万kW/時を超えたのは12日間で合計58時間。夏季85日・2040時間のうち2.8%に過ぎなかった。
しかも、連続超過時間は最長で10時間、次が8時間、それ以外は1日3~5時間だった。
キャンペーンを鵜呑みにすると、電力不足が毎日続き、夏季中ずっと停電対策が必要と錯覚してしまう。
マスコミに踊らされている関西の企業は、過剰な心配と苦労を強いられているといえそうだ。
原発再稼働なくても「埋蔵電力」活用で乗り切れる ? 週刊ポスト(小学館/4月27日号)
資源エネルギー庁の資料分析から、利用されずに眠っている「埋蔵電力」を発見し、「原発ゼロでも夏を乗り切れる」との報道。
これによると、企業などの自家発電全国総量が5373万kW/時分ある。
これは東京電力1社分の供給量に匹敵する。
このほか、電力会社が大口消費者と契約している「需給調整契約」(電力不足時にピークカットする代わりに、平常時の電気料金を大幅割引する契約)の総電力量が、原発5基分(505万kW/時)に上る。契約通りピークカットをするだけで電力不足は起きない。
しかも大口契約者の大半は自家発電設備を持っているので、大きな混乱が起きる恐れも少ない。
さらに企業の非常用電源も2300万kW/時分眠っている。
これらの埋蔵電力を活用すれば、原発に頼らなくも今年の夏は電力不足にならないと報じている。
全原発停止でも供給に余力 ? 週刊ダイヤモンド(ダイヤモンド社/2011年7月19日号)
昨年8月1カ月間で、西日本の大手電力6社の合計供給量が、ピーク時より約1500万kW/時も余力を持っている事実を明らかにしている。
原発ゼロの場合、6社合計の供給量は1万114万kW/時。
一方、需要量が9767万kW/時。この需要量に、安定供給の目安となる各社の「供給予備率」を掛けると、合計で275万kW/時の不足。これが電力業界の言い分だ。
しかし、各社の資料から認可最大出力量と供給可能量の合計差をはじき出してみると、生産能力的には合計1486万kW/時の供給余力を持っていることが判明したのだ。
同誌は「電力会社の言う電力不足には、数字的根拠がない」と断じている。
これらの調査報道を見る限り、電力不足どころか、逆に「電力余り」ではないかとも思えてくる。
なぜ政府と電力業界は正確な電力需給量を公表せず、不安を煽るようなキャンペーンを展開しているのだろうか?
発電燃料である天然ガスを、いまだに米・電力相場の数倍で購入しているなど、経営努力を怠る一方で、燃料費増などで赤字転落を防ぎたい電力業界の思惑と、原発を再稼働させたい政府(経産省)の思惑が一致した世論誘導との疑いを禁じ得ない。
少なくとも政府と電力業界には、「電力余り」を示唆する報道について、説明責任があるのではないか?
(文=福井 晋)
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サマータイム導入、計画停電etc.で疲弊する企業へ贈る
「電力余り」をひた隠す、マスコミ、関電のウソを暴く!
ビジネスジャーナル (Business Journal) 2012.05.18
https://biz-journal.jp/2012/05/post_149.html
■安倍晋三は尋常ではない!「報道ステーション事件」とマスコミの正体
週刊ダイヤモンド 2015.9.16 広瀬隆
https://diamond.jp/articles/-/78537
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『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。
壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が第5刷となった。
本連載シリーズ記事も累計179万ページビュー(サイトの閲覧数)を突破し、大きな話題となっている。
このたび、新著で「タイムリミットはあと1年しかない」とおそるべき予言をした著者が、元通産(経産)官僚でベストセラー作家の古賀茂明氏と初対談。
大きな話題となった「報道ステーション事件」の裏側にひそむ、大手マスコミの大問題を徹底追及する!
(構成:橋本淳司)
・古舘さんは2014年頃から転向!?
広瀬:古賀さんが、福島原発告訴団の集会で講演してくれたので、本当にうれしかったです。今年、古賀さんが出演されたときの『報道ステーション』(テレビ朝日系)の事件は大きな反響がありましたね。「テレビ朝日の早河会長と古舘プロジェクトの会長のご意向で今日が最後になりました」と切り出したのを、僕はたまたま生放送で見ていて驚きました。あんな放送局内部のことを言える人は、古賀さん以外いないですから。しかも古舘さんと言い合いになって、「アイ・アム・ノット・アベ」と言うんですからね。
古賀:ご覧になっていましたか。ただし、古舘さんもある意味「被害者」です。被害者というのは、「弾圧を受けている側」という意味です。安倍政権は菅官房長官を中心に報道つぶしをしています。報道ステーションつぶしは、2014年の春くらいから始まりました。古舘さん自身は、その頃から転向して、テレビでも徐々にトーンダウンしていきました。でも、僕がコメンテーターとして出演したときは思いきり安倍批判ができ、番組全体のトーンも視聴者には「アンチ安倍」に映ります。それが古舘さんの作戦でした。
古賀:いま安倍政権に媚びへつらっていないのは、TBSの『NEWS23』『報道特集』『サンデーモーニング』くらいです。この3つの番組だけはかなり自由にやっていますが、いまのマスコミは本当にヒドイ。
広瀬:そう思います。目の前の原発再稼働の強行や、国民の意志に反したもろもろの政策が横行する問題の究極は、全部大手の新聞・テレビのマスコミに責任があると思います。
・日本のマスコミは“政府公報係”
古賀:東日本大震災が発生した日、当時の東電会長・勝俣恒久さんはマスコミを連れて中国に大名旅行に行っていました。電力会社とマスコミがグルだったんですよ。電力会社との癒着を知られたくなかったマスコミは、旅行のことを知られたくなかった。だから、勝俣さんが中国に行っていたことが、なかなか表に出てきませんでした。大手マスコミは役人と同じで、完全な既得権者なのです。大手の新聞・テレビは、記者クラブに無条件で入れます。ここにいれば、取材しなくても役所の情報がもらえます。資料が積んであって、それをもらって読んで、わからないことがあれば、同じ建物のなかにいる担当課の課長のところにいくと説明してもらえます。もちろん、役所に都合のいい情報だけですが、それが日々、新聞やテレビのニュースになっているだけです。
広瀬:記者クラブは、本当に気持ちの悪い世界ですね。私もある問題で中に入ったことがあるのですが、こんなことで記事ができるのか、とあきれました。海外ではそうした公報を「通信社」が配信していますが、マスコミはそのあとに、さまざまな視点で吟味し、自分たちの意見を加えて独自のニュースにしています。ところが日本のマスコミは、ジャーナリズムではなく単なる“政府公報係”です。
古賀:役所から資料のコピーをもらうだけで、基本的に取材コストはかからない。資料のコピー代でさえ役所が払ってくれます。出費がないから、日本の大手マスコミは異様に給料が高いんです。
定年まで問題さえ起こさずに働いていれば、どんどん給料は上がりますし、運のいい人はそこから系列会社の役員などになります。天下りですね。だから、ヌクヌクした世界から抜けたくないのです。
広瀬:ジャーナリズムではないですね。朝日新聞のトップが安倍政権にあんなに媚びへつらったら、現場は安倍政権を批判するような記事を書けないでしょう。書いて問題を起こしても、社長が助けてくれないような会社では困る。みんな会社の中で生きていこうと思っているので、ストレートな記事は書かなくなる。仮に書いたら飛ばされる。私の知り合いのまともな記者が、何人も飛ばされました。いまは何も書けないでしょう。
・安倍晋三は尋常ではない
古賀:マスコミの世界も悪いし、安倍政権も悪いのですが、なぜ安倍政権だけ巨大な力を持つのかが問題です。前の政権だって、その前の政権だって、やろうと思えば同じことができたはずじゃないですか。私はマスコミ側に「安倍さんはおかしい」「尋常ではない」という恐怖感があって、おびえていると見ています。普通はマスコミも大きな力を持っています。政権側には、マスコミに一斉に攻撃されたら大変なことになるという緊張感があって、マスコミを攻撃することには、おのずと限度があるのです。
広瀬:報道と政治家の間には、緊張関係がなければなりませんよね。
古賀:しかし、いまは一方的に安倍政権のほうがマスコミより強くなっています。そこには「安倍首相は本気になったら本当に殺しにくる」という思いがあります。
広瀬:安倍晋三というのは、英語で言えばクレイジーではなく、マッド(MAD)です。だって、国民が「やめろ!」ということばかりを平気でやれるなんて、正常な政治家ではありませんよ。
古賀:常識では測れないくらい滅茶苦茶なことをやってくる可能性がある、何をされるかわからないという恐怖感がマスメディアにある。だから、懐に飛び込み、仲よくなって内緒の話を教えてもらっていたほうが楽だという風潮になっています。
広瀬:人間には、やってはいけない一線というものがある。この政権は、すでにその一線を越えている。
古賀:民主主義が機能するいろいろな条件をどんどん壊しています。表向きには「戦争はしない」「アメリカとは一体化しない」などと言いますが、昨年の閣議決定前からの議論や議事録を見ていれば、何でもできるようになった経過がわかります。官僚から見れば、政権側が何でもできる状況にしたのがはっきりわかる書き方なのです。
広瀬:世論調査では、安倍晋三は全敗していますよ。それでも、意見をまったく変えません。
古賀:ただ、安保法案を見ていると、相当反対が大きかったこともあり、この間の「70年談話」は、安倍さんの内心では「大敗北」でしょう。自分の思っていることを何も書いてない。あれで支持率が5~6%戻りました。「安倍さんって危ないんじゃないの」という雰囲気が強まっていたのですが、「意外と柔軟なんだ」と、一部の人に思われました。韓国とか中国も「こいつはおかしい」と思っているような感じがあって、朴槿恵(パク・クネ)大統領のほうも、まともにケンカすると大変なことになるから、下手に出ないとまずい、みたいな感じになってきています。これで日中韓首脳会議が開催できたら、「安倍さんが中国や韓国と戦争を起こしそうだとか言っているけど、ウソじゃないか」というふうになっていく可能性があります。こうしたとき、日本のマスコミは、きちんと裏を解説して報道をすべきですが、現在のマスコミには調査報道の能力がないです。しかも、トップは完全に日和っていて、「経営陣が現場に介入する」という先進国では絶対にあってはならないことが起きています。
広瀬:原発報道はまったくひどいです。いまでは「原発がないと電力が逼迫する」とはさすがに言わなくなりましたが、いまでも「原発がないと電気料金が上がる」なんて、電力会社の言い分、つまりウソだけを平気で新聞が書いていますからね。特にNHKは、それを常套句にして政府広報に徹しています。このことは、『東京が壊滅する日』の「あとがき」に書きましたが、安倍晋三が言っている「原発ゼロだと火力の燃料費が増える。3兆6000億円の国富の流出だ」という話は、2010年と2013年の比較なのです。「貿易収支・財務省貿易統計」を見ると、化石燃料の輸入額は、2010年より前、原発が動いていた2008年、リーマン・ショックの年と比較すると、2013年より多いのです。原発がほとんど動いていない2013年のほうが、輸入額は減ったのですよ。つまり2010年と2013年の違いは、世界的な原油価格の変動と、円安が原因なのであって、原発ゼロとは関係ない話なのです。九州電力と関西電力の経営が苦しくなったのは、再稼働のための安全対策費のためです。今まで手抜きをしていた部分に、金をかける必要が出てきたのです。
古賀:実は政府の発表のなかにも、「原発はコストが高い」と自ら認めている部分がたくさんあります。政府が責任を持ってさまざまな原発維持の仕組みをつくっていますが、これは原発が高いからです。コストが高くて、どうにもならないから、政府が電力会社の分を引き受けるしかない、という事実が明確に出ています。エネルギー基本計画でも「原発は安い」という言い方はしていません。「運転コストが安い」としか書いていないんです。廃棄物処理も含めて、原発の操業すべてにかかる総額では、原発のほうがはるかに高いということを認めているからです。
広瀬:そうですよね。政府の発表を垂れ流しにするだけでなく、きちんと分析したり、検証する目が必要です。それがジャーナリズムというものでしょう。
・1960年代に設計された老朽原発を再稼働させる恐怖
田中:安倍晋三総理は、2014年1月24日の第186回国会の施政方針演説において「世界で最も厳しい水準の安全規制を満たさない限り、原発の再稼働はありません」と所信表明しました。同年10月7日の参議院予算委員会でも、原発の再稼働について「世界で最も厳しい基準」をもとに判断すると言っています。しかし、日本の規制基準は世界一どころか世界標準にも遠く及びません。
広瀬:まったくそのとおりです。でも「世界で最も厳しい基準」という「デタラメ基準」を次々にクリアしています。
田中:それが厳しい基準ではないことを逆に証明しているようなものです。現在43基ある日本の原発には古いものが多い。
1970年代に稼働した原発のうち、敦賀原発1号機(1970年)、美浜原発1号機(1970年)、美浜原発2号機(1972年)、島根原発1号機(1974年)、玄海原発1号機(1975年)は廃炉が決定しましたが、東海第2原発(1978年)、美浜原発3号機(1976年)、高浜原発1号機(1974年)、高浜原発2号機(1975年)、大飯原発1号機(1979年)、大飯原発2号機(1979年)、伊方原発1号機(1977年)はまだ残っています。
広瀬:いずれも設計されたのは、1960年代半ばから70年代前半でしょう。耐震性も安全設計の考え方も甘すぎる時代です。
田中:日本で基本的に動いている沸騰水型原子力発電所、加圧水型原子力発電所というのは、米国のエネルギー省の分類に従えば、「第2世代」と呼ばれている機体に属しています。現在は、その機体の事故やトラブルの経験を経て、「第3世代」の原子力発電所をつくるという時代になっています。そんなときに老朽原発も再稼働させてやろうという「親心」が原子力規制委員会にあるわけです。それが適合審査の基本的な精神です。だから、彼らが世界最高の規制基準なんてつくるわけがない。まともな基準をつくると、大改造が必要になって、再稼働にトテツモナイ大金と時間がかかり、結局運転できなくなります。
広瀬:原子力規制委員会は、本来、安全性を第一に考えて安易な再稼働にストップをかけなくてはならない組織ですが、その正反対のことしかしていないのは、それが原因なのですね。原発推進派だけを集めた委員会ですからね。
・危機対策「未着手」オンパレードの日本
田中:世界的には、放射能大量放出を防ぐフィルターベントや、溶けてしまった炉心を受け止める「コア・キャッチャー」をつけることも義務づけられています。コア・キャッチャーは、耐熱性の材料で格納容器の下部のコンクリートをカバーし、コア・コンクリート反応を防ぐのが目的です。三菱重工も東芝も日立も、輸出用の原発にはコア・キャッチャーをつけるはずです。
広瀬:えっ、輸出用には設置されるのですか?
田中:海外仕様はこれがないと建設できなくなりつつある。中国で建設中の最新の原発にもコア・キャッチャーがついています。日本でコア・キャッチャーの設置が問題にならなかったのは、過酷事故対策を軽視して規制対象から外してきたからです。既設の原発にいまからコア・キャッチャーを追加設置することは、簡単ではないが、時間と金をかければ、たぶんできなくはない。それをしないのは、大改造のため長期間運転が止まるからです。
広瀬:米国では福島事故以前に対応済みだったが、日本では現在も「未対応」の事項を雑誌『科学』(2015年7月号/岩波書店)に、元GEのエンジニアだった佐藤暁《さとし》さんがリストアップしています。これを読むとビックリします。たとえば、「緊急時の自衛消防隊」は、米国では当初から設置されていますが、日本ではいまだに未着手。「プラント個別の内部事象、外部事象に対するリスク評価」や「SBO(全電源喪失)に対する専用の恒設バックアップ電源」は、米国では1990年代に完了していますが、これも日本では未着手です。「敷地内地下の地質構造の把握。土壌、地下水汚染を監視するサンプリングの強化」については、米国では2000年代に完了していますが、日本ではこれも……。ほんとうに日本の原発は、今日にも大事故を起こしそうだ。そんな状況なのに規制委員会の審査はクリアされてゆく。
田中:どうクリアしたのかわからない。「世界一だ」なんてウソも100回言えば本当になってしまう。
・テロ対策もまったくできていない現実
広瀬:ヒットラーの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスが「何度でもウソをつけば、それがやがて真実として受け入れられるようになる。ウソは大きければ大きいほど、真実として受け入れられやすい」と、ドイツ人を欺いた手法と同じですね。世界的には、テロ対策は常識ですよ。たとえば、複数箇所からテロリストに同時進入される、高度な武器や戦術をもったテロリストに攻撃される、原子力施設がテロリストに制圧される、職員がプラントの管制室に入ってテロ行為を行う危険性などへの対応も進んでいます。ところが日本では、まったく対応していません。
田中:10年計画で優秀な職員を送り込み、ある日突然、一番脆弱な部分で機関銃を乱射するというようなことも考えられます。
広瀬:海外では、航空機テロへの対応も進んでいます。米国では航空機テロなどによる敷地内での大規模火災・爆発に対する対応指針もできています。日本では航空機がつっこんできても、プラントの外で爆発するから大丈夫などと言う“自称”専門家もいますが、ミサイルで狙われたら簡単に外壁を吹き飛ばされ、内部を破壊されます。欧米では航空機事故の衝突対策として、二重格納容器が一般的になっていますが、電力会社は、航空機の激突はほとんどあり得ないとして切り捨てています。
田中:「新規制基準」の要求に従い、事故対応を強化しているといっても、消防車を並べた、仮設の発電機を設置したというレベルなのです。そんなものが、大地震で、一体どうなりますか。それを、世界一厳しい基準ということ自体、噴飯ものです。
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安倍晋三は尋常ではない!「報道ステーション事件」とマスコミの正体
週刊ダイヤモンド 2015.9.16 広瀬隆
https://diamond.jp/articles/-/78537
■何度でも言う! 安倍首相こそが福島原発事故の最大の戦犯だ!
第一次政権で津波による冷却機能喪失対策を拒否
exciteニュース 2019年3月11日
https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_4599/
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東日本大震災から8年。本日の記事では、安倍政権の棄民政策によって、被災者はどんどん切り捨てられ、東北の現実に蓋をされている実態をお伝えしたが、もうひとつ、安倍政権によって完全になきものにされようとしているのが、福島第一原発の事故だ。
安倍政権は、原発被災者への支援打ち切りと強引な帰還政策を推し進める一方で、まるで事故などなかったかのように、原発再稼働を進めている。
事故直後はすべて止まっていた原発も、現在までに高浜原発3、4号機、伊方原発3号機、川内原発1、2号機、大飯原発3、4号機、玄海原発3、4号機とすでに5原発9基が再稼働しており、また東海原発や泊原発、さらには福島原発事故を起こした東京電力の柏崎刈羽原発までもが再稼動に向けた動きをみせている。
このような事態を許しているのは、福島第一原発事故における安倍首相の責任をきちんと追及してこなかったからだ。
言っておくが、これは歴代自民党政権が昔から原発政策を推進してきたとか、そういう抽象的なレベルの話ではない。
もっと具体的かつ直接的なものだ。
実は、第一次安倍政権だった2006年、すでに国会で福島原発事故と同じ事態が起きる可能性が指摘されていた。
にもかかわらず、ときの総理大臣だった安倍晋三は、「日本の原発でそういう事態は考えられない」として、一切の対策を拒否していたのである。
しかも東日本大震災後、安倍は、原発事故の責任を当時の菅直人首相と民主党政権に押し付け、真実を追及するメディアを「捏造だ!」と恫喝、自身の重大責任を隠蔽してきた。
その結果、多くの国民は原発事故における安倍の責任を知らされないまま。
安倍政権は何事もなかったかのように、再稼働をどんどん進めている。
このまま安倍晋三が、その責任を追及されることのないまま、首相の椅子に座り続ける限り、第二の“フクシマ”が繰り返されることになるだろう。
本サイトでは3月11日を迎えるたびに、安倍首相こそが原発事故の“戦犯”であること、そして、その責任を隠すためメディアを黙らせてきたことを記事にしてきた。
今年もまたあらためて、その事実をお伝えしたい。安倍のフクシマにおける大罪を、じっくりと、読んでいただきたい。
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・福島原発事故から5年前、安倍は「全電源喪失はありえない」と地震対策を拒否
故郷に帰れない多くの被災者を生み出し、放射性物質を広範囲にまき散らし、作物を汚染し、今も国土や海を汚し続けている福島原発事故。
だが、この国家による犯罪ともいえる重大な事故をめぐって、ほとんど語られてこなかった事実がある。
それは、現内閣総理大臣である安倍晋三の罪についてだ。
こういうと、安倍支持者はおそらく原発事故が起きたときの首相は民主党の菅直人じゃないか、サヨクが安倍さん憎しで何をいっているのか、というだろう。
そうでない人も、原発を推進してきたのは自民党だが、歴代の政権すべてがかかわっていることであり、安倍首相ひとりの問題じゃない、と考えるかもしれない。
だが、福島原発の事故に関して安倍首相はきわめて直接的な責任を負っている。
第一次政権で今と同じ内閣総理大臣の椅子に座っていた2006年、安倍首相は国会で福島原発事故と同じ事態が起きる可能性を指摘されながら、「日本の原発でそういう事態は考えられない」として、対策を拒否していたのだ。
周知のように、福島原発の事故は津波によって全電源が喪失し、原子炉の冷却機能が失われたことが原因で、政府や電力会社はこうした事態を専門家さえ予測できない想定外のことだったと弁明してきた。
しかし、実際にはそうではなく、原発事故の5年前に、国会質問でその可能性が指摘されていたのだ。
質問をしたのは共産党の吉井英勝衆院議員(当時)。京都大学工学部原子核工学科出身の吉井議員は以前から原発問題に取り組んでいたが、2006年から日本の原発が地震や津波で冷却機能を失う可能性があることを再三にわたって追及していた。
3月には、津波で冷却水を取水できなくなる可能性を国会で質問。4月には福島第一原発を視察して、老朽化している施設の危険性を訴えていた。
そして、第一次安倍政権が誕生して3カ月後の同年12月13日には「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」を政府宛に提出。「巨大な地震の発生によって、原発の機器を作動させる電源が喪失する場合の問題も大きい」として、電源喪失によって原子炉が冷却できなくなる危険性があることを指摘した。
ところが、この質問主意書に対して、同年12月22日、「内閣総理大臣 安倍晋三」名で答弁書が出されているのだが、これがひどいシロモノなのだ。質問に何一つまともに答えず、平気でデタラメを強弁する。
・福島原発事故と同じバックアップ電源機能不全の実例を指摘されても安倍は…
まず、吉井議員は「原発からの高圧送電鉄塔が倒壊すると、原発の負荷電力ゼロになって原子炉停止(スクラムがかかる)だけでなく、停止した原発の機器冷却系を作動させるための外部電源が得られなくなるのではないか。」という質問を投げかけていたのだが、安倍首相はこんな答弁をしている。
「外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源からの電力により、停止した原子炉の冷却が可能である。」
吉井議員はこうした回答を予測していたのか、次に「現実には、自家発電機(ディーゼル発電機)の事故で原子炉が停止するなど、バックアップ機能が働かない原発事故があったのではないか。」とたたみかける。
しかし、これについても、安倍首相は「我が国において、非常用ディーゼル発電機のトラブルにより原子炉が停止した事例はなく、また、必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない」と一蹴。
これに対して、吉井議員はスウェーデンのフォルスマルク原発で、4系列あったバックアップ電源のうち2系列が事故にあって機能しなくなった事実を指摘。
「日本の原発の約六割はバックアップ電源が二系列ではないのか。仮に、フォルクスマルク原発1号事故と同じように、二系列で事故が発生すると、機器冷却系の電源が全く取れなくなるのではないか。」と糾した。
すると、安倍首相はこの質問に対して、こう言い切ったのである。
「我が国の原子炉施設は、フォルスマルク発電所一号炉とは異なる設計となっていることなどから、同発電所一号炉の事案と同様の事態が発生するとは考えられない。」
吉井議員が問題にしているのはバックアップ電源の数のことであり、原子炉の設計とは関係ない。
実際、福島原発はバックアップ電源が全部ダメになって、あの深刻な事故が起きた。
それを安倍首相は「設計が違うから、同様の事態が発生するとは考えられない」とデタラメを強弁していたのだ。
そして、吉井議員がこの非常用電源喪失に関する調査や対策強化を求めたことに対しても、安倍首相は「地震、津波等の自然災害への対策を含めた原子炉の安全性については、(中略)経済産業省が審査し、その審査の妥当性について原子力安全委員会が確認しているものであり、御指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。」と、現状で十分との認識を示したのだ。
重ね重ね言うが、福島原発が世界を震撼させるような重大な事故を起こした最大の原因は、バックアップ電源の喪失である。
もし、このときに安倍首相がバックアップ電源の検証をして、海外並みに4系列などに増やす対策を講じていたら、福島原発事故は起きなかったかもしれないのだ。
だが、安倍首相はそれを拒否し、事故を未然に防ぐ最大のチャンスを無視した。
これは明らかに不作為の違法行為であり、本来なら、刑事責任さえ問われかねない犯罪行為だ。
ところが、安倍首相はこんな重大な罪を犯しながら、反省する素振りも謝罪する様子もない。
それどころか、原発事故の直後から、海水注入中止命令などのデマをでっちあげて菅直人首相を攻撃。
その罪を民主党にすべておっかぶせ続けてきた。
・安倍が責任逃れのためにぶちまけたメディアへの恫喝、お得意の「捏造だ」攻撃
その厚顔ぶりに唖然とさせられるが、それにしても、なぜ安倍首相はこれまでこの無責任デタラメ答弁の問題を追及されないまま、責任を取らずに逃げおおせてきたのか。
この背景には、いつものメディアへの恫喝があった。
実は、下野していた自民党で安倍が総裁に返り咲いた直後の2012年10月、「サンデー毎日」(毎日新聞社)がこの事実を報道したことがある。
1ページの短い記事だったが、本サイトが指摘したのと同じ、共産党の吉井英勝衆院議員(当時)の質問主意書に対して安倍首相が提出した答弁書のデタラメな内容を紹介。吉井議員のこんなコメントを掲載するものだった。
「いくら警告しても、マジメに対策を取らなかった安倍内閣の不作為は重大です、そんな安倍氏が総裁に返り咲いて首相再登板をうかがっているのは、本人も自民党も福島事故の責任を感じていない証拠でしょう」
ところが、これに対して、安倍は大好きなFacebookで、こう反撃したのだ。
「吉井議員の質問主意書には『津波で外部電源が得られなくなる』との指摘はなく、さらにサンデー毎日が吉井議員の質問に回答として引用した政府答弁書の回答部分は別の質問に対する回答部分であって、まったくのデタラメ捏造記事という他ありません」(現在は削除)
出た、お得意の「捏造」攻撃(笑)。
だが、「サンデー毎日」の報道は捏造でもなんでもなかった。
たしかに安倍首相の言うように、吉井議員が質問で外部電源が得られなくなる理由としてあげたのは、津波でなく「地震で送電鉄塔の倒壊や折損事故」だった。
しかし、だったらなんだというのだろう。
そもそも、吉井議員が問題にしていたのは外部電源が得られなくなる理由ではなく、外部電源が得られなくなった場合のバックアップ(非常用)電源の不備だった。
吉井議員は質問主意書の中で、バックアップ電源4系列中2系列が機能しなくなったスウェーデンの原発事故を引き合いに出しながら、日本の多くの原発が2系列しかないことを危惧。
2系列だと両方とも電源喪失して原子炉を冷却できなくなり、大事故につながる可能性があると指摘した。
それに対して、安倍首相が「我が国の原子炉施設で同様の事態が発生するとは考えられない」と回答したのだ。
福島原発の事故はまさにバックアップ電源が喪失したことで起きたものであり、その意味で「サンデー毎日」の「津波に襲われた福島原発を"予言"するような指摘を、十分な調査をせずに『大丈夫』と受け流した」という記述はまったく正しい。
もし、質問主意書が地震でなく津波と書いていたら、安倍首相は、バックアップ電源の検証を行って、2系列を海外並みの4系列にするよう指導していたのか。そんなはずはないだろう。
ようするに、安倍首相は自分の責任をごまかすために、枝葉末節の部分をクローズアップし、問題をスリカエ、「記事は捏造」という印象操作を行っているだけなのだ。
だいたい、これが捏造だとしたら、メルマガで「菅直人首相の命令で福島原発の海水注入が中断された」というデマを拡散した安倍首相はどうなのか、と言いたくなるではないか。
・安倍の盟友・甘利明がテレ東にしかけたトンデモ抗議と、法廷で明かされた真相
だが、こうした卑劣な責任逃れを行っているのは安倍首相だけではない。
実は安倍首相の捏造攻撃にはお手本があった。
それは安倍の盟友の甘利明・経産相がその少し前、テレビ東京に対して行っていた抗議だ。
前述した安倍首相のFacebookの投稿はこう続けられている。
「昨年テレビ東京が安倍内閣の経産大臣だった甘利代議士に取材した放送で同様の虚偽報道がされたそうです。
甘利事務所は強く抗議し、テレビ東京が「質問主意書には、津波で電源を失う危険性についての記述はないにもかかわらず、放送では、その危険性があるかのような誤った認識の下、自民党政権の原子力政策に関する報道を行いました」として、虚偽内容の放送であったことを認め、放送法第4条に基づく訂正放送をしたとのことです
天下のサンデー毎日がすでに訂正放送を行い、謝罪したテレビ局と同じねつ造をするとは(笑)」
安倍が「同様の虚偽報道」としているのは、2011年6月18日放送の『週刊ニュース新書』(テレビ東京系)のことだ。
同番組は原発事故の責任を検証する企画で、第一次安倍内閣でも経産相をつとめ、原子力行政に深くかかわっていた甘利をインタビューし、その際にやはり吉井議員の質問主意書に対する安倍首相の答弁書の問題を追及した。
すると、突然、甘利が席を立って、別室に姿を消した。
そして、記者にテープを消し、インタビューを流さないように要求したのである。
テレ東の記者は当然、その要求を拒否。番組では、甘利議員がいなくなって空席となった椅子を映し「取材は中断となりました」とナレーションとテロップを入れて放送した。
これに対して、放映後、甘利事務所がテレビ東京に抗議してきたのだ。
しかも、テレビ東京が完全謝罪を拒否したところ、甘利は東京地裁にテレビ東京と記者3名を名誉毀損で訴えたのである。
ちなみにこの法廷では、テレビ東京の記者の意見陳述で、甘利元経産相のとんでもない本音が暴露されている。
甘利元経産相は別室に呼び出した記者に、「これは私を陥れるための取材だ。放送は認めない。テープを消せ」と何度も恫喝し、それを拒否されると、逆ギレしてこう叫んだのだという。
「何度も言うが、原子力安全委員会が安全基準を決める。彼らが決めた基準を経済産業省は事業者に伝えるだけ。(中略)大臣なんて細かいことなんて分かるはずないし、そんな権限がないことくらい分かってるだろう。(質問主意書への)答弁書だって閣議前の2分間かそこらで説明を受けるだけだ」
「原発は全部止まる。企業はどんどん海外へ出て行く。もう日本は終わりだ。落ちる所まで落ちればいい。もう私の知った事ではない」
・スラップ訴訟でマスコミは完全に萎縮、いまなお放置され続けている安倍の罪
これが、経産大臣として原子力行政を司った人間の言葉か、と耳を疑いたくなるが、この裁判にいたる経緯からもわかるように、甘利サイドの抗議、訴訟のメインは質問主意書の内容が「津波でなく地震だった」という話ではなかった。
いきなり質問主意書を持ち出してきたことがルール違反だ、自分の承諾なしにインタビューを放映した、自分が逃げたという印象を与えるような報道をされたことが「名誉毀損にあたる」と訴えてきたのである。
ただ、それだけでは大義がたたないために、テレ東が番組で、「津波による電源喪失を指摘」と報じていたことをとらえ、今回の安倍首相と同じく「質問主意書には津波のことは書いていない」とついでに抗議したのだ。
そういう意味で、甘利の抗議と訴訟は明らかなイチャモンであり、スラップ訴訟としか思えないものだった。
そもそも、甘利や安倍は吉井の質問主意書に津波のことが書いていないというようなことをいっているが、実際は、津波によって冷却機能喪失の危険性を指摘する記述がある。
だが、弱腰のテレビ東京は、訴訟を起こされる前になんとかなだめようと、地震を津波と間違えた部分だけを訂正してしまった。
その結果、訴訟でもほとんどのところで甘利側の言い分が却下されたが、この枝葉末節の部分をテレ東がすでに間違いを認めているとみなされ、330万円の損害賠償金がテレ東側に命じられた(もちろん、この判決の背景には政治家が起こした名誉毀損訴訟についてほとんど政治家側を勝たせ続けている裁判所の体質もある)。
しかも、テレ東は現場の意向を無視して控訴を断念。報道そのものが「虚偽」「捏造」だったということになってしまった。
ようするに、安倍首相はこのオトモダチ・甘利が使ったやり口をそのままならって、責任追及の動きを封じ込めようとしたのである。
しかも、テレ東がお詫びを出したという結果をちらつかせることで、他のマスコミを封じ込めようとした。
実際、「サンデー毎日」はさすがにお詫びを出したりはしなかったが、新聞・テレビはすでに甘利のスラップ訴訟で萎縮していたところに安倍の捏造攻撃が加わり、この問題を扱おうとする動きはほとんどなくなった。
そして、翌年、第二次安倍内閣が発足すると、安倍首相はこれとまったく同じ手口で、自分に批判的なマスコミを片っ端からツブシにかかった。枝葉末節の間違いを針小棒大に取り上げて、「捏造」と喧伝し、批判報道を押さえ込む――。
さらに、読売、産経を使って、菅直人元首相や民主党政権の対応のまずさを次々に報道させ、完全に原発事故は菅政権のせいという世論をつくりだしてしまった。
こうした安倍首相とその仲間たちの謀略体質には恐怖さえ覚えるが、もっと恐ろしいのは、彼らが政権をとって、再び原発政策を決める地位にあることだ。
不作為の違法行為によってあの苛烈な事故を引き起こしながら、その責任を一切感じることなく、デマを流して他党に責任を押しつける総理大臣。
そのもとで、反対を押し切って進められた原発再稼働。
そして、まさかの原発新設議論の着手……。
このままいけば、“フクシマ”は確実に繰り返されることになる。
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何度でも言う! 安倍首相こそが福島原発事故の最大の戦犯だ!
第一次政権で津波による冷却機能喪失対策を拒否
exciteニュース 2019年3月11日
https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_4599/
■原発の安全規制で「戦争」を想定外にしていい理由は?「我々、福島で痛い目に」
論座 2021年06月15日 奥山俊宏
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2021061400005.html
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福島事故後の原発再稼働の要件となる新しい安全基準を検討するため、新設された原子力規制委員会は2012年10月25日、専門家チームの初会合を開いた。
チームの一員となった阿部清治(きよはる)(当時66)は、最初のあいさつで「反省」を口にした。
こういうふうに事故が起きたことに関しては、ずいぶん至らなかったことがあったのではないかと思っております。
1973年から原発安全規制の支援に関わり、2003~07年に原子力安全・保安院の審議官を務めた阿部。津波のリスクを見落としたことに福島事故で気づかされた。
「そういう反省も込めて参加させていただきたい」と阿部は言った。
原発の安全規制に40年余にわたって関わった原子炉事故研究者、阿部清治(75)の目を通し、日本が原子力にどう向き合ってきたか、その現場を5回の連載でたどる。
事故の発端となりうる発電所外部の要因のことを、原子力業界では「外部事象」あるいは「外的事象」と呼ぶ。
地震、津波、火山噴火、洪水、竜巻、積雪といった自然現象だけでなく、その資料には航空機衝突、妨害破壊行為などテロ行為も列挙されていた。
「考え落とし」がないようにするため、思いつく限りの事象を並べたのだろうが、阿部は規制庁に質問した。
・何で戦争が入らないのですか?
過去2千年を振り返れば、戦争はかなりの頻度で起こってきた。
東京電力福島第一原発を襲った津波よりも戦争の発生確率は大きい。
ひんぱんに起こり、かつ、原子力安全への影響度が大きい、という点では最悪と言っていい。
北朝鮮の脅威にさらされている韓国の原子力規制当局に親しい友人を持つ阿部にとって、原発への戦争の脅威は絵空事ではない。
テロは入れるけれども、戦争は入れないということについて、ちゃんとした理由があるのか?
そう問いただす阿部も、規制委が戦争への備えを電力会社に要求するべきだとまでは考えていない。
しかし、最初から理由もなく検討対象から外すのはよくない。
2016年11月15日、廃炉で発生する放射性廃棄物の埋設に対する規制を検討する会合でも、阿部は、規制庁の案の漏れに疑問を呈した。
我々、福島で痛い目に遭っているわけで、それ以外の外的事象はなぜ考えなくていいのかという説明が重要だと思っているんです。
(中略)
戦争への備えについては、規制の対象から除外されたままだが、原子力規制委員長だった田中俊一が2017年7月6日に「平和な国でないと原子力は利用できない。戦争状態に入ることは絶対に避けてほしい」と述べたと報じられ、阿部はこの説明に納得している。
戦争が起きたとき、規制当局を含む国家にとって守るべきものはたくさんあり、原子力施設はその一部に過ぎない。
一方、戦争に対して電力会社ができることは限られる。
このため、戦争への備えについて原子力施設に特化して規制を考えてもあまり意味はなく、戦争そのものが起きないようにするしかない。
阿部はそう思っている。
しかし、阿部はなおも心配する。
もしかしたら「考え落とし」がどこかにあるかもしれないし、事故対処、マネジメントについてどのように規律されているのかがよく分からないからだ。
リスクの大きさに見合ったバランスの良い規制になっていると胸を張れる自信もない。
福島第一原発事故の教訓を生かし尽くしていると言いきれるのか、阿部の不安は今も消えない。
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原発の安全規制で「戦争」を想定外にしていい理由は?「我々、福島で痛い目に」
論座 2021年06月15日 奥山俊宏
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2021061400005.html
■ウクライナ ザポリージャ原発 “ロシア軍が掌握”【なぜ?】 | NHKニュース
NHK 2022年3月4日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220304/k10013513381000.html
■ロシアの原発砲撃「やっぱり狙われた」 日本でミサイル攻撃を懸念し裁判した人たち「最大の弱点」と訴え
東京新聞 2022年3月5日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/163725
■プーチンがウクライナの原発制圧を進める「本当の狙い」 ザポリージャ原発の次に狙われるのは?
ディリー新潮 2022年03月08日
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/03081136/
■なぜウクライナの原発は狙われる チェルノブイリの廃炉は
中日新聞 2022年3月16日
https://www.chunichi.co.jp/article/435282