敬愛してやまない向田邦子のエッセ-に「夜中の薔薇」がある。
手元にいま、本がないので詳しいことは判らないうのだが、子供のころ唄をよく間違えて覚えていたというもので、「童は見-た―り 野中の薔薇~」と歌うところを「夜中の薔薇~」と覚えて歌っていた、と書かれていた。
確か、家の花瓶の中の1本の薔薇が、野中から夜中に代わると、いっぺんに秘密っぽく、何やら蠱惑的に、こどもを寄せ付けないものに・・・、そんな心模様をさすがの筆力で綴っていた。
向田邦子の、人間の機微がユーモラスに描かれたエッセ-は、読むたびに感動、というよりも、私はひれ伏したいような思いを抱くのだ。それは30年40年たっても変わらない。
すごい人でした。過去形で書かなくてはいけないことが悲しい。