露伴の自宅兼スタジオ
杜王町に住む人気漫画家:岸辺露伴 - 高橋一生 の自宅、賑やかな露伴の担当編集者:泉京香 - 飯豊まりえ が帰り
静かになったはずの玄関先で、男性の挨拶する声が聞こえる。
どうやら挨拶の内容から、この男は不動産業者で 株式会社NSリゾートの乙雅三(きのとまさぞう) - 市川猿之助 という人物らしい。六壁坂村のことで相談(商談)にやって来たのだ。
最初は無視して作業を続けていた露伴だが、六壁坂と聞いてペンを動かす手が止まる。
玄関のドアを開けると、少しおずおずとした様子の乙が挨拶をする。
先ほど泉と坂道ですれちがったときは、遠目で気にもならなかったが、スーツの上着の裾が長くシャツの襟も大きくてビジネスマンの風情ではなかった。なんだろう、ランニング野郎の時に現れた2人組の不動産業者とは違い、独創的というか自由だな。
玄関先へ露伴が出ると、玄関前の壁に背中をつけて乙が名刺を出そうとしたので、ヘブンズドアを使って露伴は彼の情報を読み取ることにした。
イキナリですまないが、六壁坂絡みはちょっと前例があるんでね。名刺代わりに読ませてもらう。
そういって、玄関先で倒れ込んだ乙のページを読み進める。
乙雅三 1980年生まれ 出身は・・・いや、生い立ちはいいな。もっと最近の・・・
そう言って、彼がページをかき分けていると、面白い内容が目に留まった。
MTG・MTGって玉子かけご飯?→いや、ミーティングのことね、きっと。
六壁坂プロジェクトMTG→企画書作成!!
左側のページにはスケジュールが書かれているのだが、右側のページにはびっしりと心情が書かれている。
明日は大事なミーティングだ。帰りたいのに、部長に誘われた最悪!!
初めてのプロジェクトリーダー
これまでの努力が実を結んだ 脳内にファンファーレがなりひびき晴れやかだ。 仕事が 人生 が楽しくなってきた!
プロジェクト発足後 飲み会 リーダーになったお祝いをして貰う。
頑張ってきてよかった。 上等なスーツを新調した。 値は張ったオーダーメイドだ仕方ない
他のページにも六壁坂についてミーティングを重ねており、前の地主にも挨拶に行く予定だったようで
松;メロン 竹:ようかん 梅:洋菓子 (手土産選定の様子が書かれていた。)
部長から土地の引き渡しの日取りを聞かれる。完全に油断していた早めに契約を済ませてしまおう。→地主の代理人にTELするもつながらず★明日電話!
交渉が難航している地主にまたあいさつに行ったら岸辺露伴という漫画家に全部売ってしまったという。
ありえない!当然、土産の高級メロンは取り返したが、帰り道に迷うし最悪だ!!腹立ってメロンは投げ捨てた。
部長も努って土地を買い取って来いと言う。確かに漫画家が持っていてもしょうがない土地だ。
上手くいけば地主と交渉するよりも楽で安いかもしれない。(原文まま)
なるほど、悪いが売る気はないよ。
兎に角、問題はないようだが一応書いておくか。
露伴は持っていた作画用のペンを取り出し、
岸辺露伴には危害は加えない と書き込んだ。
さらに新しいページを確認していると、変わった書き込みがあった。
私は人に背中を見られるのが嫌だ
別のページにも、
他人に背中を見られてはいけない、絶対にダメだ。理由はない。
だが、背中を見られるのは→絶対に嫌だ!
そう書かれているのだ。
人はみな、本人にしか判らない悩みや恐怖を持っているな。
露伴は立ち上がり、ヘブンズドアを閉じた。
乙は意識を取り戻し、立ち上がる。
名刺を渡そうとしていたことを思い出して、ポケットの名刺入れを探す乙に
もういいよわかったから、六壁坂の山を買いたいと言うんだろ。
露伴にそう言い当てられて驚く乙。(読んだんだけどね。)
これが漫画家の感性というものなのかとも思うが、粘ってみようと話しかける。
だが露伴は、どうにも乙が背中を隠す動作が面白くなってしまい
売る気もないのに、乙へ家にあがるよう招く。
背中を見せないようにする身のこなしが、忍者のそれのようでどうにもおかしいし、制止した状態もジョジョ立ちのようで
露伴はそれを知らん顔で楽しんでいる。
お互いにどうぞどうぞと、玄関口のくだりがなかなか長い。←ダチョウかよっ!
乙の様子を見た露伴は、
この男、僕の家までずっとこうやって来たのか・・・。
そう考えながら、奥に入って行く。
先を進む露伴を見ながら、壁に背中をこするように玄関を上がる乙だった。
(その頃、社に戻った泉は露伴に見せる追加のネタ資料を作り、その出来に満足の笑みを浮かべていた。)
露伴の自宅
ドアの向こう側で、露伴は乙の様子を眺めている。飲み物のカップを手に部屋に入ると、背もたれにビッタビタな乙が、自分から話を振って来た。
それでぇ、あれですか。先生が六壁坂村の山林を購入されたのは、なにか投資とかそういう・・・。
いや、ただ仕事に必要でね。
でも、確かお仕事は漫画家・・・。
そうだよぉ。(飲み物をテーブルに置こうと近づく)
(背中を露伴に向けまいと、態勢を変える乙)漫画に必要なんですか、山2つぅ3つも土地が。
必要だねぇ~。
最近は漫画もそういうぅ、あれですかねぇ。
そういうぅ、あれだねぇ~。(そう言いながら、テーブルの乙からけっこう遠い位置にカップを置く。)どうぞ。
恐れ入ります。
冷めないうちに・・・。
紅茶ですねぇ。そう言うと、液体のように椅子から滑り降りてカップを手に取り、紅茶をすする。
その様子を、乙から見て左90度辺りに椅子を置いて露伴が眺めている。
乙君だったか、好奇心から尋ねたいんだが、いいかな。
(椅子からずり落ちた状態で、紅茶を飲んでいる乙。)なんでしょう。
背中に何か、見られると困ることでも?
さぁ、見られたことないんで。(ニッコリ)
思わず、席を外して廊下に出る露伴。
ちょっと待て、何だあれは。面白すぎるっ!
こうなると、露伴先生のドS全開。何が何でも乙の背中を見てみたいと思うのだった。