第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香の「コンビニ人間」が面白かった。
作者が、物語の主人公と同じ「現役のコンビニ店員」と言うプロフィールは新鮮だった。
36歳の独身女性が、18年間同じコンビニに勤務、その中で自分の存在価値を探していく物語は、
私の中の「コンビニ」が急に生々しくなった。
マニュアル、制服、中性的な店員さん(敢えて目立つ美男美女は採用しない?)無機質な空間、没個性・・・、
何方かと言うと辛口になってしまうのだが、バックヤードは結構人間臭いらしい。
らしいというのは、この本の感想の一部なのだが、主人公はちょっと大変な男性を抱え込んでしまう。
24時間開いているコンビニが当たり前になっている若い人たちと、少し温度差のある私は時々、
「昔は、夜の十時にポテトチップ食べたくなったらどうしてたっけ?」
「早朝、仕事に出る時ストッキングが全くない事に気づいたら・・・」と考えた。
考えるというより思い出してみる。
ポテチは無ければあきらめた、ストッキングはお店が空いてなければ裸足で靴を履いて出かけた。
靴ずれがしたら、それは自分が準備不足なだけで「少しまとめて買っておかなきゃ」と反省する。
いつでもどこでも手に入るものをも売っているお店が24時間電気をつけて営業している事の不思議さ、
不自然さは、何か生活の基礎の部分を歪めてはいないのか・・・、とも思うのです。
勿論コンビニに恨みなんてないです。知人の一人は夫婦で20年以上コンビニを経営していた。
「24時間お店が空いているというストレスは想像以上のものだった」と語っていた。
しかし、私なんかがどう思おうと、実はコンビニは「それぞれの人の」帰り道、ロードなんですね。
帰り道は変わってはいけない、変わるものではない。
だから、これからもコンビニは永遠で、不滅です。